2021年8月に行われた東京2020オリンピックでは、10代前半の選手が活躍するなど、スポーツ界の若年化は年々進んでいると感じます。スポーツ栄養という言葉の認知度も上がり、スポーツ栄養に関する情報も簡単に手に入るようになっていますが、膨大な情報の中から正しい情報を選択する必要が出てきていることも、新たな課題だと思います。
そこで、本コラムではジュニアアスリートに大切な栄養や食事に関する内容を、できる限りわかりやすくお伝えします。
今回は、ジュニアアスリートの食事の基本となる考え方について説明します。
心も体も成長するジュニアアスリートにとって重要なことは、エネルギーと栄養を、「成長」と「運動」に必要な分も含めてとることです。
安静時のエネルギー消費量を表す基礎代謝基準値は、年齢別に示されていますが、17歳までは、それ以上の年齢に比べて、とても高いことがわかります(表1)。
日本人の食事摂取基準2020年版 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf P74(参照日:2021年8月10日)
また、成長に伴う体重等の増加を考慮して、エネルギー蓄積量が策定されており、ジュニアはさらに必要なエネルギー量が多いことがわかります(表2)。
日本人の食事摂取基準2020年版 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf P80(参照日:2021年8月10日)
さらに、運動の量によって、主に3段階の身体活動レベルに分けられています。ほぼ毎日2~3時間の運動している子どもたちは、Ⅲ(高い)を活用します(表3)。この数字は、1日のエネルギー必要量の目安を算出するために活用します。
日本人の食事摂取基準2020年版 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf P79(参照日:2021年8月10日)
このように、成長段階である子どもたちにとって、エネルギーは非常に重要です。エネルギーが慢性的に不足した状態で運動をしてしまうと、成長に必要なエネルギーが不足するため、適切な成長が行われない可能性も考えられます。
サポート現場では、身長を伸ばしたいと思っている子どもたちによく出会います。「何を食べたら大きくなれる?」「牛乳をたくさん飲んだらいいかな?」と質問を受けることもありますが、何か一つだけとっていたら良いわけではなく、成長や運動に見合っただけのエネルギーや栄養が摂れていることが大切です。そのため、たくさん運動をしている子どもたちは、成長に必要なエネルギーに加え、運動で消費するエネルギーもとるために、食事を正しく食べる必要があります。食事の量が適当かどうかは、体重だけでなく、身長もこまめに測定し、成長曲線(身長・体重)の記録をつけるとよいでしょう(図1)。もしも、成長曲線をつけて、体重だけが極端に上昇していたら、食事量が多い可能性があります。
http://jspe.umin.jp/medical/chart_dl.html(参照日:2021年8月16日)
では、エネルギーをどのようにとるかについて説明していきます。
まず、エネルギー産生栄養素は、「タンパク質」「脂質」「炭水化物」で、1g当たり4kcal、9kcal、4kcalのエネルギーを持っています。また、それらをどの程度の割合でとるかについて(%エネルギー)の指標が示されています。例えば、1食800kcalを食べる場合は、そのうちの13~20%(104~160kcal)をタンパク質で、20~30%(160~240kcal)を脂質で、50~65%(400~520kcal)を炭水化物でとるということになります(表4)。
ジュニアアスリートは、1日で必要なエネルギーを、朝昼夕の3食だけでなく、練習前後や15時ごろのおやつの時間に、補食をとるとよいでしょう。補食をとることは、1食でたくさん食べられない場合や、1度にたくさん食べるとお腹が張ってしまう場合、食事の時間がかかりすぎてしまう場合の子どもたちにとって重要です。さらに運動前後での補給は、運動時に必要なエネルギーを補うことができます。補食の目的は不足するエネルギーを適切に補うために活用しますので、おにぎりやサンドイッチ、果物、乳製品などがおすすめです。チョコレートやスナック菓子、アイスなどのお菓子類は、心の健康に重要な役割を果たす場合もあると思います。活用する場合は、エネルギーを適切に保てる範囲で、食べる量を調整するように心がけていただければと思います。
ここからは具体的な例とその食品について説明します。
例)10歳の男の子で、体重は35㎏、身長は130cmです。
運動を週に5回、1回2時間行っています。
①その場合、目安として1日に約2500kcalをとる必要があります。
②次に2500kcal/日を、3食と補食に分けます。
朝食:700kcal
昼食:780kcal(学校給食)
夕食:800kcal
補食:220kcal
③最後に、具体的な食材に落とし込みます。
上記のような内容で食べられていれば、概ね必要なエネルギーと栄養素が補えます。
もし、1食で記載量を食べられない場合は、補食におにぎりや、卵入りロールパンなどを追加して、補食の割合を増やして食べられるとよいと思います。
(あくまでも参考の数値ですので、子どもたちの成長や運動量に合わせて、調整が必要です。)
エネルギーを適切にとることは、成長と運動に必要不可欠です。ジュニアアスリートは、運動量が多いことから、その分必要なエネルギーも増加します。適切なエネルギーが摂れているかは、こまめに体重と身長を測定して、成長曲線に記録をつけることで確認ができます。
必要なエネルギーをとるために、しっかりと食べて、元気に活動していただければと思います!
(文責)
三好友香