この記事の監修者 宮脇 大|株式会社Doctor’s Fitness 代表医師 この記事の監修者 宮脇 大|株式会社Doctor’s Fitness 代表医師 大阪大学医学部卒業後、循環器内科医師として倉敷中央病院、大阪大学医学部附属病院に勤務。アクティビティシニア世代に、心不全リハビリとしての「運動療法体操」などを提供、働く世代の健康のため、健康経営の効果的実践を企業とともに取り組むサービスを提供開始、予防医療を医学・リーダーシップ、ビジネス、政策等の視点をもって社会実装する取り組みを行っている。 「運動不足は気になるけれど、ジムやランニングは続かなさそう……」。そんな方にとって、好きな歌を楽しむカラオケが、体を動かすきっかけになったらうれしいですよね。カラオケは、歌ったり立って体を動かしたりすることで、楽しみながら普段の活動量を増やせる時間になります。 この記事では、カラオケの運動量や消費カロリーの目安、歌うことのメリット、活動量を高めるコツをご紹介します。好きな歌を楽しむ時間を、毎日を元気に過ごすための小さな習慣にしてみませんか。
カラオケは有酸素運動になるって本当? カラオケで夢中になって歌ったあと、「意外と体を使ったな」と感じたことはありませんか。 先に答えをお伝えすると、カラオケは「ウォーキングのような有酸素運動そのもの」とまでは言えません。ただし、歌うときには呼吸に関わる筋肉や、姿勢を支える筋肉を使います。そのため、じっと座って過ごすときにくらべれば活動量は確実に高まります。 歌っているとき、体はどのくらい動いている? お気に入りの曲を思い切り歌ったあと、少し息が弾んだり、体がぽかぽかしたりした経験がある方もいるでしょう。歌うことは、声だけでなく体も使う活動です。 歌っているときは、息を深く吸って長く吐く動きを繰り返します。この体の反応を調べた海外の研究では、歌っている間のエネルギー消費は中強度の活動に相当する水準で、酸素摂取量と心拍数は、時速4kmで歩いているときを上回ったと報告されています*1。 ただし研究は限られた人数を対象に、決められた条件のもとで測られたもので、カラオケで座って歌う場合に同じ数値になるとは限りません。それでも、歌っている間、体が思っている以上に働いていることは確かです。 運動が続かない人にこそ、カラオケが向いている理由 運動を始めても、忙しかったり気分が乗らなかったりして、長続きしなかったという方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめしたいのが「カラオケ」です。カラオケの一番の魅力は「楽しむこと」が前提にあることです。特別なトレーニングを覚える必要はなく、お気に入りの曲を選んで歌うだけ。家族や友人と一緒なら、おしゃべりを楽しみながら自然に体を動かす充実した時間にもなります。
カラオケ1時間の消費カロリーは30分歩いた程度 では、カラオケで1時間歌うと、どのくらい体を動かしたことになるのでしょうか。活動の強さを表す「メッツ(METs)」を使うと、おおよその目安を比べることができます。 「メッツ(METs)」とは、安静にしている状態を「1」として、その活動が何倍のエネルギーを使うかを表したものです。 国立健康・栄養研究所の「身体活動のメッツ(METs)表」では、立って歌う活動は2.0メッツ、通勤や通学などで歩く場合は4.0メッツとされています。 この条件で計算すると、立って1時間歌った場合と、4.0メッツの歩行を30分行った場合は、「メッツ・時」でみた活動量が同じになります。 【カラオケと歩行の活動量の目安】 ・立って歌う:2.0メッツ×1時間=2.0メッツ・時 ・歩く:4.0メッツ×0.5時間=2.0メッツ・時 カラオケはウォーキングほど運動の強さは高くありませんが、「楽しくてつい長くやっている」ことがまた魅力の一つです。そのカラオケの時間は、体を使った時間として積み重なっていきます。 消費カロリーは体重によっても変わります。 【消費カロリーの目安の計算式】 ・「消費カロリー=メッツ×体重(kg)×時間(h)」 たとえば、体重60kgの方が2.0メッツの活動を1時間行った場合、消費エネルギーは約120kcalが目安です。 おにぎり1個より少し少ないくらい、と考えるとイメージしやすいかもしれません。なお、この数字にはじっとしていても使われる分も入っています。歌い方や立って歌う時間で変わるので、目安として気楽に受けとめてください。
運動だけじゃないカラオケに期待できること カラオケの魅力は、体を動かせることだけではありません。好きな歌を声に出して歌えば、「楽しかった」「すっきりした」と感じることもあるでしょう。さらに、歌うことと気分や口・呼吸の働きとの関わりを調べた研究もあります。ここからは、運動とは少し違ったカラオケのよさに目を向けてみましょう。 歌は上手でなくてもOK!だれでも歌って気分のリフレッシュ 仕事や家事で慌ただしい日が続いたとき、好きな歌を思い切り歌って「なんだかすっきりした」と感じたことはありませんか。 高齢者を対象とした研究では、歌ったあとに「すっきりした」「楽しい」など、前向きな気分の変化が見られました*2。興味深いのは、もともと歌うことが好きだった人だけでなく、歌うことが好きではなかった人にも同じような傾向が見られたことです。 カラオケというと、「上手に歌わなければ」と思ってしまう方もいるかもしれません。でも、健康のために楽しむのであれば、採点結果や歌の上手さを気にする必要はありません。 のどや声を楽しみながら使う時間に 歌うときは、息を吸ったり吐いたりするだけでなく、舌や唇もよく動きます。ふだんの会話では、ここまで口を大きく使う場面は多くありません。 高齢者を対象とした研究では、カラオケを続けたグループで、舌の力や呼吸に関わる一部の数値に変化が見られました*3。ただし、これは高齢者を対象とした小規模な研究による結果であり、カラオケをすれば誰でも同じ変化が得られるというものではありません。 それでも、好きな歌に合わせて声を出し、口を動かす時間を楽しくつくれるのは、カラオケの良さの一つです。
