医師と考える食育

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いつまでもサビないからだをつくる食事のコツ

老化にはさまざまな要因がありますが、最近注目されているのが、からだの「酸化」や「糖化」です。サビやコゲとも表現される現象は、老化を進めるだけでなく、免疫低下や病気との関連も指摘されています。
これらを予防するために、食事でできることを伊藤明子先生に伺いました。

伊藤 明子 先生

(小児科医、公衆衛生の専門医、赤坂ファミリークリニック院長、東京大学医学部附属病院小児科医、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事)

一般診療に加え、栄養・食事療法、ストレス管理での診療なども行う。子どもの食を医学的な観点から研究しており、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしており、トータルヘルスプロモーションを推進するための調査研究や情報発信も行う。なお、医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。

からだがサビるのはどうして?

活性酸素が増えると「からだがサビて」老化が進む

老化の原因といわれる「酸化」「糖化」ですが、これは人間が生きていくうえで避けては通れない現象です。

まずは「酸化」についてお話しましょう。「酸化」とは、たとえば釘が錆びたり、皮をむいたりんごが茶色くなったりするイメージ。具体的には、からだに取り入れた酸素の一部が活性酸素に変化して、からだに炎症を起こしてしまう現象です。活性酸素は殺菌作用などプラスの働きもしますが、過剰に発生すると、体内の細胞を傷つける有害なものになるのです。

活性酸素が発生する原因には、呼吸のほか、激しい運動や偏った食事、ストレス、紫外線、喫煙などが挙げられます。私たち人間は、生きていくだけで、ある程度は「酸化」してしまうともいえます。

活性酸素が増えると「からだがサビて」老化が進む
AGEsが蓄積すると肌がくすみ、シワ・シミも増えやすくなる

一方、「糖化」とは、ふわふわのパンが、焼けて固く焦げたイメージです。私たちのからだでいうと、血液中にある余分な糖質が体内のたんぱく質と結びついて、細胞を劣化させる現象です。この糖化によってつくられるAGEs(Advanced Glycation End Products:最終糖化産物)は、多くの病気の原因となることが知られている老化促進物質で、体内で蓄積されると、肌や髪、骨、血管など全身の老化を進めてしまいます。

AGEsが蓄積すると肌がくすみ、シワ・シミも増えやすくなる

どちらも食事で予防・改善ができる!

1日に大さじ1〜2杯のすりごまをとるようにしたい

私たちのからだには、過剰な活性酸素を処理してくれる力が備わっていますが、加齢とともにその力が低下してしまいます。また、酸化によるダメージが大きいとAGEsも多く発生し、糖化も促進されてしまう、という悪循環に。ですから、「抗酸化」と「抗糖化」のどちらも意識しながら対策していきましょう。
 

酸化と糖化、どちらにも共通しているのが、「食事で予防や改善ができる」ということです。

日々の食事では、意識して抗酸化作用をもつ食材をとるようにしましょう。代表的な抗酸化物質としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール類などが挙げられます。

ただ、栄養素を考えながらバランスよく献立を決めるのはなかなかハードルが高いもの。なので、食事に「ごま」をちょい足ししてみましょう。ごまにはポリフェ
ノールの一種であるセサミンが含まれ、さらに日本人に不足しがちなカルシウムや亜鉛も豊富です。すりごまのほうが吸収率も高いので、ヨーグルトに入れたり、シリアルにかける、ごはんのトッピングとして、あるいは炒め物やお浸しにたっぷりふりかけたり、和えたりすれば、手軽に抗酸化物質をとれます。

1日に大さじ1〜2杯のすりごまをとるようにしたい
ココアパウダーは食物繊維も豊富

また、間食で取り入れるのもよいでしょう。私はベ
リー類が大好きなのですが、ベリーはビタミンやミネラルに加えてポリフェノールが豊富です。フレッシュなものはもちろんですが、フリーズドライのものは手軽なので、仕事の合間によく口にします。

バナナも手軽に抗酸化物質がとれる食材で、ポリフェノールのほか、食物繊維やビタミンB6、銅がとれるところもおすすめポイントです。

コーヒーブレイクに、ポリフェノール豊富な緑茶や
コーヒーを飲むのもよいでしょう。お子さんの場合は、栄養価の高いオーツミルクやアーモンドミルクにカカオポリフェノールの入ったココアパウダーを加えたものもおすすめです。

抗糖化については、元気に活動するために必要な糖質はしっかりとりながら、過剰な糖質はカットするようにしましょう。

同じ食材でも、調理法によってAGEsの量は変わります。「生」→「蒸す」→「煮る」→「比較的低温で炒める」→「焼く」→「揚げる」→「高温グリル」の順に、高温で加熱調理されるほどAGEs値は高くなります。

食材を選ぶだけでなく、調理法も考慮して健康的な食事を考えていけるとよいですね。

ココアパウダーは食物繊維も豊富