サステナブルなお仕事No.21

水族館 館長

丸山克志まるやま かつしさん


水族館 館長

丸山克志まるやま かつしさん

生き物が大集合!水族館から
豊かな海を、地球を守っていく
ペンギンにアザラシ、カワウソ、クラゲ、深海魚……水族館にはおもしろい生き物がいっぱい! 丸山さんはいっしょに働く人たちと力を合わせ、多様な生き物や自然を守っていくための大切なメッセージを水族館から伝えているよ。

↓さらにくわしいインタビュー↓

Q1.
どんなお仕事クエッ?
高層こうそうビルの上という、ちょっと変わった場所にある「サンシャイン水族館」の館長をしています。水族館では、水の中や水辺みずべの生き物たちがどんな風に生活しているのかを伝えることで、自然環境かんきょうと人間の関係について考えるきっかけを作っています。

みんなに関心をもってもらうために、展示には色々工夫しています。他の水族館ではなかなか見られないのが、ペンギンが空を飛んでいるように見える水そうや、アシカのおなかを真下から見られる水そう。ダイナミックに泳ぐ姿を観察することができるので、大人気です。最近は、水族館のあちこちで、飼育スタッフたちがエサをあげながらその生き物の豆知識を紹介しょうかいするというイベントを始めています。

他にも、沖縄でサンゴを守る活動を行っています。サンゴは、他の生き物のすみかになったり、地球にとって重要な役割やくわりを持っているのですが、その数が減ってきているのです。原因は、地球温暖化おんだんかによる海水温の上昇じょうしょうや、生活排水はいすいによる海洋汚染おせん、開発による土砂どしゃの流出など。わたしたちは、サンゴを育てることで自然海域でのサンゴをやす試みをしており、活動しているエリアではサンゴの数が増えるなど成果も出てきています。
ペンギンが都会のビル群の上空や頭上を飛び交うように見える「天空のペンギン」水そうなど、ユニークな展示(てんじ)をしている。
ペンギンが都会のビル群の上空や頭上を飛び交うように見える「天空のペンギン」水そうなど、ユニークな展示てんじをしている。
南国の浅いサンゴ礁をイメージした小魚たちや大きなエイが泳ぐ水そう「サンシャインラグーン」では、限りある面積でも、水そうの形や照明の色などで海の広がりを感じられるようにしている。
南国の浅いサンゴ礁をイメージした小魚たちや大きなエイが泳ぐ水そう「サンシャインラグーン」では、限りある面積でも、水そうの形や照明の色などで海の広がりを感じられるようにしている。
2006年から沖縄・恩納村(おんなそん)の協力のもとで取り組む「サンゴプロジェクト」。サンゴは植物のように見えるがクラゲやイソギンチャクの仲間の動物。入り組んだ形のサンゴが生き物のすみかやタマゴを産む場所になっている。
2006年から沖縄・恩納村おんなそんの協力のもとで取り組む「サンゴプロジェクト」。サンゴは植物のように見えるがクラゲやイソギンチャクの仲間の動物。入り組んだ形のサンゴが生き物のすみかやタマゴを産む場所になっている。
沖縄の海でプロジェクトの現場を体感するツアーやサンゴを守るために何ができるかを考えたりするワークショップも行っている。
沖縄の海でプロジェクトの現場を体感するツアーやサンゴを守るために何ができるかを考えたりするワークショップも行っている。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
小さいころから生き物が好きで、小学生の時なりたかったのは動物のお医者さんです。
高校では生物部に入り、大学では水の中の生き物と人間の関わりについて学び、クラブ活動も自然や生き物に関わるものでした。
仕事でも生き物に関わりたいと思っていたので、水族館で働けるチャンスを見つけて飛びつき、運よく合格。長く飼育スタッフとして魚類を担当たんとうし、アザラシやペンギンなどの海獣かいじゅう※を担当したこともあります。

水の中や水辺には本当に多様な生き物がいて、ワクワクします。深海ではわかっていないことも多く、今も新発見があるんですよ。
最初はただ生き物に関われるのが楽しかったのが、来てくれた人が生物多様性や自然の大切さを感じてくれたり、それによって考え方や行動が変わったりするのを目の当たりにし、やりがいはどんどん増えていきました。

※海に住むほにゅう類(ちちを飲んで育つ動物。ほとんどが母親の体内である程度成長してから生まれる)
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
苦労も感動もいっぱいありますが、なかでも心に残るのは2011年に水族館を全館リニューアルした時のことです。
思い入れのある以前の水族館をこわして新しいものを作るのは大変なこと。「前のいい所を残したい」「いや、変えた方がいいのでは」と意見を出し合い、話し合いました。
その結果できたのは、「すごい!」と感動するものでした。水そうに水が入るのを見た時は水族館のみんなから「おお!」という声が上がり、オープンしてからは多くのお客さんによろこんでもらえたのがうれしくて、何度も感動がありました。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
住んでいたのは東京の下町でしたが、いつも生き物とふれあっていました。
お寺の幼稚園ようちえんだったので広い境内があり、そこにいる虫やトカゲなどを観察するのが日々の遊び。家では鳥を飼っていました。小学生になると近くの池のある庭園まで足をのばし、水の中の生き物ともふれあうように。もう少し大きくなると自転車で海まで行き、魚つりもしました。
勉強はよくできましたよ。授業を真面目に聞いていたからです。理科や算数が得意で、国語も苦手ではありませんでした。
苦手だったのは社会。暗記するだけの科目だと思っていたので、つまらなくて。でも大人になって、くらしにもつながる大切な内容であるとわかり、ちゃんと勉強しておけばよかったなと思っています。
Q5.
未来の大人たちへ
地球でくらす人全員が、生き物や環境に関心を持って、地球やそこにくらす生き物のためになる関わりができる世界が実現するといいなと思います。サステナブルな取り組みが進み、SDGsが達成できたら可能かもしれません。そんな世界を、社会をいっしょに作っていきましょう。
もし、好きなこと、関心あることに取り組んでいるのなら、さらにそれが何にどう関わっているのかまで考えて取り組めると良いと思います。
プロフィール
東京都生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)を卒業後、サンシャイン国際水族館(現・サンシャイン水族館)に入り、飼育スタッフとして魚類を中心に担当。管理や運営の仕事にも関わり、2011年のサンシャイン水族館全館リニューアルを主要メンバーとして進めた後、2015年に10代目の館長になった。
backbackpagetop