カラオケの運動量を少しでも高めるコツ カラオケをさらに楽しむなら、歌い方を少し工夫して、体を動かす時間も増やしてみましょう。 立って歌う、呼吸を意識する、曲に合わせて体を動かすなど、いつもの楽しみ方に少しだけ動きを足すのがポイントです。 立って歌う 普段はソファに座って歌っている方も、ときどき立って歌ってみてはいかがでしょうか。歌に合わせて、足でリズムを刻んだり重心を変えたりすることで、体を動かす時間を増やせます。 たとえば、「アップテンポの曲だけ立つ」「自分の好きな曲が入ったら立つ」など、自分なりのルールを決めるなど気楽にとりいれてみましょう。 おなかの動きを意識する 歌うときは、ただ声を出しているだけではありません。息を吸ったり吐いたりする動きに合わせて、おなかや体幹の筋肉も働いています。 歌唱中の体の動きを調べた研究では、歌っているときに、おなかの奥にある呼吸を支える筋肉が働くことが確認されています*4。 そこで、歌うときはおなかの動きを少し意識してみましょう。 【おなかの動きを意識する方法】 背筋を無理なく伸ばす 鼻からゆっくり息を吸い、おなかがふくらむのを意識する おなかをゆっくりへこませながら息を吐く ここまでの手順の感覚を意識しながら歌ってみる 無理におなかへ力を入れたり、長く息を吐こうとしたりする必要はありません。苦しくなったら普段の呼吸に戻しましょう。 振り付け・軽いステップを加える 好きな曲が流れて自然に体を揺らしたくなったら、軽いステップや振り付けも加えてみましょう。歌う時間に、足踏みや手拍子が重なると、動いた時間は増えていきます。難しく考えなくて大丈夫、というのがうれしいところです。 たとえば、次のような動きなら気軽に取り入れられます。 リズムに合わせてその場で足踏みする 左右にゆっくりステップを踏む 手拍子をする 好きな曲の簡単な振り付けをまねする 歌いながら動くと息が乱れやすいため、まずはテンポのゆっくりした曲で、小さな動きから始めてみましょう。
カラオケに行く前に知っておきたいこと 楽しいからといってついついカラオケで長時間歌ったり、大きな声を出し続けたりすると、のどに負担がかかることもあります。 最後まで気持ちよく楽しむために、少しだけ意識しておきたいポイントを見ていきましょう。 大きな声を出しすぎない 好きな曲のサビになると、つい思い切り声を出したくなるものです。ただ、大きな声や高い声を無理に出し続けると、声がかすれたり、のどに違和感が出たりすることがあります。 大切なのは、自分が心地よく出せる声で歌うこと。高い音が苦しいときはキーを調整し、のどが疲れてきたら他の人の歌を聴きながら休憩しましょう。 曲の合間にのどをうるおしながら歌う 何曲か続けて歌っていると、いつの間にかのどが渇いていることがあります。曲と曲の合間に少しずつ口にして、のどをうるおしましょう。飲み物は、常温の水やお茶がのどにやさしいでしょう。声がかすれてきたと感じたら、しゃべるのも少し止めて、次の曲までのんびりのどを休めることをおすすめします。
今日から歌って動いて、少しずつ活動量アップ カラオケは、好きな歌を楽しみながら、普段より少し体を動かすきっかけにもなります。「運動のため」と身構えなくても始めやすいため、運動がなかなか続かない方にはおすすめです。 「好きな歌を思い切り歌う。」「サビになったら立ってみる。」「懐かしい曲に合わせて少し体を揺らしてみる。」そんな楽しい時間が、そのまま活動量アップにつながります。 歌う場所は、カラオケボックスだけではありません。地域の合唱団に参加するのもいいですし、ご自宅で家事をしながら口ずさむのも歌う時間です。歌いたくなったその時に、立つ・動くをきっかけにしてみてはいかがでしょうか。 *1 Physiological demands of singing for lung health compared with treadmill walking *2 Possible benefits of singing to the mental and physical condition of the elderly *3 Frequent Karaoke Training Improves Frontal Executive Cognitive Skills, Tongue Pressure, and Respiratory Function in Elderly People: Pilot Study from a Randomized Controlled Trial *4 Are There Differences in Abdominal Muscle Function in Female Singers With and Without Voice Disorders? - An Observational Study (参考文献閲覧日:2026年10月12日) 【監修者コメント】 私がこの習慣を前向きに捉えているのは、「楽しいから続く」という点にあります。 運動指導の現場でも、効果的な方法を知っていても続かずに悩む方を数多く見てきました。 その意味で、好きな歌を歌いながら自然に体を動かせるカラオケは、座りがちな毎日に活動量を足す入り口として理想的です。 カラオケが運動の代わりになるのかと問われると、強度の面ではウォーキングには及びません。 それでも、立って歌う、リズムに合わせて体を揺らすといった小さな工夫を重ねれば、活動量はさらに増えていきます。 気分のリフレッシュにもつながりますので、無理なく体を動かす習慣の一つとして、楽しみながら取り入れてみてください。