‟バリアフリーe スポーツ” プロデューサー
			加藤大貴さん
		 
		
			‟バリアフリーe スポーツ” プロデューサー
			加藤大貴さん
     
		
		「eスポーツ」で、障がい者が
いきいきと活動できる社会作り
		
			コンピューターゲームの対戦競技「eスポーツ」、もり上がっているね! 加藤さんは、バリア=障壁になるものを取りのぞいた‟バリアフリーe スポーツ”で、障がいのある人たちの社会参加を応援しているんだ。でも、ゲームがどう役立っているのだろう?
		
		
		
			
			
				障がいがある人も参加しやすいバリアフリーeスポーツのイベントを開催しています。例えば、目の見えない人同士が格闘ゲームをするなら、目の見える人が声でゲーム内の様子を伝え、支援することもあります。目が見えないとむずしいのでは、と思うかもしれませんが、上級者の腕前はかなりのものです。
				イベントは、会場に集まることもあればオンラインのこともあり、ゲームのジャンルも、武器で敵(てき)をたおしていくシューティングゲーム、サッカーゲームなど様々。楽しみながら、色々な障がいがある人同士だけではなく、障がいのない人とも出会い、つながることで、心の壁(かべ)をなくすきっかけの場になっています。
				また、ゲームを通じて得意・不得意がわかるので、その人に合う仕事を紹介できます。障がい者の仕事は単純作業が多く、やりがいのある仕事を任せてもらえにくいと感じている人は多いのです。eスポーツに参加する人はコンピューターを使えるので、その能力を生かせるようにサポートしています。イベントの記事や動画を作る仕事をお願いすることもあるんですよ。
			
		 
		
			
			
        2019年11月に開催した最初のバリアフリーeスポーツの大会。加藤さんも家族で参加(左)し、パズルゲームで対戦。その様子をeスポーツのプロプレーヤーや車イス利用者が解説した(後ろ)。
			
		 
		
			
			
				元々は公務員だったのですが、家族のことをきっかけに福祉の世界に飛びこみました。その中で知ったのが、障がい者は社会との接点が少ないことです。そのため問題が見過ごされることも多く、どうにかしたいという気持ちがありました。
				福祉の制度に関心を持ってもらう方法として試したのが、バリアフリーeスポーツのイベント。新聞やテレビで取り上げられるなど大きく注目され、eスポーツで障がい者と社会との接点を作れば、もっと可能性を広げられるのではと考え、そのための会社を立ち上げました。
			
		 
		
			
				 Q3.
				
					仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
				
			 
			
				最近では、旅とeスポーツを組み合わせたイベントでのこと。車イスの人には設備が整った専用車、他の人にはバスを用意したのですが、車イスの人から「移動方法を選びたかった。バスでみんなとカラオケがしたかったのに……」と言われました。車イスを固定すればバスでも安全なのに、車イス=専用車と決めつけていたんです。本人の意見を聞く大事さを改めて教わりました。
				しかられることも多くて、それは苦労でもありますが、改善の機会であり、気づきの一つひとつが感動です。
				また、この仕事をしていて、「前向きになれた」「世界が広がった」「人生が変わった」といった声をもらうことも多く、そんな時はやっていてよかったと思います。
			
		 
		
			
			
        2022年10月に行われた旅とeスポーツを組み合わせたイベント。イベントは、障がい者の本音を聞ける大切な場でもある。
			
		 
		
			
			
				運動が苦手だったので、他で活躍できるものを見つけようと、勉強をがんばっていました。でも算数は苦手で、今も数字は大きらい。いつも仲間に助けてもらっています。
				逆上がりができないのを好きな女の子に笑われたくなくて、中学は受験をして男子校に進みました。受験勉強では、ここまでやったらダースチョコレートを1個、この問題が解けたら2個と、自分へのごほうびにしていましたね。
				ゲームは子どもの時から好きでした。親には買ってもらえなかったのですが、小3のころにおじいちゃんに買ってもらい、夢中になりました。ものすごく楽しくて、その体験は今につながっています。
			
		 
		
			
			
				障がい者の支援というと自分には関係ないと思う人が多いのですが、それはちがいます。だれでもいつか年を取り、耳が聞こえづらくなったり、体が自由に動かせなくなったりと、何かの障がいをかかえます。障がい者が活躍しやすい社会を作ることは、自分や家族が生きやすい社会を作ることでもあります。自分ごとととらえ、わたしたちのような活動にも目を向けてもらえるとうれしいです。
			
		 
		
			 プロフィール
			
				国家公務員の裁判所職員として8年間勤務した後、社会福祉協議会で福祉の仕事につく。2019年、障がい者が自分らしく、やりがいをもって社会に参加できる支援を行う会社、ePARAを立ち上げた。