サステナブルなお仕事No.1

多様な命が生きる森で
木を育み(はぐくみ)、
未来につなぐ
ヒノキで有名な三重県の尾鷲(おわせ)
地区で、江戸時代から続く林業家の9代目。
責任ある森林管理を世界に
普及させることを目的とする国際的機関
であるFSC(森林管理協議会)の
認証(にんしょう)を日本で初めて取るなど、
森をよくするためにがんばっているんだ。
Q1.
どんなお仕事クエッ?
自分の山で、木を育てて森をつくり、木を伐(き)って売っています。伐る木は何十年、何百年も前に先祖が植えてくれたもの。一方で、今自分たちが植えている木の苗(なえ)が育ち、材木として利用できるようになるのは何十年、何百年も先のこと。

先祖に感謝しながら、未来の人のために、どんなふうに森を育てわたしていけばよいのかを想像して、一番いいと思うことを実行しています。たとえば、植えたヒノキだけでなく林内に育ってきた様々な広葉樹(こうようじゅ)も共に育てることで生き物にやさしい、いい木が育つ豊かな森をつくることができるのです。
※広葉樹:木は、針葉樹(しんようじゅ)と広葉樹の2種類にわけられます。
ヒノキは針葉樹で、葉が細く幹はまっすぐ高く伸びるのが特徴(とくちょう)です。
広葉樹は、サクラのように、葉が広く枝わかれして横に広がって育つ木のことです。
速水さんの森では、性質の違う木をバランスよく共存(きょうぞん)させることで、土の養分を豊かにしているそうです。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
父が楽しそうに仕事をしていたからです。
いっしょに働く人たちと山へ行き、休み時間にはみんなでお弁当を広げ、笑いながら話しているのを、小さい時から見ていました。

中学生からは東京でくらし、大学では運動部のマネージャーをやっていました。先輩たちから「俺の会社に来ないか」と誘っていただいたりしたのですが、やっぱり尾鷲の山が好きで、帰ってきました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
最初のころは、苗が夏の乾燥で枯れてしまったりして、木は生き物だということを痛感(つうかん)しました。
それで役立つ知識を身につけようと、木や森に関する科学的なことを再び東京の大学で勉強し直しました。
仕事をしていて感動するのは、都会の生活ではなかなか目にすることのない野生の動物に会う時です。
カモシカ、タヌキ、キツネ、リスなど、色んな動物がいますよ。
クマはちょっとこわいけどね。野生の動物たちが暮らせるのは、餌となるたくさんの昆虫や小動物、植物が森で暮らしているから。多様な生物が暮らすことで森の土は豊かになり、よい木が育ちやすくなります。

季節や時間でガラリと変わる山の景色も感動的です。
それはあきることがなく、ずっと見ているからこそ感覚がとぎすまされ、より美しさを感じます。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
上が姉2人の末っ子で、おとなしい子どもでした。
学業を大切にしている家だったので、勉強はよくできました。
また、父のもとには、よく東京から林業を学ぶ大学生や学者が泊まりに来ていて、いっしょにご飯を食べることもありました。そういう大人たちを見て育ったからか、自分もそのような大学に行こうと子どものころから思っていました。

でも勉強ばかりではなく、父が山へ行く時は家族みんなでついて行きました。海が近くてきれいな川もあって、特に川は友だちとの遊び場でした。
母が時々、田舎ではめずしかったシュークリームやホットケーキをつくってくれたのも思い出です。
Q5.
未来の大人たちへ
多様な生き方の時代、好きなように生きてほしいと思います。
ただ、自分の生活が世界とつながっていることは意識(いしき)してください。自分の買うものや使うものがつくられたのは、地球のうら側かもしれません。
もしかしたら、そこではつらい思いをしてつくっている人がいるのかもしれません。一人ひとりの「消費(しょうひ)」が、遠い国の人の生活に影響(えいきょう)をおよぼすかもしれないことを考えてほしいのです。

それから、森へ遊びに行ってください。
えんぴつや木のおもちゃ、そして絵本や教科書の紙なども、全部森から来ています。
森を案内する時には「足元の土の中に5千匹もの虫がいるんだよ」といったことを話します。森は色んな生き物とのつながりを感じられる場所で、心を豊かにしてくれます。
プロフィール
三重県・尾鷲地区の海山町で、江戸時代の1790年から林業を続ける家に生まれる。
大学卒業後に家業へ入り、2年間は大学の研究室で林業を科学的に学ぶ。
2000年2月にサステナブルな森づくりの証明になる「FSC(森林管理協議会)認証」を日本で初めて取る。
自分の山以外の森づくりへのアドバイスや、木材の使い方をよくするための活動も行っている。