温かいプロテインにはどんなメリットがある?
日常的に運動をしている方やアスリートの中には、運動後にプロテインを飲むこともあるかと思います。プロテインにはタンパク質や糖質を手軽に補給できるものが多く、運動後に早めに飲むことでリカバリー等に影響をもたらすことが、これまでのコラムでも紹介されてきました。
アスリートのリカバリーのための栄養補給とは?~炭水化物・タンパク質に着目~
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プロテインを割る飲料の温度は指定がないため、それぞれの好みの温度で飲んでいるのではないでしょうか。森永製菓inトレーニングラボには写真のようなプロテインサーバーが設置されており、温かいものを飲むことも可能です。
inトレーニングラボを利用する多くのアスリートは、快適な室内でトレーニングを終えて飲むので、冷たいプロテインを選択することが多いのですが、仮に寒い環境で飲む場合は温かいものを飲みたい場合もあると思います。温かいプロテインのメリットは、知られているようでなかなか明らかになっておらず、これを理解することで日常的なプロテインの飲み方の幅が広がるのではないかと考えました。
そこで、藤平ら(2022)の論文を参考とし、温かいプロテインを運動後に飲むことでどのようなメリットがあるのか、そしてスポーツ現場で実践可能な方法についてもあわせて紹介します。
(Evidence)
運動後に摂取された糖質とタンパク質は胃から排出され、小腸で吸収されて筋肉のリカバリーに役立ちます。しかし、運動直後は胃排出速度が遅延することが分かっています。胃排出速度には、飲料の温度が影響を与える要因の1つとして確認されています。そこで、この研究は、運動後のタンパク質-糖質含有飲料の温度の違いが、健康な若年男性の胃排出速度に及ぼす影響の検討を目的として行われました。
対象者は、週に1回30分の運動習慣を持つ若くて健康な男性12名(年齢:23.0歳±1.3歳、身長:1.73 ± 0.06m、体重:66.5 ± 13.6 kg、BMI:22.1 ± 4.3 kg / m2)です。対象者は4℃と60℃の飲料400mL(タンパク質58.8%、脂質0%、炭水化物41.2%)を20分間の中強度間欠性運動の5分後に飲み、胃排出速度、体内への糖取り込み速度、胃腸の不快感が計測されました。
測定の結果、運動後に飲料を摂取して測定した糖取り込み速度に有意差は認められませんでしたが、試験開始から飲料摂取後30分後まで、60℃の飲料は、4℃の飲料に比べ、胃排出速度が有意に高く、また、胃腸の不快感が有意に低いことが示されました。
この研究により、中強度間欠性運動後に60℃のタンパク質-糖質含有飲料を摂取すると、摂取後30分間の胃排出が促進され、胃腸の不快感が軽減されることが分かりました。
(文献)
日常的に運動をする方や高い強度のトレーニングを行っているアスリートには、トレーニング後に冷たいプロテインを飲んでお腹が冷え、不快に感じる方もいるかもしれません。それを軽減する選択肢の一つとして、運動後にゆっくりと落ち着いて、温かいプロテインを飲むのも一つの方法かと思います。
プロテインと混合する飲料の種類は、お湯、牛乳、豆乳、アーモンドミルク、ココア、カフェオレなどホットでもおいしい、プロテインのフレーバーにあう飲料の活用をおすすめします。プロテインのフレーバーは、チョコレートやバニラやキャラメルなどがあわせやすいと思います。温度が高すぎるとタンパク質の熱変性が起こり、ダマができやすくなるので、60℃程度で混合するのが望ましいかと思います。シェーカーは熱いお湯をいれることで破損する可能性があるので、いつでも温かいプロテインが作れるようにタンブラー等持ち運んで活用できるとよいかと思います。もし、シェーカーを使用する場合は少量の水で溶かした後にお湯と混合することを推奨します。ただ、温めて飲みたいとしても、スポーツ現場ではひと手間かかるので、なかなかチャレンジしにくいかもしれません。そのような場合に、スポーツ現場の周囲の環境を踏まえた飲み方の工夫についていくつか提案しますので、参考にしていただけたらと思います。
- 電子レンジの活用
プロテインを耐熱コップにいれ、200ml程度の水や牛乳で溶かし500Wの電子レンジで2分程度加熱していただくとちょうどよい温度で飲むことができます。温度設定機能がある場合は60℃に設定して温めることを推奨します。
- 電気ポットの活用
スポーツ現場に電気ポットを置ける場合は、その場でプロテインを溶かして飲めるようにするのも良いと思います。温度設定機能がある場合は60℃程度で保温しておくことを推奨します。
- 保温可能な水筒(タンブラー等)の活用
スポーツ現場に電子レンジや電気ポットが置けない場合は、保温可能な水筒やタンブラーを持参するのも一つの方法かと思います。水筒によって保温力はさまざまですが、沸騰したてのお湯をいれて約3時間程度で、おおよそ60℃程度になります。
- コンビニや自動販売機の活用
上記の方法が難しい場合は自動販売機やコンビニを活用することも可能です。温かい缶飲料はダマになりにくい温度(60℃以下)のドリンクであるため、持参した水筒やタンブラーでプロテインと混合するとよいと思います。また、コンビニで購入できるカップドリンクにプロテインを溶かすのも一つの方法かと思います。
プロテインを温めて飲む際の注意点や、おいしくかつ実用的に飲む方法についてはこちらの記事でも紹介されておりますので参考にしてください。
プロテインはお湯、温めた牛乳で飲んでも良い?ホットプロテインでタンパク質摂取!
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=110&category=health
まとめ
運動後にプロテインを飲む際に冷たいプロテインではお腹が冷えてしまうという場合、温めて飲むことも選択肢の一つにあると思います。ちょっとした工夫をすることで、家だけではなくスポーツ現場でも温かいプロテインを飲むことが可能です。このコラムが日常的なプロテインの飲み方の選択肢を増やす提案となれば幸いです。
(文責)
佐藤愛