サステナブルなお仕事No.33

花火師

柿木博幸かきのき ひろゆきさん


花火師

柿木博幸かきのき ひろゆきさん

きれいな花火をずっと楽しむために
ゴミをへらす「エコ花火」を開発
夜空の花火ってすごくきれいだよね。でもね、花火を打ち上げた後には燃えカスのゴミが出るんだって。そこで柿木さんは研究を重ね、燃えカスの少ない「エコ花火」を作ったんだ。環境かんきょうにやさしい花火なら、より安心して楽しめるね!
Q1.
どんなお仕事クエッ?
花火を作り、打ち上げる職人です。花火を打ち上げると、その周りには燃えカスが散らばるので、花火師たちは打ち上げた後に掃除そうじをします。燃えカス自体はいずれ土にかえるので、環境に悪い影響えいきょうおよぼすものではないのですが、少しでもゴミをへらせるようにと「エコ花火」を開発しました。

打ち上げ花火は、「玉皮たまかわ」とよばれる球状の容器に火薬をめた「花火玉」を、上空で爆発ばくはつさせます。爆発させるためには、「割薬わりやく」とよばれる火薬を使います。「割薬」は通常、お米のもみがらを材料にしますが、繊維せんい丈夫じょうぶなため燃えにくく、どうしても燃えカスが出てしまいます。そこで「エコ花火」では、爆発のときにほとんどが焼けてなくなる植物の種を使うことで、燃えカスが出ないようにしました。

通常は和紙を使う「玉皮」も、燃えカスが出ないように新しい素材を開発しているところです。
滋賀県長浜市(ながはまし)にある花火メーカー「柿木花火工業」の3代目。花火を打ち上げるのは地元の琵琶湖(びわこ)周辺が多く、花火大会やお祭り、イベントの他、個人からの依頼(いらい)もある。
滋賀県長浜市ながはましにある花火メーカー「柿木花火工業」の3代目。花火を打ち上げるのは地元の琵琶湖びわこ周辺が多く、花火大会やお祭り、イベントの他、個人からの依頼いらいもある。
花火玉の断面(だんめん)。玉皮の中に、カラフルな「星」と黒い「割薬」いう2種の火薬が詰められている。星は花火の色になる火薬で、割薬は爆発して星を遠くに飛ばすための火薬。
花火玉の断面だんめん。玉皮の中に、カラフルな「星」と黒い「割薬」いう2種の火薬が詰められている。星は花火の色になる火薬で、割薬は爆発して星を遠くに飛ばすための火薬。
大阪・関西万博の開催(かいさい)予定地で2022年9月に行われた「夢洲超花火(ゆめしまちょうはなび)」で打ち上げた花火。濃(こ)い青色の花火は画期的で、柿木さんが開発した。(写真:takeboo415)
大阪・関西万博の開催かいさい予定地で2022年9月に行われた「夢洲超花火ゆめしまちょうはなび」で打ち上げた花火。い青色の花火は画期的で、柿木さんが開発した。(写真:takeboo415)
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
花火はおじいちゃんの代からの家業ですが、ぐつもりはなく、高校卒業後はちがう会社に入りました。でも、仕事から帰った父が、つかれていても、「お客さんがよろこんでくれた」といつもうれしそうに話していたことが心に残っていて、自分もそういう仕事をしたいと思い、継ぐことにしました。

ただ、実際に仕事をしてみると、外国製の安い花火と「どこがちがうの?」と言われるなど、買ってもらうのは大変なことなのだと知りました。

そこで、何か特徴とくちょうが必要だと考えて、思い出したのが燃えカスのこと。小さい時からよくごみ拾いをしていたこともあり、燃えカスのゴミをへらせたらいいなと思っていたのです。花火の材料は昔から決まっているのですが、安全ならちがうものでもよいのではと考え、「エコ花火」を完成させました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
「エコ花火」は完成まで4年かかりました。使えそうな材料をさがし、失敗と工夫を何回もくり返し、やっと出来上がりました。

さらに完成してからも苦労はありました。せっかく作ったのに、「燃えカス? お客さんに見えなければいいのでは」と言われてしまうこともあったのです。ゴミをへらして環境を守るという価値かちを伝えるのに苦労しました。

うれしいのは、自分のアイデアで作った新しい花火をよろこんでもらえた時です。

例えば青色の花火。花火でい青色を出すことはできなかったのですが、7年程前に開発に成功。それを打ち上げ、どよめきかが起こった時は感動がわき上がってきました。

実はこれ、失敗から生まれた成功だったんです。花火の色は、いくつかの火薬を組み合わせて作るのですが、その作業をしているときにくしゃみをしてしまい、分量ぶんりょうがめちゃくちゃに。でも、試しに燃やしてみたら、予想外によい色が出せることを発見し、そこから研究を重ねて生み出したのです。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
わんぱくで、学校ではしょっちゅう先生から注意されていました。でも、クラスの子からはたよられていたのか、相談を受けることも多かったんですよ。

お菓子で好きだったのはミルクチョコレートやチョコボール。

外をのびのびかけまわって遊び、毎日楽しくて、将来しょうらい何になりたいとか考えたことも、親から家の仕事を継げと言われたこともありませんでしたね。でも、父が作って打ち上げる花火はすぐ近くで、いつも見ていました。

高校生の時は、部活のボートをがんばり、全国大会に出場にしたこともあるんですよ。
Q5.
未来の大人たちへ
花火をよく打ち上げる琵琶湖は、小さいころはつりに行くなどの遊び場、高校生の時は部活の場、大人になってからはカヌーをやる趣味しゅみの場。ずっと関わってきた大切な場所です。そこをよごしたくないという想いも、「エコ花火」にはこめられています。

みなさんも、趣味でも遊びでもいいので、夢中になれること、好きなことを見つけてほしいと思います。目の前のことを一所懸命けんめいに続けることで気づけたり、出会えたりすることがたくさんあるからです。そのためにまず、色々なことに関心を持ってみてください。
プロフィール
滋賀県長浜市生まれ。滋賀県立長浜農業高校を卒業後、大手企業きぎょうに7年勤務きんむ。静岡市の花火工場で5年修行し、2000年に家業に入る。「エコ花火」の他にも新しい花火の開発を行い、大会の企画きかくなど、花火の魅力みりょくを伝える活動にも取り組む。
backbackpagetop