現在、世界中で摂取されているタンパク質の約6割は植物由来であり、世界で推定40億人は植物性食品ベースの食生活を送っていると言われています。1)
タンパク質の種類は、アミノ酸の吸収に影響し、一般的に動物性タンパク質は植物性タンパク質に比べて吸収効率が高いと言われています。エンドウ豆タンパク質のようなほとんどの植物性タンパク質は、筋肉に対して重要な役割を果たす分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含有量も少ないです。
そこで今回は、植物性タンパク質の組成上の欠点を克服すべく組み合わせに関するRalf Jägerら(2020)の論文を参考にしながら、植物性タンパク質の摂取について検討しました。
仮説として、プロバイオティクス※の補給が腸内細菌叢に好ましい変化をもたらし、宿主による植物性タンパク質からのアミノ酸の吸収を助けると考えました。
そこで、15名の対象者を、1日20gのエンドウタンパクとプラセボ群と1日20gのエンドウプロテインとプロバイオティクスを摂取する群に無作為に振り分け、摂取してもらいました。
2週間の摂取期間の後、4週間のウォッシュアウト期間が設けられ、その後、逆の条件での測定を行いました。ベースライン、摂取後30分、60分、120分、180分に血液を採取し、アミノ酸含有量を分析しました。
結果として、プロバイオティクス投与により、メチオニン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、総BCAA、総EAAの最大濃度および濃度対時間曲線下面積が、最大濃度に達するまでの時間を変化させずに、有意に上昇しました。
結論として、植物性タンパク質とプロバイオティクスの同時補給が、筋肉の健康状態と密接に関連するEAAおよびBCAAを含む血中アミノ酸の食後変化を増加させることを示唆しています。
プロバイオティクスの補給は、植物性タンパク質の組成上の欠点を克服するための重要な栄養戦略となり得ると言えます。
※プロバイオティクス:腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物。プロバイオティクスの候補としては乳酸菌やビフィズス菌が有名。
植物性タンパク質を積極的に摂取するアスリートの中には、筋肉への影響を考えると動物性タンパク質と比較して欠点があると感じる人もいるのではないでしょうか。
上記でご紹介した論文を参考にして、植物性タンパク質と乳酸菌やビフィズス菌入りのプロバイオティクス商品を同時に摂取することを取り入れてみてはいかがでしょうか?私が考える、植物性タンパク質とプロバイオティクスの具体的な組み合わせをご紹介します。
また、納豆は、植物性タンパク質の食材でもあり、プロバイオティクスの食材でもありますので、日頃活用しやすい食材かと思います。
今後私も、アスリートサポートをする中で、食事メニューの提案などをする際には、植物性タンパク質とプロバイオティクスの組み合わせを考慮して、メニューに組み込みたいと思いました。
植物性食品を摂取する中で、血中アミノ酸濃度を増加させるためには、プロバイオティクスを含む食材・商品とあわせて摂取することが重要です。
動物性食品を何らかの理由で控えているアスリートにとっては、プロバイオティクスをプラスする少しの工夫をすることで、植物性タンパク質のみを摂取するよりも、身体に良い影響を与えるような食事に改善させることができるのではないでしょうか?
(文責)
山上はるか