サステナブルなお仕事No.27

ファッションデザイナー

満汐国明みちしお くにあきさん


ファッションデザイナー

満汐国明みちしお くにあきさん

環境かんきょうも動物もきずつけない
「木の実」で作るあったかな服
服のデザインを考えるファッションデザイナーの満汐さんは、新しい素材で地球や生き物にやさしい服を作っているんだ。素材の原料は、なんと木の実! その力を借りてえがくのは、地球やあらゆる生き物が幸せで、いっぱいおしゃれを楽しめる未来だよ。
Q1.
どんなお仕事クエッ?
サステナブルをテーマにした洋服ブランドで、主に上着をデザインしています。あたたかい上着というと羽毛(鳥の羽)を使ったダウンがありますが、羽毛の代わりに「カポック」という木の実のワタを使っています。

カポックは、東南アジアなどで栽培さいばいされている木。実の中にあるワタは重さがコットンの1/8で、湿気しっけをすって熱を作る働きを持っており、たった500gの軽さ、5㎜のうすさでモコモコした羽毛ダウンと同じぐらいのあたたかさを実現できます。

あたたかさの機能もすごいのですが、カポックを使っているのには、他にも二つの理由があります。一つは、鳥からダウンをとらないので動物にもやさしい点。もう一つは、動物を育てるためのエサを作ったり運んだりするときに出る二酸化炭素をへらすためです。植物のカポックは成長する時に二酸化炭素を光合成で吸収きゅうしゅうするし、木の実なので、木そのものを切ることもありません。ジャケット一着で、2リットルのペットボトル約1500本分の二酸化炭素をへらせます。

実は、ファッションの世界にも問題がたくさんあります。服の素材に環境によくない材料を使ったり、大量に作って大量にすてたり、工場の人が安いお給料きゅうりょうで長く働いていたり。だから、かっこよさや可愛さだけでなく、地球や生き物のこと、作る人のこと、着る人のこと、多面的に考えて服を作り、ファッションの世界をよくしたいと思っています。
満汐さんは「KAPOK KNOT(カポックノット)」というブランドのデザイナー。デザイン・機能・サステナビリティの3つをかね備えたものづくりを目指している。
満汐さんは「KAPOK KNOTカポックノット」というブランドのデザイナー。デザイン・機能・サステナビリティの3つをかね備えたものづくりを目指している。
カポックの特性を生かした服は、モコモコしないのにあたたかい。水にも強く、家庭でも洗濯(せんたく)できる。ジャケットやコートなどの上着の他、2023年には布団なども登場する予定。
カポックの特性を生かした服は、モコモコしないのにあたたかい。水にも強く、家庭でも洗濯せんたくできる。ジャケットやコートなどの上着の他、2023年には布団なども登場する予定。
カポックはもともと熱帯地方に自生している木で、少ない水で育つ。ワタの繊維(せんい)の中が空洞(くうどう)になっているため軽い。一方、繊維が短いため加工がむずかしいが、新しい技術で服の素材にすることに成功した。
カポックはもともと熱帯地方に自生している木で、少ない水で育つ。ワタの繊維せんいの中が空洞くうどうになっているため軽い。一方、繊維が短いため加工がむずかしいが、新しい技術で服の素材にすることに成功した。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
デザイナーになったのは、服が好きだったからです。好きな服を着ると自信がついたり、ちょっと強くなれたりしたので、ファッションには人間を変える力があると感じました。

最初の10年ぐらいはかっこよさや可愛さを追い求めていて、パーティーで1回しか着ないようなドレスも作りました。でも「これって服を消費しているだけでは?」と考えるようになったのです。

その後に住んだアメリカではサステナブルな服作りが始まっていて、自分もそこを目指そうと決めました。そしてタイミングよく出会ったのが、カポックを服の素材にすることに成功した今の会社の代表。同じ思いを持つことがわかり、いっしょにブランドを立ち上げました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
今、苦労しているのが、さまざまな角度から考えて服を作ることです。環境や動物を傷つけないことも大事ですが、同時にワクワクする服でないと着たいと思いませんよね。そのバランスがむずしいのです。特に生地は、環境を考えたものは価格が高く、そもそも種類がまだあまりありません。

それだけに、着た人に「ワクワクするし、心も軽くなる」と言ってもらえた時はうれしかったし、がんばっていてよかったと思いました。

服は人生を楽しくする、活力になるものだと思います。デザインと機能性が備わっていて、フタを開けたらサステナブルなものだったというのが理想で、そこに向かって一歩ずつ進んでいます。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
3人兄弟の末っ子で、小さいころはいつも兄の後ろにくっついていて、あまり自信がなく口下手な方でした。そのころの夢は地球の砂漠化さばくかを止める科学者。親がボランティア活動をしていたこともあり、社会のために何かしたいという思いが根っこにあったんですね。

図工など、何かを作ることは好きだし得意で、小学生の時はミシンでカバンを作ったりもしていました。着る服には独自のこだわりがあり、何まいも同じポロシャツと短パンを買ってもらい、いつも同じ格好をしているという、その点ではめずらしい子でした。

お菓子はチョコボールが大好きで、金のエンゼルも楽しみにしていました。

住んでいたのは東京ですが、川など自然の多い所で、自転車で走り回ったり、秘密ひみつ基地を作ったりしていました。自然の中にあるもので遊びを作り出す経験は、今の仕事につながっていると感じます。
Q5.
未来の大人たちへ
仮にそれがサステナビリティだとしても、みんなが味も素っ気もない服を着ているような未来は作りたくありません。やっぱり色々なデザインや生地があって、自分らしい服を着て、ワクワクできる方がよくないですか?

サステナビリティと多様性を両立できるような未来を作るために大切なことは、はば広い経験を積み、物事をさまざまな角度から見られる目をもつこと。デザイナーはもちろん、どんな仕事でもこれからはそんな人が活躍かつやくするようになると思います。わくにとらわれることなく、興味を持ったことにどんどん挑戦ちょうせんしてください。
プロフィール
1989年東京都生まれ。ファッションの学校を卒業し、東京コレクション参加のブランドやイタリアの高級ブランドでデザイナーを務める。アメリカのデザイン会社を経て、2021年から「カポック ノット」のブランドディレクター・ファッションデザイナーとして活動する。
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