健康機能の研究成果

コラーゲンペプチド

1. コラーゲンとは

私たちの身体は主にたんぱく質からできており、そのたんぱく質の約30%をコラーゲンが占めています。コラーゲンは皮膚や骨、軟骨、腱などの結合組織の主成分として存在しています。
特に皮膚においてはコラーゲンが約70%を占め1)、重要な役割を果たしています。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織となり、表皮は外部からの異物の侵入や水分の蒸発を防ぐ皮膚のバリア機能を担っています。真皮の主な構成成分は線維芽細胞の他、膠原繊維(コラーゲン)、弾性繊維、基質(ヒアルロン酸など)です。膠原繊維や弾性繊維が皮膚に粘性や弾力性を与え、その隙間に存在するヒアルロン酸が水分を保持しています2)。 加齢とともにコラーゲンの産生が低下し3,4)、紫外線などによってコラーゲンの分解が促進されます5)。その結果、しわ、たるみといった肌トラブルを引き起こし、見た目の老化を引き起こすことが知られています6)

  1. 1) 和田正汎, 長谷川忠男編著. コラーゲンとゼラチンの科学. 建帛社. 19 (2011)
  2. 2) 清水宏. あたらしい皮膚科学. 中山書店. 13 (2018)
  3. 3) J. H. Chung et. al., J. Invest. Dermatol. 117(5), 1218 (2001)
  4. 4) S. Shuster et. al., Br. J. Dermatol. 93(6), 639 (1975)
  5. 5) G. J. Fisher et. al., N. Engl. J. Med. 337(20), 1419 (1997)
  6. 6) 藤本大三郎編著. 老化のメカニズムと制御. アイピーシー. 277 (1993)

2. コラーゲンペプチドとは

コラーゲンは、フカヒレ、手羽先、牛スジ、豚足、煮こごりなどの食材に多く含まれています。このコラーゲンを加熱してほぐしたものがゼラチンであり、さらに酵素などで細かく分解したものがコラーゲンペプチドです。
コラーゲンペプチドは低分子であるため、水に溶けやすく、食品や化粧品分野で広く活用されています。特に食品においては消化吸収面からも有利になります。一般的に健康食品などでコラーゲンと表記されているものは、このコラーゲンペプチドのことをいいます。
コラーゲンペプチドは、他のたんぱく質と同様に、摂取するとアミノ酸に消化・分解されますが、特徴的なアミノ酸であるグリシンやプロリンを豊富に含むため、皮膚や関節を構成しているコラーゲンを合成する栄養源として重要です。さらに、コラーゲンペプチドはアミノ酸が2~3個つながった状態で吸収され、線維芽細胞を刺激して様々な生理活性を誘導することが最近の研究で報告されています7~9)

  1. 7) 浅野隆司ら. BIO INDUSTRY. 18, 11 (2001)
  2. 8) K. Iwai et. al., J. Agric. Food Chem. 53(16), 6531 (2005)
  3. 9) G. Samonina et. al., Pathophysiology. 8(4), 229 (2002)

3. コラーゲン合成に及ぼす効果

これまで皮膚の老化に対して、コラーゲンペプチドがどのような効果をもたらすのか詳細な検討はされていませんでした。そこで我々は、加齢モデルラットを用いて、コラーゲンペプチドの効果を検証しました。
皮膚の湿重量(肉芽組織)の変化、コラーゲン特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリン(HYP)量の変化を調べるため、コラーゲンペプチドの量をかえて与えたところ、用量依存的に皮膚の湿重量が増加し、さらに同様にHYPも増加しました。
つまりコラーゲンペプチドの摂取によって、皮膚のコラーゲン量の増加が確認できました。

  • 対照群と比較して *P<0.05

また、コラーゲンの合成促進作用について、4種のペプチド・たんぱく質素材の効果を検証しました。コラーゲンペプチド、カゼインペプチド、大豆ペプチド、乳タンパクの4種をそれぞれ与えたところ、コラーゲンペプチドが最も肉芽組織の形成つまりコラーゲン合成を促進することが確認できました。

  • 対照群と比較して **P<0.01

伊藤良一ら. 日本食品科学工学誌. 60(6), 278 (2013)

これらの結果から、コラーゲンペプチドを摂取することで、他のたんぱく質源の摂取とは異なり老化で不足する皮膚のコラーゲンが増加することが分かりました。

4. 分子量による吸収性の違い

45~64歳の健常な男女7名に、平均分子量2,500のコラーゲンペプチドを10,000mg含む飲料(コラーゲンペプチド含有飲料)、平均分子量3~10万のゼラチン、コラーゲン繊維の加水分解処理を行っていない豚皮をスナック状にしたものを摂取してもらいました。ゼラチン群および豚皮群については、コラーゲンペプチド不含のプラセボ飲料と合わせて摂取してもらいました。各試験食品摂取後、経時的に血漿中ヒドロキシプロリン濃度を測定し、最高血漿中濃度(Cmax)、血漿濃度曲線下面積(AUC)を算出しました。
その結果、血漿中ヒドロキシプロリン濃度は、コラーゲンペプチド群が、ゼラチン群、豚皮群よりも早くCmaxに到達しました。また、摂取60分後までのヒドロキシプロリン総量のAUCは、コラーゲンペプチド、ゼラチン、豚皮群の順で有意に大きな値となりました。
以上のことから、コラーゲンペプチドは、ゼラチンや豚皮よりもすみやかに吸収されることが示されました。

