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ゲーマーの体は「遅延」してる?動体視力や視野のためにすべき体のケアとは 後編

2020/02/05

esports選手にとって重要な要素でもある「視野」や「動体視力」のケア。今回そんな「目」のケアにおいて、筋肉をつけることやトレーニングが大事であるということを、体のメカニズムを通して解説していく企画の後編です。ぜひ前編と併せてご覧ください。

前編の記事はこちらから
→「ゲーマーの体は「遅延」してる?動体視力や視野のためにすべき体のケアとは
※前編記事のリンクを挿入予定

ゲームやデスクワークによって体は酸欠状態になる

「自分の体は遅延なんてしていない」と思っている人もいるかもしれませんが、実は現代人の多くが筋肉や神経の働きに悪影響を及ぼす生活環境に身を置いています。

突然ですが、あなたが真剣にゲームをプレイしているときの姿勢を取ってみてください。モニターに顔を近づけるようにして、前屈みになっていないでしょうか?

これは何もゲームをプレイしているときだけでなく、デスクワークでパソコンに向かっているときも似た姿勢になっているはずです。ゲームやデスクワークのときに取りやすい前傾姿勢を長時間続けると、肩や腰の筋肉のこわばらせて血流を悪くさせます。これにより、神経や筋肉が酸欠状態に陥り、肩こりや腰痛の原因にもなります。

酸欠といっても、呼吸ができない環境でなるようなものではありません。血液には体中に酸素を届ける役割がありますので、血液がうまく循環できていない部分は酸素が届きにくい状態ーー酸欠状態になってしまうのです。

そしてこの酸欠こそが、神経の状態に悪影響を及ぼす原因のひとつ。神経の役割をスポーツで例えるなら、司令塔です。監督にあたる脳から出た指示を司令塔である神経を通して、選手にあたる手や足などへ届けるイメージです。

神経がうまく機能していないと、監督(脳)からの指示が途中の司令塔(神経)で滞ってしまい、選手(手や足など)にうまく伝わらないというわけです。しかも目に関する神経は、ちょうど首の終わりから肩のあたりの背骨の部分に集中していると言われています。首の終わりから肩のあたりまでといえば、モニターに顔を近づけるときの前傾姿勢で不自然に曲がっている部分と同じですね。

つまり、ゲームやデスクワーク中につい取ってしまう姿勢は、目の神経が集中して通っている部分を緊張させて、酸素が届きにくい状態にしてしまうということ。単純に目が疲れるだけでなく、目にまつわる神経伝達の面でも負担がかかっているのです。前傾姿勢は、ゆっくりと気づかないレベルで首を絞めるようなもの……まさに真綿で首を絞めるような状態であり、当然パフォーマンスにも影響を及ぼします。

ほかにも、首には頭へ血を送るための血管があります。当然、首や肩周りの血流が悪くなれば脳へ届く酸素も少なくなり、思考力にも影響を与えます。長時間のゲームやデスクワークのあとに、頭の回転が鈍くなるようなボーっとする感覚に陥ったことはないでしょうか。それは単純な疲れだけでなく、脳が軽い酸欠状態に陥っているからかもしれません。

体を100%の力が発揮できる状態にする

esportsの大会では「3勝先取」などのルールにより、1日に何試合も戦わなければならないことがあります。試合数が増えていけば、そん分だけ首や腰が凝り固まってしまい、筋肉や神経が酸欠状態に陥る可能性も高くなります。

試合ごとにパフォーマンスが低下することを単純な「疲れ」と片付けてしまいがちですが、神経への負担といった体の変化が起きているのです。動体視力や視野を保つには、神経の伝達がきちんと行われるように体の状態をキープしてあげないといけません。

そのためには、日頃からストレッチなどで動かしたり、筋肉をつけて体幹を整えたりといったトレーニングが効果的です。特に目の神経が集中するといわれる胸椎の第1から第4は「腱鏡」と呼ばれ、もともと硬くて柔軟性がない部位です。実はなにもしていなくても血流が悪くなりがちな場所なので、プログラムに沿って効率よく体を動かしたり、整体院などで施術を受けたりといった専門家の指導が必要になることもあります。

こうした体のメンテナンスを続けることで「実力以上の力が出せるようになった」と話す選手もいますが、それは正確ではありません。120%の力を出せるわけではなく、本来持っている力を100%発揮できるようになっただけなのです。

肩こりや腰痛は、すり傷のように放置しておけば治るものではありません。体のコリや筋肉の緊張などは慢性的に続き、ゲームでのパフォーマンスも知らず知らずのうちに下がり、本来の力の70~80%しか出せないような体になっているのです。

それが体の状態を整えることで、反射神経や視野の広さなども本来持っている力をそのまま発揮できるようになるというわけです。

著者:砂拭

最後に

刹那の差で勝敗が分かれる「esports」において、「本来の力を出せていれば勝てた」という場面は誰しも体感していると思います。その刹那の差はモニターや回線の問題ではなく、あなた自身に起きている「遅延」のせいかもしれません。負けられない勝負を前にしているなら、ぜひ体のメンテナンスにも気を配ってみてください。