研究成果 甘酒

1.甘酒について

「飲む点滴」とも呼ばれるほど栄養価の高い甘酒。美容や健康に良いと近年注目を集める日本伝統の発酵飲料です。一般的に甘酒には、糖分やアミノ酸をはじめ、ビタミンB群など種類豊富なビタミン類が含まれており、酒粕や米麹を原料とすることで、酵母や麹菌の発酵産物である生理活性物質が豊富に含まれていると考えられています。
特に主原料である酒粕や米麹は、それぞれ健康機能に関する研究が進められ、その機能性成分も明らかになりつつあります。一方、これまで実際に飲用した場合の健康効果の報告はほとんどありませんでした。私たちは飲用時の美容効果など甘酒の機能性研究を進めています。

2.甘酒含有成分の分析

酒類総合研究所との共同研究
甘酒には有用な成分が多く含まれています。甘酒の種類ごとに成分分析を行いました。
主原料が“酒粕と米麹”、“酒粕のみ”、“米麹のみ”とした3タイプの市販甘酒17商品を対象として、エルゴチオネイン(抗光老化成分)、p-クマル酸(抗酸化成分)、フェルラ酸(紫外線吸収成分)、フェルラ酸エチルエステル(抗ストレス成分)を、LC-MSまたは高速液体クロマトグラフ法(HPLC)にて測定しました。

その結果、p-クマル酸、フェルラ酸は17商品全てに含まれていることが分かりました。
エルゴチオネインは“酒粕のみ”の甘酒からは検出されませんでした。一方、フェルラ酸エチルエステルは“酒粕と米麹”及び“酒粕のみ”を含む甘酒にその存在が確認されました。
以上のことから、製法によって少し異なりますが甘酒は有用な成分を多く含むことが分かりました。

3.甘酒(酒粕+米麹)の目の下のクマ、髪のツヤへ及ぼす効果

40〜60歳代の便秘気味で肌荒れが気になる女性17名を対象に、酒粕と米麹を使用した甘酒を1日2個1カ月摂取してもらい、肌測定を行いました。

その結果、甘酒摂取群は甘酒不含のプラセボ摂取群に比べ、主観的評価において「目の下の明るさ」、「髪のつや」、「朝の目覚めの改善」に改善が見られました。

また、肌測定において皮膚の明るさおよび皮膚表面温度の上昇が認められました。

以上のことから、酒粕と米麹を使用した甘酒の摂取は、目の下のクマを改善することが示され、実感を伴った結果であることが明らかになりました。さらに、表面温度が上昇したことから、肌の血行が促進し、老廃物の排泄が促されることで、クマの改善に寄与したのではないかと推察されました。
甘酒摂取による血行促進は、甘酒中のアミノ酸等の栄養素による代謝亢進や、アルギニンやアデノシンによる血行促進作用が寄与したと考えられます。一方、主観的評価で効果のあった「朝の目覚めの改善」は、睡眠・覚醒サイクルを正常化することが知られている甘酒中のアデノシンが寄与している可能性が考えられました。甘酒によるこれらの効果は、甘酒中の単一の成分だけでなく、様々な成分が複合的に寄与した結果であると推察されました。

S. Kawakami et. al., FRAGRANCE J. 44(6), 43 (2016)

4.甘酒(酒粕+米麹)の皮脂抑制効果

皮脂は、肌の表面を覆い水分の蒸散を防ぐ働きがある成分ですが、過剰に分泌されると肌のべたつきによる不快感や毛穴のつまり、さらにはニキビや黒ずみなどの肌トラブルに繋がります。また女性にとってはメイク崩れの原因にもなります。
そこで酒粕と米麹を使用した甘酒の、皮脂に及ぼす効果について、ヒト試験およびin vitroレベルで検証を行いました。

<ヒト試験>
40〜60歳代の肌荒れが気になる女性17名を対象に、酒粕と米麹を使用した甘酒を1日2本1カ月間摂取してもらい、肌の皮脂量を測定しました。

その結果、甘酒摂取群では甘酒不含のプラセボ摂取群と比べ、皮脂量の低下が認められました。

in vitro
脂腺細胞を用い、甘酒成分である酒粕あるいは米麹の脂肪量に及ぼす効果について検証しました。

その結果、酒粕溶解液、米麹溶解液、酒粕および米麹溶解液を添加した群で、脂肪量が低下し、特に酒粕および米麹溶解液群でより低下しました。
以上のことから、酒粕と米麹を使用した甘酒を継続して摂取することで、肌の皮脂量低下が確認されました。また、培養細胞による検証から、酒粕と米麹それぞれに皮脂量を抑える効果があるため、特に酒粕と米麹を合わせた甘酒において、より皮脂量の低下を促す可能性が考えられました。

