デスクワークにおける空腹感にどう対処する?
健康維持のために、体重の変動に着目している方もいるのではないでしょうか。
体重を維持したくても、増えてしまう要因の1つに「間食の摂りすぎ」があると思います。間食は、別名補食といい、足りない栄養素を補うことや気分転換に役立ちますが、摂りすぎると体重増加に繋がります。
特にデスクワークの場合は、座っている時間が多く、身体を動かす時間が少ない一方、食欲に負けてしまい、間食を摂りすぎてしまうことが懸念されます。
そこで今回は、Kohanmoo, Ali .(2020)のレビュー文献を参考に、間食の選び方について検討したいと思います。
(Evidence)
食欲とは、食べ物を食べたいという欲求や動機のことで、体重を管理する上で重要な役割を果たしています。タンパク質の摂取は、食欲に影響を与えています。そのため、高タンパク質食は身体に必要なタンパク質量を満たすことで、エネルギー摂取量を減少させることから、減量療法に用いられています。
対照的に、タンパク質摂取量が不足すると、身体に必要な量のタンパク質を得ようとして食事の摂取量が増え、エネルギー摂取量過多となり、肥満リスクの増加につながります。
今回は、タンパク質摂取後の食欲と消化管ホルモンへの影響について検討しました。
対象者は健康な成人で、対照群と介入群が同等のエネルギーを摂り、ランダム化比較試験を用いている文献を収集しました。食欲の指標は、「空腹感、満足感、満腹感、食欲、直近の食事摂取量の予測」、消化管ホルモンは「グレリン※1、CCK※2、GLP‐1※3、GIP※4、PYY※5」などでした。
これらの指標は短期間の報告(49報)ではタンパク質摂取後、5.5時間未満に測定され、長期間の報告(19報)では、3日~9か月以内に測定されました。
結果として、タンパク質摂取後、短期間では、空腹感、食欲、直近の食事摂取量を減少させ、満足感及び満腹感を増加させました。また、グレリンの減少、CCKとGLP-1の増加がみられましたが、GIPとPYYには変化はみられませんでした。長期間では、食欲の指標に有意な影響がなく、消化管ホルモンは、GLP-1のみが有意に減少しました。
※1 グレリン:胃から産生されるペプチドホルモンで食欲を増進させる働きを持つ
※2 CCK(コレシストキニン):消化産物が腸管腔に達すると分泌されるホルモンで、摂食を抑制する働きを持つ
※3 GLP‐1(グルカゴン様ペプチド-1):小腸下部のL細胞から分泌されるホルモンで、インスリン分泌を促進する作用や食欲抑制作用を持つ
※4 GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド):小腸上部のK細胞から分泌されるホルモンで、食欲抑制作用をもつ
※5 PYY(ペプチドYY):主に小腸と大腸のL細胞から分泌されるホルモンで、満腹感を維持する役割があると考えられている
(文献)
食欲との付き合い方
タンパク質はあくまでも食品ですので、食欲をコントロールすることはできません。ただ、間食を選ぶ際には今回のレビュー文献が参考になるかもしれません。
体重コントロールは、基本的にエネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスで保たれています。エネルギー摂取量は私たちが食べた食事の総量であり、エネルギー消費量は基礎代謝量、食事誘発性熱産生、身体活動量を合わせたものです。エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回ると体重は増え、下回ると体重は減ります。
間食として食べがちなお菓子などの食品は、比較的エネルギーが高くタンパク質よりも糖質や脂質の割合が高い特徴があります。また、日頃の食生活を振り返ると、タンパク質が少なく、糖質を多く含むおにぎりやパン、パスタ、うどんなど主食のみに偏りがちな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のレビュー文献を参考にすると、空腹感が気になる方は、
これらのことを踏まえて、シーンに合わせた考案を作成しました(表1)。
朝食は、身支度が忙しくゆっくり食事をとる時間がない方や、職場のデスクで朝食をとる方もいると思います。忙しいタイミングのため、片手でとれる飲むヨーグルトや魚肉ソーセージ、チーズなどを主食に加えることがおすすめです。ゆで卵はコンビニでも購入することが可能なので、比較的準備しやすい食品ではないでしょうか。
昼食は、仕事の休憩時間が短く、簡単な食事で済ませてしまったり、飲食店に行っても1品料理で栄養バランスが偏ってしまうことがあります。そこで、ヨーグルトや卵焼きをコンビニで購入することや、半熟卵やかしわ天といった食品を一緒に注文することで栄養バランスが整うかもしれません。
間食は、クッキーやせんべいなど糖質と脂質に偏りがちな場合は、チーズやプロテインバーなどの食品に置き換えてみてはいかがでしょうか。
最後に夕食です。丼やパスタも牛や鶏肉などがのっていると思いますが、それだけではタンパク質の摂取量が少なく栄養バランスに偏りがでます。そのため、シーフードや卵などタンパク質を含む主菜も一緒にとることや、チーズや飲むヨーグルトなど乳製品をデザート代わりにすることがおすすめです。
まとめ
空腹感が気になる方は間食・食事メニューの選び方に気を配ってみてはいかがでしょうか。
体重をコントロールするためには、エネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスを保つことが大切です。3食の食事以外で何か食べたくなる場合は、補食で高タンパク質・低脂質な食品を選択することや、3食の食事では主食に偏らないようなメニューにしたり、主菜をしっかりとるといったことを検討してみてはいかがでしょうか。
(文責)
吉本 寛那