本コラムは、森永製菓inトレーニングラボにおける栄養サポートの一部をご紹介いたします。
スケートボードの試合は、予選・準決勝・決勝をそれぞれ1日ずつ計3日間で行う大会が多く、1日のスケジュールは試合前の練習から試合の終了時点まで丸1日かかることも多いです。競技時間は、1本を滑る時間は長くないものの、練習も含めると滑る本数が多いことやジャンプの回数も多くなることから、試合当日は特にエネルギー補給が重要となります。
また、海外で開催される試合が多いため、大会が行われる各地での食事の摂り方が試合に向けたコンディショニングの一つとして重要となります。
そこで、本記事では女子スケートボードストリート選手の、海外遠征時における食事の実態についてご紹介します。
海外遠征が多い選手だったため、サポート当初は海外遠征時の食事を中心にサポートをしていました。その後、複数の試合を経た時に、選手より「ジャンプ等の動きをスムーズに行うために減量に取り組みたい」という要望がありました。
実際に競技を視察していると体型にばらつきがあり、海外のトップ選手は細身の体型であるのに対し、日本のトップ選手はそこまで細身の体型ではない選手もみられることから競技特有の体型は見受けられませんでした。
そのため選手には、体重が軽くなっても必ずスキルが上がるとは限らない点や、体重の数値だけにとらわれず、実際の自分自身のパフォーマンス(動きやすさ等)を指標の軸として考えていくように伝えた上で、パフォーマンス向上に繋がる減量を実施することとしました。減量は、試合までの約1~2か月で約2kgの減量に取り組む流れとしました。
海外遠征時は、試合に向けて減量を継続しながら、エネルギー補給として糖質量は不足しないように指導しました。国によっては図1のような日本食を持参してホテルの部屋で食べることも多くあります。朝食は、ホテルのビュッフェを食べることが多いため、選手自身が食事量や内容を調整します。
寒い国に行く場合は、身体を温めるためにスープを持参し、朝食に摂取するようにしています。
昼食と夕食は、外食の場合もありますが、外食では脂質が多いものを選択する傾向があることから、試合前はできるだけ脂質量を抑えるためにも日本食を部屋で食べるように伝えています。 減量を行っていることもあり、タンパク質を十分に摂取したいのですが、遠征先の食環境によっては、脂質の多い肉類しかないような場合も多くあります。
そこで、缶詰やパウチタイプの魚類を持参してもらい、タンパク質の摂取量確保に繋げています。また、手軽に補給できるタンパク質源としてプロテインも摂取しています。
野菜は、現地のスーパーなどで購入して、ビタミン・ミネラルを十分に摂取するようにしています。海外では、衛生面にも注意しながら脂質量を抑えた食事にして、試合に向けてできる限りいつも通りのコンディションを維持することが重要となります。また、毎日の体重を測定し、減量の状況を確認しています。
試合日は、スケジュールによっては昼食の時間が十分にとれないことも多くあります。その際は、ゼリー飲料やプロテインバーなどを活用して補食をこまめに摂取するようにしています。
夕食は、翌日に向けたリカバリーとして重要となるため、食事から三大栄養素に加えてビタミンやミネラルも補給をするように伝えています。
取り組みの結果として、試合後に選手にパフォーマンスについてヒアリングを行ったところ、「身体は軽い感じがして、調子が良かった。」という主観を得られました。体重は、約1か月半の期間で1.6㎏減という結果でした。
体重が減少することの他に、食事内容が整うことによりリカバリーなどにも良い影響を与え、パフォーマンスアップにつながったのではないかと考えます。
海外遠征時は、会場の国の情報を事前に把握し、持参物や食事のスケジュールを選手と一緒に検討します。できる限り、いつも通りの食環境に近づけることがコンディショニングとして重要な点だと考えます。
また、パフォーマンス向上のための減量を行っていても、練習や試合に必要となるエネルギー量は確保しなければなりません。摂取量が少なくなりすぎないように、日々の体重や食事をモニタリングして、パフォーマンス向上に繋げていくことが重要となります。
(文責)
山上はるか