海に囲まれている日本は、海産物が豊富に獲れます。日本近海を季節によって回遊している魚や、産卵期に外洋から日本近海にやってくる魚など、季節によって漁獲される魚はさまざまです。旬の時期に漁獲された魚は味が良く、お手頃価格で購入できるのも特長です。
そこで今回は、冬に旬を迎える魚と、その魚を使ったタンパク質を補えるレシピをご紹介します。
冬に旬を迎える野菜は、「冬野菜特集!冬が旬の野菜とタンパク質を補えるレシピを紹介」でご紹介しています。合わせてご覧ください。
魚の旬は、エサをたくさん食べ、身に脂やうまみがのる産卵期の前といわれています。産卵に向けてエネルギーを蓄えているからと考えられます。
ですが、地域によって魚の旬が違うこともあります。日本列島は南北に長く、日本近海を回遊している魚などは、地域の海域で漁獲できるときを旬にしていることもあるからです。
冬に脂を蓄える魚は、冬から春に産卵期を迎える魚です。旬の時期は漁獲量も増えるので、お値打ちになり、スーパーで見掛けたら手に取りやすいのではないでしょうか。魚の脂には、DHAやEPA(IPA)などの不飽和脂肪酸が多く含まれています。ヒトの体では合成できないため、意識して摂りたい食材のひとつです。
冬に旬を迎える代表的な白身魚であるタラ。漢字で書くと魚へんに雪と書くように、真っ白な身が特徴です。まだらはタラ科の中では体長が大きく、1mを超えるものもあるほど。日本海の北側に生息し、産卵に向けて浅瀬にやってくる秋から春に漁獲量が多くなります。
脂質や炭水化物が少ない魚ですがうまみがあり、鍋、煮付け、粕漬け、フライ、ソテーなど、いろいろな調理法で楽しめます。鮮度が落ちやすいため、新鮮なものを選び、早めに食べましょう。
・まだらの主な栄養価:タンパク質17.6g・脂質0.2g、炭水化物0.1g(100gあたり)
出世魚として縁起が良いとされるブリ。特に、冬に漁獲される天然ものは「寒ブリ」と呼ばれて脂のりがよく、特別なものとされています。ブリは、季節によって生育する海域を変える回遊魚です。産地によって旬の時期が変わります。
脂がのって新鮮なブリは刺身もおいしく、小皿に出した醤油に刺身をつけると、醤油に脂が浮かぶほど。刺身だけでなく、照り焼き、バター焼き、煮付けなど、ブリのうまみを活かした調理法が考えられます。
・ブリの主な栄養価:タンパク質21.4g、脂質17.6g、炭水化物0.3g(100gあたり)
サバには、マサバ、ゴマサバ、タイセイヨウサバの3種類があり、一般的にサバと呼ばれるのはマサバです。日本近海、朝鮮半島沿岸部からフィリピン近海、ハワイ諸島、カリフォルニア沿岸に広く生息しています。秋から冬は、脂がのる時期と言われています。
新鮮なサバは刺身や酢締めに、切り身はみそ煮、塩焼き、から揚げ、煮物などにします。全国各地で古くから食べられており、福井の浜焼きサバ、静岡の塩サバなどが有名です。
・サバの主な栄養価:タンパク質20.6g、脂質16.8g、炭水化物0.3g(100gあたり)
鮮やかな紅色で大きな目が印象的なキンメダイ。名前にタイとつきますが、マダイやクロダイなどの鯛の仲間ではありません。金目(キンメ)と呼ばれるのは、大きな目が光の加減で金色に見えることからつけられたといわれています。関東から沖縄までの太平洋沿岸で漁獲されている魚です。
キンメダイは季節で味の変化が少ないともいわれていますが、産卵期前の冬がおいしいともいわれて店頭に多く並びます。肉質がやわらかく、煮物や蒸し物、鍋物にピッタリの魚です。
・キンメダイの主な栄養価:タンパク質17.8g、脂質9.0g、炭水化物0.1g(100gあたり)
大きな頭を持ち、皮が柔らかいのが特徴のアンコウ。胸ビレと腹ビレを使ってはうように移動する魚で、日本近海、朝鮮半島や台湾近海などに広く生育しています。アンコウは身だけでなく、皮、肝臓、胃袋、ヒレ、エラなども食べることができ、捨てるところが少ないのが特長です。国内の水揚げ量が多いのは、山口県の下関。また、茨城県の水戸や大洗ではアンコウ鍋が冬の名物といわれています。
アンコウの身は脂質が少なくあっさりとしています。肝臓にはビタミンA、DHAやEPA(IPA)が多く含まれています。身のほかに皮やヒレなども一緒に煮込む鍋のほか、漁師料理のどぶ汁、から揚げ、ムニエルなどに料理されることが多いようです。
・アンコウの主な栄養価:タンパク質13.0g、脂質0.2g、炭水化物0.3g(100gあたり)
なお、それぞれの魚のタンパク質、脂質、炭水化物などの栄養成分値は、日本食品標準成分表(七訂)を参考にしています。
