スポーツの現場では、1日にわたる練習や、1日2試合以上組まれているスケジュールを連日こなすこともあると思います。そのような場合、アスリートは最初の練習や試合で使われたエネルギー源であるグリコーゲンを、次の練習や試合までに補う必要があります。
十分にグリコーゲンを補うことができない場合は、エネルギー不足となってパフォーマンスやトレーニング、練習の質の低下に繋がる可能性があります。また、筋グリコーゲンが減少した状態が続くと、体タンパク質を分解して得られたアミノ酸が、エネルギー源として使われてしまうことから、グリコーゲン不足には注意が必要です。
このようなことを防ぐために、アスリートは練習や試合後に様々な栄養補給を実践していることと思います。
そこで今回は、Kloby Nielsenn, L. Lら(2020)のレビュー論文を通して、練習や試合後の栄養補給時に糖質のタンパク質の摂取がパフォーマンスに影響することについて理解を深めました。
長時間の中・高強度の激しい運動時の主要なエネルギーは筋グリコーゲンであり、激しい運動時の疲労の発生は、筋グリコーゲン濃度の低下と関連しています。多くの研究から、運動後のリカバリー時に糖質を摂取することでパフォーマンスの向上を示していることが報告されています。また、糖質とタンパク質の同時摂取は、特定のアミノ酸とタンパク質がインスリンを介した経路でグリコーゲン貯蔵量を増やす効果が期待できるため、運動後のリカバリーについて注目を浴びています。
そこで糖質のみと糖質とタンパク質の同時摂取がパフォーマンスに及ぼす影響についてまとめました。
対象者は、1時間以上の持久系競技を行う18歳以上で、男女比は、それぞれ79.8%、20.2%と男性が多い傾向でした。
結果として、運動中及び運動後の糖質とタンパク質の同時摂取は、糖質のみと比較して、有意にパフォーマンスを向上させました。
しかし、運動後に糖質とタンパク質の同時摂取を行った群と糖質のみを摂取した群それぞれに次の運動までの回復時間を短期間(8時間以下)設けた場合は、パフォーマンスに、有意差はありませんでした。
結論、糖質とタンパク質の摂取は、パフォーマンスを向上させることが示されました。したがって、運動中や運動後は糖質に加えてタンパク質も同時に摂取することが推奨されます。
今回、ご紹介したレビュー論文の対象者は、トライアスロンなど持久系スポーツでしたが、その他の競技に対しても、応用できるのではないかと考えています。
例えば、3日間で数試合を行う競技の場合は、早いリカバリーを必要とします。また、合宿や練習でも、2部練習や3部練習が連日行われる場合にも同様のことが言えると思います。
私が担当している柔道選手の試合は、トーナメント戦なので、決勝まで進むと1日に数試合行われます。試合時間は4分ですが、延長戦に入ると10分近くなることもあります。試合間は40分~1時間半と短いことから、素早いリカバリーが求められるため、試合間の栄養補給がとても重要です。そこで、試合間の補食は、糖質の多い団子やバナナ、カステラ、ゼリー飲料などを栄養補給していますが、試合中に栄養補給をすることが難しいため、タンパク質も少量含まれているゼリー飲料などを活用することもあります(図1)。
2部練習が連日行われている場合、夕食は次の運動まで8時間空くため、バランスのとれた食事を前提として、タンパク質を十分に摂取することをお伝えしています。ただ、練習終わりは疲れているため、1つのお皿で糖質とタンパク質が摂取できる丼やパスタなどのメニューを推奨しています。
アスリートにとって、糖質とタンパク質の同時摂取をすることは、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があると考えられます。
したがって、運動中と運動後の補食や食事をする際には、糖質とタンパク質を多く含む食品を選択することがポイントです。試合や練習のスケジュールを考慮しながらメニュー選択の参考としてみてはいかがでしょうか。
(文責)
吉本 寛那