K.Nakagawa et al. 6th International Conference on Food Factors (ICOFF) 2015

5.甘酒(米麹、酒粕+米麹)の肌弾力や毛穴のたるみに及ぼす効果

皮膚の機能を保ち健康的な肌を保つには、皮膚を構成するコラーゲンなどのたんぱく質の減少を抑え、肌の粘性や弾力性を維持することが重要といえます。加齢や紫外線などの影響で肌の弾力性が失われてくると、皮膚の弛みや重力に負けて毛穴が伸び、涙型にたるんで毛穴が目立ってきます。毛穴が引き締まり弾力性のある肌は見た目の印象に影響を与えます。
そこで、主原料の違いに注目し、甘酒摂取による肌の美容効果、特に弾力性と毛穴形状について、ヒト試験およびin vitroレベルで検証しました。

<ヒト試験1>
30〜60歳代の健常成人男女46名を対象に、米麹を使用した甘酒を、1日1本8週間摂取してもらい、肌測定を行いました。

その結果、米麹を原料とした甘酒の摂取群は甘酒原料を含まないプラセボの摂取群に比べ、弾力性が有意に高く、毛穴たるみ率の変化量、毛穴認識面積の変化量が有意に低下しました。
以上の結果から、米麹を使用した甘酒の摂取は、肌の弾力性を高め、毛穴のたるみを抑制することが確認されました。

下間早織ら. 薬理と治療. 47(8), 1166 (2019)

<ヒト試験2>
35〜40歳代の便秘気味で肌荒れが気になる女性20名を対象に、酒粕と米麹を使用した甘酒を5週間摂取してもらい、肌の測定を行いました。

その結果、酒粕と米麹両方の原料を含む甘酒の摂取群は、甘酒原料を含まないプラセボの摂取群に比べ、弾力性は有意に上昇し、毛穴たるみ率の変化量は有意に低下しました。
以上の結果から、酒粕と米麹を使用した甘酒の摂取も、肌の弾力性を高め、毛穴のたるみを抑制することが確認されました。

吉川真理子ら. 薬理と治療. 46(11), 1841 (2018)

in vitro
線維芽細胞及び脂腺細胞を用い、甘酒の主原料である酒粕と米麹による、コラーゲンゲル収縮及びコラーゲン分解酵素に対する作用について検証しました。

その結果、酒粕原料の溶解液を添加した群(酒粕群)、米麹原料の溶解液を添加した群(米麹群)、酒粕と米麹両方の原料を混ぜ合わせた溶解液を添加した群(酒粕米麹群)は、これら甘酒原料を含まないコントロールを添加した群(コントロール群)に比べ、有意にコラーゲンゲル収縮が高くなりました。また、酒粕米麹群での収縮率は、酒粕群、米麹群に比べても、高い値となりました。さらに、コラーゲン分解酵素に対しては、米麹群、酒粕米麹群は、コントロール群に比べ有意に分解活性を抑制することが認められました。

稲垣宏之ら. 薬理と治療. 46(12), 1985 (2018)

以上のことから、米麹を使用した甘酒、酒粕と米麹を使用した甘酒を摂取することで、どちらも肌や毛穴のたるみに対する引き締め効果、つまり肌のハリを維持する効果が期待できることが示唆されました。さらに、培養細胞を用いた検証により、甘酒の原料である酒粕と米麹は、肌のハリと弾力を与えるコラーゲンの収縮を強め、コラーゲンを分解する酵素を抑制することで、コラーゲンのネットワークを強固にするメカニズムが確認でき、ヒト試験での結果を裏付けることができました。

6.甘酒(酒粕+米麹)の便通改善効果

酸化マグネシウムを処方されている軽度便秘症の成人女性38名を対象に、酒粕と米麹両方を原料に使用した甘酒を1日1本1カ月間摂取してもらい、便通に及ぼす効果を検証しました。

その結果、酒粕と米麹を使用した甘酒を摂取することで、1日の排便回数、排便量、便の状態、排便後の感覚を向上させることが確認されました。

森貞夫ら. 薬理と治療. 47(5), 759 (2019)