魚の種類によって調理の際のポイントは異なりますが、多くに共通する点は下処理です。魚は漁獲された直後から鮮度が落ちていき、臭味成分が作られます。また、魚の血液が腐敗することも臭味の原因のひとつです。そのため、臭味の原因を取り除くことが魚をおいしく食べるポイントです。
・鮮度が落ちないよう素早く下処理をする
・血を水でよく洗い流す
・作られた臭味成分を取り除くために、熱湯をかけて霜降りにしたり、塩をかけて10分ほど置いてしみでてきた水分を拭き取ったりする
また、魚の身は50℃あたりで最もやわらかくなり、そこから温度が高くなるにつれて固くなります。焼き魚は強火で焼き上げ、煮魚は沸騰した煮汁に入れる調理法が多いのは、加熱時間を短くして身をふっくらと仕上げるためと考えられます。
冬に旬を迎える魚は、白身魚や青魚などさまざまです。魚の特長を活かしたレシピをご紹介します。
食材(2人分)
タラ 2切れ
塩、コショウ 少々
しめじ 40g
長ネギ 1/2本
ポン酢醤油 大さじ2
作り方
①タラに塩、コショウを振って10分置き、ペーパータオルで水分をふきとる
②しめじは石づきを切り落としてほぐし、長ネギは小口切りにする
③耐熱容器に①と②を並べたら、ポン酢醤油を回しかける
④③にふわっとラップをかけ、600Wの電子レンジで6~8分加熱する
ポイント
・タラに塩を振りかけて水分を拭き取ることで、臭味を取り除く
・ポン酢醤油をかけてあっさりと仕上げる
・しめじの替わりに舞茸やえのきだけなど、長ネギはホウレンソウや小松菜など、別の食材に変更してもよい
食材(2人分)
ブリ 2切れ
塩 少々
かたくり粉 大さじ2
サラダ油 適量
砂糖 大さじ1
醤油 大さじ1
みりん 大さじ1
すりおろしショウガ 小さじ1
炒りゴマ 大さじ1
作り方
①ブリの全面に塩を振り掛け、10分ほど置いてペーパータオルで水分をふきとる
②①にかたくり粉をまぶし、サラダ油を引いて熱したフライパンで表面がカリっとするまで火を通す
③砂糖、醤油、みりん、すりおろしショウガ、炒りゴマを混ぜ、②に回し掛けて絡めながら焼く
ポイント
・ブリは鮮度の良いものを使い、塩を振りかけて臭味を取り除く
・加熱しすぎると身が固くなるため、調味料をかけたら短時間で仕上げる
サバ半身 1切れ
塩 小さじ1/2
ニンニク 1片
ショウガ 1片
乾燥バジル 小さじ1
オリーブ油 50ml
作り方
①サバは幅3cmに切り、塩をまぶして10分ほど置き、ペーパータオルで水分をふきとる
②ニンニクとショウガは皮を剥いて薄切りにする
③フライパンにオリーブ油、②と乾燥バジルを入れ、弱火に掛けて香りを出す
④サバをフライパンに重ならないように皮を下にして並べ、カリッとしたら上下を返して火を通す
ポイント
・香味野菜の風味をオリーブ油に移すことで、サバにも香りがつきやすい
・弱火で火を通すことで、身がやわらかく仕上がる
・少ない油で揚げ焼きにするように火を通す
食材(2人分)
キンメダイ 2切れ
醤油 大さじ2
みりん 大さじ2
砂糖 大さじ2
酒 50ml
水 200ml
ショウガ 1片
長ネギ 1/2本
作り方
①キンメダイは皮に切れ目を入れ、ショウガは薄切りにする
②フライパンに醤油、砂糖、酒、水、ショウガを入れて混ぜ、煮立たせる
③キンメダイの皮を上にしてフライパンに並べる
④アルミホイルで落としぶたをし、弱火にして10分ほど火を通す
ポイント
・鍋の大きさはキンメダイの切り身が重ならない大きさで、大きすぎないものを選ぶ
・煮汁を煮立たせてからキンメダイを入れることで、身の外側を凝固させてうまみを閉じ込める
・器には煮汁も一緒に盛り付け、食べるときに煮汁に浸して食べる
食材(2人分)
アンコウ切り身 200g
塩 少々
醤油 小さじ1
すりおろしショウガ 小さじ1
酒 小さじ1
かたくり粉 適量
サラダ油 適量
作り方
①ボウルにアンコウを入れ、塩、醤油、すりおろしショウガ、酒を入れて揉み込み、20分ほど漬け込む
②①にかたくり粉をまぶし、180℃に熱したサラダ油で揚げる
ポイント
・脂質が少ないアンコウの身のから揚げは、鶏もも肉のから揚げと比べるとエネルギーが抑えられる
・揚げる時間が長くなると身が固くなるため、中心部まで火が通ったら油から上げる
・かたくり粉にカレー粉や乾燥パセリなどを混ぜてもおいしく仕上がる
旬の魚には、脂やうまみがのっています。季節ごとに旬の魚を選ぶとよいでしょう。魚の脂質はDHAやEPA(IPA)が含まれているので、意識的に摂りたい食材のひとつ。体重コントロールをしていて脂質が気になる場合は、脂質の少ない白身魚を活用することがおすすめです。