タンパク質は主に体の材料となる栄養素ですが、エネルギー源としても使われています。ヒトの体は毎日作り替えられているため、タンパク質はきちんとと摂取したい栄養素です。
とはいえ、体重のコントロールをしていると、タンパク質のエネルギー量が気になる人もいるのではないでしょうか。
今回は、タンパク質のエネルギー量を脂質と炭水化物と比較し、タンパク質摂取のポイントを解説します。
口から体のなかに運ばれた食べ物は、様々な消化酵素により分解され、吸収されます。吸収された栄養素のうち、エネルギー源になる栄養素はタンパク質、炭水化物(糖質)、脂質の3つです。これら3つをまとめて、エネルギー産生栄養素と呼びます。
エネルギー量を表す単位は、kcalです。水1kgの温度を1℃上昇させるために必要なエネルギーを1kcalと表します。以前は広い分野で使われていましたが、現在では主に食べ物から得られる総エネルギー量を表す単位として使われています。つまり、食品中のタンパク質、脂質、炭水化物から得られるエネルギー量を合計したものを示します。
スーパーで売られている食品やコンビニのお弁当など、さまざまな商品にエネルギー量が表示されていますが、健康管理のために表示を確認して、購入の目安にしている人も多いのではないでしょうか。
食品のエネルギー量を算出する一般的な方法は2つです。1つ目は、食品を分析して求められたタンパク質、脂質、炭水化物の量から係数を掛けて計算する方法、2つ目は、日本標準食品成分表の値と原材料の重量から計算する方法です。
分析して求められた量に係数を掛けるのは、体内に入った食べ物が100%消化吸収されないからです。使われなかった分の多くは、尿や便から排泄されます。消化吸収率から排泄される量を補正するために使われている係数の1つが「アトウォーターのエネルギー換算係数」です。
アメリカの生理学者であるアトウォーターは、様々な食べ物を混合して分析しました。栄養素1gを摂取したときに発生するエネルギー量の平均値は以下の通りです。
アトウォーターのエネルギー換算係数は、あくまでも平均値を求めたものです。日本食品標準成分表では、主要食品を調査して求めた換算係数のほか、FAO/WHOの換算係数やアトウォーターの換算係数が使われています。
アトウォーターのエネルギー換算係数を基にして、エネルギー産生栄養素の1gあたりのエネルギー量を比べると、タンパク質と炭水化物は4kcalで、脂質は9kcalのため、タンパク質や炭水化物よりも2倍以上のエネルギーを発生します。
1gあたりのエネルギー量をみると、タンパク質と炭水化物は同じエネルギー量ですが、少量で高エネルギーである脂質を減らすことで体重増加の対策になるのではないでしょうか。
炭水化物は、脳や筋肉などのエネルギー源として使われる大切な栄養素です。脂質やタンパク質よりもエネルギー源として使われやすいのが特徴です。しかし、過剰摂取により消費エネルギーよりも摂取エネルギーが多くなると、脂質(中性脂肪)に変わり、エネルギー源として体に貯蔵されます。
タンパク質は本来、身体の筋肉や組織を構成する栄養素ですが、長時間運動を続けることでエネルギー消費量が増え、炭水化物や脂質からのエネルギー供給が不足したときに、生命維持のために分解されてエネルギー源となります。炭水化物や脂質の摂取を極端に減らしてしまうと、エネルギー不足となり、体を構成しているタンパク質が分解されてしまうため、筋肉量低下のリスクがあるといえます。
食事から摂取したタンパク質は消化によってアミノ酸に分解されると、各組織のタンパク質に作り替えられています。体内のタンパク質は常に代謝を繰り返しており、古くなったタンパク質はアミノ酸に分解され、尿から排泄されます。身体を維持するために、必要なタンパク質の摂取は欠かせませんが、摂取した分全てが作り替えられるわけではなく、過剰に摂取することで消化吸収に時間を要し、肝臓への負担が増えたり、排泄量が増えることで腎臓への負担が増えるため注意が必要です。
身体を維持するためのタンパク質を適量確保することが重要です。一方で、エネルギー量をコントロールしたい人は、タンパク質を多く含む食品において、脂質が含まれる量に注意する必要があるのではないでしょうか。
食べ物には栄養素が複合的に含まれており、特定の栄養素だけを取り出して摂取することはできません。タンパク質を積極的に摂ろうとすると、同時に脂質の摂取量も増えてしまう可能性があります。
タンパク質を多く含む肉、魚介類、豆類、卵、乳・乳製品には、脂質も多く含まれている傾向があります。主な食品100g中に含まれている脂質量は以下の通りです。
・牛ばら肉:50.0g
・豚ばら肉:35.4g