7.甘酒(酒粕+米麹)の腸内環境の改善効果

私たちの腸の中には、数百〜千種類、数百兆個以上の腸内細菌が、互いにバランスを取りながらそれぞれに小さな集合体「腸内フローラ」をつくって生息しています。その腸内細菌には、私たちの体に良い影響を及ぼす善玉菌や、毒素や身体に悪影響を与えるものを作り出す悪玉菌、どちらか強い勢力に味方する日和見菌の大きく3つの菌が存在しています。
善玉菌は、悪玉菌の増殖抑制、病原菌等の感染防御や免疫機能の調節、消化吸収を助けるなどの働きがあるため、善玉菌を増やして腸の環境を整え、からだの健康を保つ“腸活”に注目が集まっています。
この善玉菌には、酵母菌、ビフィズス菌、麹菌、納豆菌などがありますが、乳酸菌もその一つです。乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り出す細菌の総称であるため種類が多いですが、ほとんどが“ラクトバシラス目”に属しており、ヨーグルトやチーズ、バターなどの発酵食品に使われています。
そこで発酵食品である甘酒の主原料である酒粕と米麹の摂取が、腸内細菌に及ぼす影響を検証しました。
マウスに、甘酒の原料である酒粕と米麹を配合した餌を4週間摂取させ、糞便中の腸内細菌叢を測定しました。
その結果、酒粕と米麹を配合した試験餌を与えた群、および酒粕と米麹を配合し高脂肪となるよう調製した餌を与えた群では、酒粕も米麹も含まない餌を与えたコントロール群、および酒粕も米麹も含まず高脂肪となるよう調製した餌を与えた高脂肪職群と比べ、ラクトバシラス目の割合が増加しました。
また、これまでの研究で、酒粕と米麹の同時摂取によるバリア機能を持つムチン量の増加を確認していることから、酒粕と米麹を使用した甘酒は、腸内での乳酸菌の増殖を促し、腸内環境を良好にする可能性を持つことが示唆されました。

S. Kawakami et. al., Nutrients. 12(2), pil:E449 (2020)

8.甘酒(酒粕+米麹)の腸管バリア機能向上

東京大学との共同研究
小腸などの腸管は、栄養素を吸収する一方で有害な細菌や毒素などを排除しています。そのため腸管は粘液成分であるムチンを含む粘膜に覆われ、細胞を保護し、病原菌や毒素から組織を守っています。
腸管には、粘液として物理的に腸管を守るムチンだけでなく、抗体反応によって抗菌活性を発揮するlgAという因子も存在し、腸管はこれら「腸管バリア」機能によって守られています。
そこで、甘酒の主原料である酒粕と米麹の摂取が、腸管バリア機能に及ぼす影響を検証しました。
マウスに、酒粕と米麹を配合した餌を4週間摂取させ、糞便中ムチン量を測定しました。

その結果、酒粕と米麹を配合した餌を与えた試験食品群および酒粕と米麹を配合し高脂肪となるよう調製した餌を与えた群では、酒粕と米麹を含まない餌を与えたコントロール群および酒粕と米麹を含まず高脂肪となるよう調製した餌を与えた高脂肪食群と比べ、糞便中のムチンの増加が見られました。

また、ムチン関連遺伝子をPCR法にて確認したところ、酒粕と米麹を配合した試験食品群および酒粕と米麹を配合した高脂肪食群において、ムチンの生成促進が見られたことから糞便中のムチン増加のメカニズムと考えられました。
以上のことから、甘酒の主原料である酒粕と米麹を摂取することで、腸管を守る役割を果たすムチン量の増加、ムチン関連遺伝子の発現上昇が見られ、胃腸の粘膜を保護し病原菌や毒素から守る腸管バリア機能向上に寄与することが示唆されました。

S. Kawakami et al., 21th 日本フードファクター学会(JSoFF) 2016

9.甘酒(酒粕+米麹)の自然免疫機能

免疫はヒトの健康にとって重要なものです。免疫には、大きくわけて「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがあります。自然免疫は生まれつき備わっている免疫反応で、ウイルスや細菌などの病原体の侵入を速やかに排除します。一方、獲得免疫は後天的に獲得される免疫反応で、自然免疫から逃れた病原体に対して抗体を産生し排除します。
カイコは獲得免疫がなく自然免疫に依存しているため、自然免疫の評価に最適です。カイコは見た目とは裏腹にヒトに似て、ヒトの主たる臓器に相当する器官・組織を備えています。そこで、甘酒の主原料である酒粕と米麹による自然免疫の獲得について、株式会社ゲノム創薬研究所のカイコを用いた評価系で検証しました。

カイコは獲得免疫がなく自然免疫に依存しているため、自然免疫の評価に最適です。カイコもヒトの主たる臓器に相当する器官・組織を備えています。そこで、甘酒の主原料である酒粕と米麹による自然免疫の獲得について、株式会社ゲノム創薬研究所のカイコを用いた評価系で検証しました。

カイコに、酒粕と米麹の混合調製液を投与し、筋肉の収縮の度合から自然免疫の活性化効果を測定しました。

その結果、酒粕と米麹の混合調製液投与群は、緑茶抽出液投与群に比べ、約3倍と高い数値を示しました。
以上のことから、甘酒の主原料である酒粕と米麹を摂取することで、自然免疫機能を活性化する効果が示唆されました。これまでも甘酒は栄養価の高さから「飲む点滴」等と言われて健康効果に注目が集まっていましたが、更にその健康効果の高さが確認できました。

H. Maruki-Uchida et. al., Drug. Discov. Ther. 11(5), 288 (2017)

ページのトップへ