サステナブルなお仕事No.40

マメムギモリノナカ代表

山下やました久美くみさん

マメムギモリノナカ代表

山下やました久美くみさん

ハチミツ作りの副産物ミツロウを
何度も使える食品用ラップに
ハチミツ作りのためにミツバチをいくする養蜂園ようほうえんでは、ハチの巣からとれる「ミツロウ」という副産物が生まれるんだ。山下さんは使い道をさがしていたミツロウを活用し、「ミツロウラップ」というものを作っているよ。使いてにしないエコな食品用ラップなんだって!
※一つのものを作るとき、いっしょにつくり出されるもの
Q1.
どんなお仕事クエッ?
「ミツロウラップ」を作って販売はんばいしています。ミツロウラップの原料になるミツロウとは、ミツバチが巣を作るときに巣の材料として体から分泌ぶんぴつするもの。ミツバチはこのミツロウを口でやわらかくこねて、巣を作っています。ハチの体から出されるものなので天然の材ですし、水をはじき、熱を加えると柔らかくなるという性質せいしつがあるため、昔から化粧けしょう品や医療いりょう品、クレヨンの原料などにも活用されてきました。私が作るミツロウラップには、ハチミツを収穫しゅうかくした後に残る巣のふたの部分を使います。綿めんぬのに、このミツロウと植物油などをしみこませます。ミツロウは熱を加えるととけるので、せん用のヒーターで温めながら綿にしみこませ、乾燥かんそうさせたらミツロウラップの完成です。
使用するミツロウは丸森町の石塚(いしづか)養蜂園のもの。年間で約100キロのミツロウがとれる。
使用するミツロウは丸森町の石塚いしづか養蜂園のもの。年間で約100キロのミツロウがとれる。
食器にふたをしたり、使いかけの野菜を包んでぞんしたり、つうの食品ラップのように使えます。また、このラップは温めると柔らかくなり、冷えると固まるという性質があるため、折りたたんで冷やせば、お皿として使うこともできます。普通の食品ラップは一度使うと捨ててしまいますが、ミツロウラップはあらってくり返し使うことができます。天然の材料で作られているため、最後は土にうめれば分解ぶんかいされ、ゴミになりません。口に入っても安全です。
2019年に「マメムギモリノナカ」というブランドを立ち上げ、地域(ちいき)の自然をイメージした柄(がら)などのミツロウラップ「tsu tsu mi(ツツミ)」を製造(せいぞう)。ネットの他、宮城県内を中心にお店でも販売している。
2019年に「マメムギモリノナカ」というブランドを立ち上げ、いきの自然をイメージしたがらなどのミツロウラップ「tsu tsu mi」を製造せいぞう。ネットの他、宮城県内を中心にお店でも販売している。
器にフタをしたり、野菜を包んだりと、ふつうのプラスチックのラップのように使える。ミツロウには天然の保湿性(ほしつせい)があり、包んだものの鮮度(せんど)を保(たも)つことができるのも特長。。
器にフタをしたり、野菜を包んだりと、ふつうのプラスチックのラップのように使える。ミツロウには天然の湿しつせいがあり、包んだもののせんたもつことができるのも特長。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
私がくらしている宮城県丸森町は自然がとてもゆたかな土地です。この仕事を始める前は、同じ宮城県の仙台市でセラピストとして働いていました。その時、人の健康には水や空気といった環境かんきょう影響えいきょうがとても大きいと感じ、自然にかこまれた中で仕事がしたくて4年前に丸森町に引っこしてきました。

ちょうどそのころ、この町でハチミツを作っていた石塚養蜂園では、ミツロウをろうそくなどに加工して販売していたのですが、全部は使い切れず、新しい使い道をさがしていました。たくさん残っているミツロウを生かす方法を考えていると、オーストラリアで生まれたミツロウラップを知りました。人にも自然環境にもやさしいミツロウラップを、自分の手で作ってみたいと思ったことが、この仕事を選んだきっかけです。

※マッサージなど専門せんもん的な技術ぎじゅつを使って心身をいやしたり、治療ちりょうしたりする仕事
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
苦労したのはミツロウラップの作り方。海外から手に入れたものなどを参考にしながら、こうさくを重ねました。布の種類や材料によって、うまくできたり失敗したり。ミツロウは温度に影響されやすいので、季節によって作り方を調整する必要があり、作りながら改善かいぜんしました。同時に量産用のヒーターをメーカーといっしょに開発しました。

感動するのは、そうして作ったミツロウラップが役に立てる時です。最近もイベントで会った人から、わたしたちのミツロウラップをきっかけに食品の量り売りを始めたと聞き、うれしく思いました。あと、コンテストでしょうをいただき、関心を持ってくれる人がふえたのもうれしいことでした。
専用のヒーターで温めた綿の布に、ミツロウをしみこませていく。
専用のヒーターで温めた綿の布に、ミツロウをしみこませていく。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
神奈川県出身で、中学3年生の時に宮城県に引っこしてきました。神奈川で住んでいた場所は緑が多く、その中を走り回って遊んでいました。姉2人にもよく遊んでもらい、まるでお母さんが3人いるみたいでした。手芸が好きで、よくあみ物をしたり服を作ったりしていました。勉強は、作文など国語がとくで、苦手だったのは算数です。おかしはチョコボールのキャラメル味が大好きで、エンゼルを集め、おもちゃのカンヅメをもらったこともあります。
ミツロウラップは丸森町の自然をモチーフにデザインしている。
ミツロウラップは丸森町の自然をモチーフにデザインしている。
Q5.
未来の大人たちへ
人のくらしが続くのも自然があってこそ。自然を大切にしてほしいと思います。ただ、知らなければ大切にできませんよね、例えば、丸森町では子どもたちが農業体験を行っていて、自分の目で作物ができるのを見て、とれたてのおいしいものを食べると、自然がぐっと近くなります。そんな機会も活用し、自然といっぱいふれ合ってください。そうするときっと自然を大切にしようと思えるはずです。
プロフィール
神奈川県生まれ。15さいで宮城県へ。仙台せんだい市でセラピストとして働いた後、宮城県丸森町で2019年、ミツロウラップを製造・販売する「マメムギモリノナカ」を設立せつりつ。「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2019」最高賞、第1回「SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞」環境の部を受賞。
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