・豚ロース:19.2g
・鶏もも肉(皮つき):14.2g
・鶏ささみ:0.8g
・紅鮭:4.5g
・卵:10.3g
・牛乳:3.8g
鶏もも肉はジューシーで冷めても美味しい部位ですが、脂質量が多い食品です。摂取エネルギー量をおさえたい場合は、部位を替えて鶏ささみを選ぶことで、脂質の摂りすぎを防ぐことができます。また、調理方法においても、揚げ物にするのではなく、ソテーや煮物にすることで、脂質の増加を抑えて摂取することができるためおすすめです。
脂質の摂取量が多いとエネルギー摂取過剰になる可能性がありますが、脂質は胃内滞留時間が長く空腹感の軽減の役割があること、生体膜の構成成分であることから体に必要な栄養素です。過剰に減らすことは避け、必要な分は摂取することが大切です。
肉や魚などだけではなく、炭水化物やビタミン、ミネラルなどの栄養素を多く含む穀物、野菜、果物にもタンパク質は含まれています。高タンパク質な食品に目を向けていると、タンパク質の摂取量が足りていないと感じてしまう方もいるかもしれませんが、様々な食品にタンパク質が含まれるため、実際には1日の必要量を満たしていることもあるのではないでしょうか。
食品中のタンパク質量を簡単にご紹介します。タンパク質を多く含む肉のタンパク質量は、牛や豚など種類や部位で差はありますが、赤身100gで約20gです。鮭1切れ(70g)では15.6g、卵1個(50g)は6.2g、牛乳200mlには6.6g含まれています。穀物や果物では、ごはん1杯(140g)に3.5g、食パン1枚(60g)に5.6g、バナナ1本(100g)に1.1g、ブロッコリー5切れ(50g)に2.6g含まれています。
1日に必要なタンパク質量を、日本人の食事摂取基準を参考に考えてみましょう。18歳以上の推奨量は男性で60g/日、女性で50g/日です。例えば、18歳以上の男性が1日に必要なタンパク質量を充たすためには、ごはん2杯、食パン1枚、肉200g、卵1個、牛乳200ml、バナナ1本、ブロッコリー50gを摂取することで達成できます。このように、高タンパク質の食品以外からも、タンパク質を摂取できるのではないでしょうか。
様々な食品から栄養素を摂取することで、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルのバランスも整うのではないでしょうか。バランスの良い食事については、以下の記事を参考にしてください。
【参考】 「主食・主菜・副菜とは?献立作りのポイントとあわせて紹介」
毎日の食事が大切だと分かっていても、忙しくて食事が疎かになったり、調理する時間がなかったりする日もあるのではないでしょうか。また、減量中や胃腸の調子が悪い等の理由から、食事量が減ってしまうことも考えられます。1日に必要なタンパク質量が不足している場合は、栄養補助食品を上手に活用してみましょう。
水と混ぜてシェイクするだけのプロテインは、手軽にタンパク質を摂ることができます。ウイダーのプロテインは種類がさまざまで、目的に合わせて選んでみましょう。
●ウイダーウエイトダウンプロテイン
減量中なら、体脂肪をエネルギーに変えるカルニチンを配合した「ウイダーウエイトダウンプロテイン」がおすすめです。1食分15g当たりの栄養素は、エネルギー52kcal、タンパク質7.5g、脂質0.5~1.0g、炭水化物3.9g。ホエイタンパクを主成分にし、カルシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンB群など減量中に不足しがちな栄養素も配合しています。フルーツミックス味で飲みやすくなっています。
●ウイダーおいしい大豆プロテイン
日々の健康維持のために活用するなら「ウイダーおいしい大豆プロテイン」がおすすめです。1食分20g当たりの栄養素は、エネルギー74kcal、タンパク質10.0g、脂質0.7g、炭水化物7.0g。大豆タンパクに、カルシウム、ビタミンB群などを配合しています。コーヒー味で、大豆の独特な風味がおさえられており、飲みやすいプロテインです。
必要なタンパク質量を充たせているかを知るために、普段の食事を振り返ってみましょう。不足している場合は、脂質量が過剰にならないように気を付けて食材を選びましょう。
エネルギー摂取量を過敏に気にすることで、炭水化物や脂質を極端に減らしてしまう人もいるのではないでしょうか。そうすると、偏った食事になってしまうことによりほかの栄養素の不足につながります。
無理な食事制限は行わず、計画的に健康的な身体を目指しましょう。普段の食事では、様々な食品を組み合わせ、バランスの良い食事を心がけましょう。