瀬戸口裕子ら. 薬理と治療. 46(2), 267 (2018)

5. 肌の水分蒸散へ及ぼす効果

30~59歳の肌の乾燥に悩みのある健常な男女30名を対象に、コラーゲンペプチドを10,000mg含む飲料(コラーゲンペプチド含有飲料)を8週間連続で摂取してもらい、経表皮水分蒸散量を測定しました。
その結果、経表皮水分蒸散量の変化量において、コラーゲンペプチド群は、コラーゲンペプチド不含のプラセボ群と比べて有意に低下しました。
以上のことから、コラーゲンペプチド10,000mgを8週間継続摂取することによって、肌水分の蒸散を防ぎ、肌の潤いを保つ機能を有することが示唆されました。

山本貴之ら. 薬理と治療. 46(5), 849 (2018)

6. 肌の弾力へ及ぼす効果

30~59歳の加齢による肌の衰え(肌の乾燥、たるみなど)が気になる健常な男女40名を対象に、コラーゲンペプチドを10,000mg含む飲料(コラーゲンペプチド含有飲料)を8週間連続で摂取してもらい、皮膚粘弾性を測定しました。
その結果、肌弾力の指標の1つであるR8(頬の戻り値)変化量において、コラーゲンペプチド群は、コラーゲンペプチド不含のプラセボ群と比べて有意に改善されました。
以上のことから、コラーゲンペプチド10,000mgを8週間継続摂取することによって、肌の弾力を維持し肌の健康に役立つ機能を有することが示唆されました。

齋藤恵理子ら.薬理と治療50(8), 1405(2022)

7. 爪の水分量や丈夫さへ及ぼす効果

31~51歳の爪がもろい、割れやすい、二枚爪になるなどの爪に悩みのある健常な女性20名を対象に、コラーゲンペプチドを5,000mg含む粉末(コラーゲンペプチド含有粉末)を12週間連続して摂取してもらい、爪の水分量、硬度、スフィンゴシンおよびセラミド量を測定しました。
その結果、爪の水分量において、コラーゲンペプチド群はコラーゲンペプチド不含のプラセボ群と比べて有意に増加しました。また、爪の硬度は、プラセボ群に比べ、コラーゲンペプチド群で有意に低値となりました。さらに、爪中のスフィンゴシンおよびセラミドの変化量は、プラセボ群に比べ、コラーゲンペプチド群で有意に増加しました。
以上のことから、コラーゲンペプチド5,000mgを12週間継続摂取することによって、爪中のスフィンゴシンおよびセラミドといった細胞間脂質が増加し、爪の保水性としなやかさを保つ機能を有することが示唆されました。
※スフィンゴシンおよびセラミドは、角質の細胞間脂質成分であり、角質からの水分蒸散をコントロールして、皮膚のバリア機能を正常に保つために重要な成分です。

森貞夫ら. 薬理と治療. 45(11), 1787 (2017)

8. 膝関節の自覚症状へ及ぼす効果

40~74歳の膝の自覚症状(疼痛等)があり、移動機能が低下している男女26名を対象に、コラーゲンペプチドを10,000mg含む飲料(コラーゲンペプチド含有飲料)を12週間連続して摂取してもらい、膝の疼痛および生活の質(QOL)についてJKOM VASにより評価しました。
その結果、JKOMの「Ⅳ(ふだんの活動)」において、コラーゲンペプチド群はコラーゲンペプチド不含のプラセボ群と比べて有意に改善されました。
以上のことから、コラーゲンペプチド10,000mgを12週間継続摂取することによって、膝関節機能に関わるふだんの活動が改善され、QOLを向上させる可能性が示唆されました。
※JKOM Ⅳは、膝の自覚症状のために外出やふだんの行動(趣味や習慣、人付き合いなど)に制限があったかを示すスコア。

山本貴之ら. 薬理と治療. 46(5), 837 (2018)

9. 骨代謝へ及ぼす効果

40~79歳の骨の健康が気になる健常な男女21名を対象に、コラーゲンペプチドを10,000mg含む飲料(コラーゲンペプチド含有飲料)を12週間連続して摂取してもらい、骨吸収マーカーや骨形成マーカーを測定し、摂取前後の変化を評価しました。
その結果、骨形成マーカーの一つであるBAPにおいて、コラーゲンペプチド群は、コラーゲンペプチド不含のプラセボ群と比べて有意に変化(改善)しました。
以上のことから、コラーゲンペプチド10,000mgを12週間継続摂取することによって、骨形成が増進され骨代謝が形成優位となることが示唆されました。これは、コラーゲンペプチド10,000mgには骨の健康を維持する機能があることを示すものです。

下間早織ら. 薬理と治療. 47(3), 493 (2019)

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