食品には炭水化物、脂質、タンパク質のほかに、ビタミンやミネラルなど微量栄養素も含まれています。栄養素の役割を車に例えると、タンパク質は車体を構成する材料、エネルギー源となる糖質や脂質はガソリン、ビタミンやミネラルは車をスムーズに動かすためのオイルのような働きをしています。
今回はビタミンAについて、どのような働きをしているのかを解説します。
ビタミンAは、油に溶けやすい性質を持つ脂溶性ビタミンの1つです。
多く含まれる食品は、豚レバー、鶏レバー、ウナギ、バター、鶏卵などの動物性食品です。
体のなかに入ったビタミンAは脂肪とともに小腸から吸収されると、ほとんどは肝臓に蓄えられ、そのほかは血液によって心臓や肺、腎臓など、各組織に運ばれていきます。体のなかでは3つの活性型「レチノール・レチナール・レチノイン酸」として、存在します。主な働きは、皮膚や粘膜を健全な状態に保ちます。
植物性食品中心の食生活だった過去の日本では、ビタミンAの欠乏症がしばしばみられていました。しかし、食生活が欧米化した現在では、動物性食品を食べる機会が多くなり、ビタミンAが不足することはほとんどありません。一方で、脂溶性ビタミンは体に貯蔵されるため、過剰摂取に注意が必要です。
次に、植物性食品に多く含まれている、ビタミンAの前駆体である「プロビタミンA」について解説します。
プロビタミンAとされているものはαカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチンなどです。これらはカロテノイドと呼ばれる、赤や黄などの色素成分です。600種類以上発見されているカロテノイドのうち、プロビタミンAとして働くのは約50種類です。
体のなかでビタミンAが不足すると、プロビタミンAから必要な分だけビタミンAが作られます。プロビタミンAはたくさん摂取したとしても、過剰摂取にはなりません。
プロビタミンAのなかでは、βカロテンが最も効率良くビタミンAに変換されます。
αカロテンとβクリプトキサンチンの変換効率は、βカロテンの半分程度です。βカロテンの変換効率が良いとはいえ、βカロテンはビタミンAの約1/12の作用だといわれています。
プロビタミンAを多く含む食品は野菜です。特に100g当たり600μg以上のβカロテンを含む野菜を緑黄色野菜と呼びます。ホウレン草、ニンジンなど、色の濃い野菜です。トマトやピーマンも緑黄色野菜として知られていますが、βカロテン量は600μg以下です。摂取量や食べる頻度を考慮して緑黄色野菜として扱われています。
食品に含まれているビタミンAの量は、「レチノール活性当量(μgRAE)」として示されます。動物性食品に含まれているビタミンA(レチノール)量と、植物性食品からのαカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチンの量に変換率を考慮した数値を合計して表します。レチノール活性当量を算出する式は以下の通りです。
レチノール活性当量(μgRAE)=レチノール(μg)+1/12×β-カロテン(μg)+1/24×α-カロテン(μg)+1/24×β-クリプトキサンチン(μg)+1/24×その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)
日本人の食事摂取基準2015年版で示されているビタミンAの食事摂取基準は、年齢や性別で異なります。18~69歳の推奨量は以下の通りです。推奨量は1日当たりのレチノール活性当量で示されています。
・18~29歳:男性850μgRAE、女性650μgRAE
・30~49歳:男性900μgRAE、女性700μgRAE
・50~69歳:男性850μgRAE、女性700μgRAE
またビタミンAは、健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限を与える量とする「耐容上限量」が、体内に蓄積されるビタミンAの過剰摂取を考慮するために定められています。18~69歳の1日の耐容上限量は以下の通りです。
・18~69歳:男性2700μgRAE、女性2700μgRAE
なお、耐容上限量は健康障害を引き起こすことがない上限量で、これを超えて摂取すると、過剰摂取によって生じる潜在的な健康障害のリスクが高まると考えられており、必ずしも障害を起こすわけではありません。
ビタミンAとプロビタミンAを多く含む食品を以下にまとめました。100g当たりの数値(μgRAE/100g)を示しています。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)
表からも分かるように、動物性食品に含まれているビタミンA(レチノール)量は豊富で、レバニラ炒めなら1食で1日分のビタミンA推奨量をまかなうことができます。また、野菜や牛乳などの数値を見ても、さまざまな食品を食べることで、自然にビタミンAを摂取できることができるのではないでしょうか。
ビタミンAをはじめとする栄養素を不足することなく摂取するためには、バランスの整った食事が基本です。
忙しくて外食やお弁当などの利用が多くなると、バランスの整ったメニューを選ぶことが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。メニュー選びのコツを意識し、手作りの食事ではなくてもバランスを整えることを心掛けましょう。
食事のバランスを整えるコツは、いろいろな食品を揃えることです。
食品に含まれている栄養素は、体のなかでさまざまな働きをしています。多く摂りすぎると自然に排泄されたり、プロビタミンAのように体が必要量に応じて合成を調整したりする栄養素もありますが、蓄積されて過剰症のリスクが高まるものもあります。同じものを食べ続けることで極端に偏ってしまうと、体に影響を及ぼす可能性がありますいろいろな食品が使われた食事を食べることで、より多くの栄養素を摂取することができるのではないでしょうか。
1食のメニューとしては、ごはんやパンなどの「主食」、肉や魚などタンパク質をメインにしたおかずの「主菜」、野菜や海藻類などを使った「副菜」をそろえると、食品の数も多くなりバランスが整います。
例えば、お弁当を買うなら品数の多いものを選ぶほかに、サラダや野菜スープをプラスすることでバランスを整え、栄養素の不足を防ぎましょう。家でインスタントラーメンを作るときは、もやしや豆苗、冷凍野菜、ゆで卵などを付け加えると、手軽にバランスを整えることができます。栄養バランスの良い食事については、「栄養バランスの良い食事とは?簡単に改善するポイントも解説!」にて詳しく解説しています。
食事だけでバランスを整えることが難しい場合は、栄養補助食品を活用してみてはいかがでしょうか。
栄養補助食品は、足りない栄養素を補うための食品です。製品によって含まれている栄養素はさまざまで、用途に合わせて選ぶことが大切です。また、形状もゼリータイプ、バータイプ、ドリンクタイプなどがあり、自分に合ったものを選択しましょう。
12種類のビタミンを配合した「inゼリー マルチビタミン」は、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンDなど全部で12種類のビタミンを配合しています。野菜不足を感じているときや、忙しくて十分な食事量が確保できていないときなどにおすすめです。
手軽にタンパク質補給ができる「inバープロテイン ベイクドチョコ」は、おやつ感覚で食べられる栄養補助食品です。含まれているタンパク質は、1本につき10.4g。ビタミンB群も同時に補給できます。運動習慣のある人の補食や仕事の合間の栄養補給におすすめです。
ビタミンAは、レバーや卵などの動物性食品、また野菜などの植物性食品からも摂取することができます。バランスが整った食事を意識することで、様々な栄養素の不足を予防しましょう。忙しい毎日で偏りがちな食生活を見直して、いろいろな食品をとりいれましょう。