車が衝突するほどのタックルなど激しくぶつかり合うラグビーにケガはつきもの。さらに、長時間全力で戦い、連戦を続けるカラダは疲労の蓄積も相当なものに。そんな過酷な状況下で、選手たちはどのように疲れを回復させているのでしょうか。
楽しく美味しくをモットーに、工夫をこらした栄養管理で選手たちをサポートする管理栄養士の金剛地舞妃さんに、選手たちの酷使されたカラダを回復させる方法について伺いました。
選手たちのリカバリーには、カラダの外と内の2つの面からのアプローチがあります。疲れたカラダを外から冷やしたり温めたりするフィジカル面でのアプローチでは、血流を良くして筋肉をいい状態に戻してあげたり。
フィジカル面のリカバリーについては、S&Cコーチやトレーナー、メディカルアドバイザーたちが選手をしっかりとケアしています。
私が選手たちに行なっているのが、カラダの内側からアプローチする栄養面でのリカバリーです。
特に試合後、選手たちはカラダの中の水分やミネラル、エネルギー源などを失い、激しくぶつかることで筋肉も分解されています。酷使されたカラダを回復させるために大切なのは、こうしたものを素早くきちんとカラダに戻してあげること。
そのため、試合後は時間を空けずにプロテインを飲んだり、リカバリーフードを食べたりすることを、選手たちには徹底して取り組んでもらっています。
試合や練習など激しく動いた後に、プロテインやリカバリー食を素早く摂らないと、体重が減っていってしまいますし、ケガの原因にもなってしまいます。ですから、試合のときには私も遠征先に同行して、選手たちを栄養面からサポートしています。
特に体重の管理は徹底的に行なっていて、普段の練習では練習前に体重を計ってからグラウンドに行き、練習後はクラブハウスで食事をして「練習で減った体重分を戻してからじゃないと帰宅できない」という決まりになっています。
みんな体重を計りながらギリギリまで頑張って食べるんですけれど、どうしてもそれ以上は食べられないという場合は、自宅でもっと食べることを約束してくれればOKとしています。
試合があるときは、試合後に選手たちがロッカールームで着替えながら食べられるものをリカバリーフードとして準備しています。リカバリーフードには、エネルギー源として糖質がとれるものや、筋肉を修復できるようにタンパク質が摂れるものをメインに、おにぎりやサンドイッチ、チキンなどいろんなバリエーションで用意しています。
試合のときはたいてい、試合が終わってから1時間後くらいにみんなロッカールームを出て行きますが、そうすると食事をとるまでに1時間以上空いてしまいます。
試合のあとは自由に楽しみたいと思うので、せめてチームとしてロッカールームにいる間に、ある程度必要なものは食べておけるようにしています。
疲れたカラダを回復させるには、運動後すぐにプロテインなどで栄養を摂ったほうがいいと言われてきたのですが、実は最近では一日のトータルとして必要な分を摂取できればいいと言われています。
でも、やっぱり時間をおいてしまうと筋肉がどんどん失われていく可能性があるので、タンパク質などはなるべく早い段階で摂っておいたほうがいいと考えています。
また、チームの中で準備できることは準備してなるべくみんなに行き渡るように、“運動後はすぐ食べる”ということを継続してやっています。
プロテインは目的別にさまざまなタイプのものがあって、試合の後はリカバリー用のプロテインを用意しています。クラブハウスではいろんなタイプのプロテインを用意していて、それぞれに、糖質何グラム、タンパク質何グラムと栄養成分の割合などを貼り出しています。
選手たちはそれを参考にしながら、その日の気分に合わせてチョイスしているようですね。中にはスムージーにする選手もいて、一緒に入れるフルーツを選んでバニラ味にしたりココア味にしたり、それぞれのアレンジを楽しんでいます。