コンディションを整えるためにとりたい高タンパク質の食品は?
みなさんは日々、コンディションを整えるためにどのようなことをしていますか?コンディションがよくない時は原因を探って対策を練ることもあるかと思います。原因は多岐に渡るかもしれませんが、日々の疲れが原因でコンディションが悪くなることもあるかと思います。
日本疲労学会では疲労と疲労感の定義を、「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態であり、疲労感は疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合、不快感と活動意欲の低下が認められる。」1)としています。
2021年に一般社団法人日本リカバリー協会が全国10万人に対して「日本の疲労状況」を分析した結果では、「疲れている人」、「慢性的に疲れている人」あわせて約8割に及ぶことが分かりました2)。
そのため、コンディションを整えるためには日々のリカバリーを工夫することも重要であると考えます。私がサポートしているアスリートの方々も練習やトレーニング後のリカバリー方法を日々試行錯誤しています。
リカバリーのためには良質な睡眠をとることや、バランスのよい食事をとること、生活リズムを整えること、湯船につかることなども推奨されますが、近年、研究が進んでいるリカバリーに活用できそうな食品成分もあるようです3)。
そこで、本コラムではイミダゾールジペプチドという食品成分に着目している西谷ら(2009)の報告を参考にリカバリーが必要な時にとりたい食品やとり方についてご紹介します。
(Evidence)
イミダゾールジペプチドはイミダゾール基を含むアミノ酸のジペプチドの総称で、その中でも、最もよく知られているのはカルノシンとアンセリンです。鶏胸肉にはアンセリンが豊富でイミダゾールジペプチドの総量も多いことが分かっています。イミダゾールジペプチドの影響としては、これまでの研究でマウス試験や臨床試験を通して、運動機能の向上や抗疲労が確認されています。下記に、人を対象とした研究で、イミダゾールジペプチドの抗疲労に着目したものを記載します。
【1】身体作業負荷による疲労に関する研究報告(文献4)
上記の測定を実施した結果、イミダゾールジペプチドが10 秒間全力ペダリングにおいて、疲労による最大回転数の低下を有意に抑制し(図1)、また、visual analogue scale (VAS) による主観的評価においても、疲労感の有意な上昇抑制が確認されました(図2)。したがって、イミダゾールジペプチドが疲労ならびに疲労感を軽減することが確認されました。
【2】日常作業による疲労に関する研究報告(文献5)
上記の測定を実施した結果、イミダゾールジペプチド 400 mg群 は摂取 2 週間後から摂取 8 週間後まで継続して疲労感の有意な低下が確認されました。また、イミダゾールジペプチド 200 mg群 は摂取 3 週間後、摂取 4 週間後および摂取 6 週間後で疲労感の有意な低下が確認されました(図3)。
身体作業による負荷からの疲労ならびに疲労感の軽減を実感するには、イミダゾールジペプチド400mgの4週間以上の継続摂取が必要です4)。また、日常作業による疲労感の軽減を実感するにはイミダゾールジペプチド400mgを最低でも2週間以上、継続摂取が必要となります5)。
(文献)
西谷真人, 宗清芳美, 杉野友啓, 他. (2009) 新規抗疲労成分:イミダゾールジペプチド. 日本補完代替医療学会誌, 第6巻 第3号: 123–12
上記でご紹介した研究報告を加味すると、日々のリカバリーのためには最低でもイミダゾールジペプチド400mgを2週間ほど継続してとることが必要なようでした4, 5)。2020年の研究報告では鶏胸肉100gあたりで1230~2349mgのイミダゾールペプチドを含むことが分かっています6)。
ですので、成分が調理で減る可能性も考えると、鶏胸肉を毎日50g程度食べることが望ましいと考えられます。そのため、日々のリカバリーが必要なアスリートは、鶏胸肉の摂取も選択肢の一つとしてよいかもしれません。
鶏胸肉はイミダゾールジペプチドを多く含みますが、パサパサしてあまり美味しくないイメージもあるかもしれません。そこで、鶏胸肉を柔らかく美味しく食べられる鶏ハムのレシピをご紹介します。
鶏胸肉1枚で1週間分ほどの鶏ハムができるので、薄めに切って小分けして冷凍保存すると、必要な分だけ解凍できて、お弁当のおかずやサラダのトッピングなど、毎日無理なく摂取できるかと思います。シンプルな味付けとなっていて、ソースやたれをかけて食べても美味しいので、調理中の待ち時間に作れる3種類のソースとたれもご紹介します。
まとめ
コンディションがよくない時には、まず、何が原因なのかを考え、その原因が生活習慣にある場合は、その生活習慣を改めることが必要かと思いますが、それに加えてリカバリーを意識した食品の選択を行うことも1つの方法かと思います。鶏胸肉はリカバリーに役立つイミダゾールジペプチドが豊富ですので、日々の料理のレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
(文献)
1) 日本疲労学会 : 抗疲労臨床評価ガイドライン, pp.4 (2011) , http://hirougakkai.com/guideline.pdf
2) 一般社団法人日本リカバリー協会 : 全国10万人調査から「日本の疲労状況」を発表世代別で最も「慢性的に疲れている」のは20代・30代とくに女性は5割以上と深刻に, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000085299.html,
3) 健康長寿ネット: 疲労とは?疲労の原因と回復方法, https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-shougai/hirou-busshitsu.html
(参照日:2023年1月17日)
4) 田中雅彰,鴫原良仁,藤井比佐子, 他. (2008) CBEX-Dr 配合飲料の健常者における抗疲労効果, 薬理と治療, 36: 199–212
5) 清水惠一郎, 福田正博, 山本晴章. (2009)イミダゾールジペプチド配合飲料の日常的な作業のなかで疲労を自覚している健常者に対する継続摂取による有用性― 第一次エントリー207 名の解析結果報告―, 薬理と治療, 37: 255–263
6) 北崎宏平, 片倉喜範, 投野和彦, 他. (2020)「はかた地どり」ムネ肉における機能性成分イミダゾールジペプチド含量と加熱後におけるその変動, 福岡県農林業総合試験場研究報告, 6 : 105-109
(文責)
佐藤愛