肉類からのタンパク質摂取、アスリートにとっての利点は?
アスリートにとって肉類は、タンパク質を摂取するために選択しやすい食品だと思います。実際に、鶏肉や豚肉、牛肉などを使った料理は豊富で、ご家庭での食事や外食においても1日に1回は食べているという人も多いのではないでしょうか。
一方で、環境負荷や健康の観点から、植物性の食品や昆虫食などにも注目が集まっている現状もあると思います。本サイト内のコラムでも一部紹介していますので、参考にしてみてください。
ベジタリアンアスリートのタンパク質摂取は?
https://www.morinaga.co.jp/protein/dietitiancolumns/detail/?id=13&category=special
タンパク質を昆虫食から摂る場合の筋タンパク質合成は?
https://www.morinaga.co.jp/protein/dietitiancolumns/detail/?id=37&category=special)
肉類は環境への負荷が大きい一方で、アスリートにとって肉類の役割は大きいように思います。このような背景から、Corcia et al.(2022)の文献で、アスリートにおける肉類のタンパク質の利点について理解を深めました。
(Evidence)
運動をする人におけるタンパク質の重要な役割は、筋肉の成長と回復です。タンパク質の摂取は、筋タンパク質合成を刺激し、運動による損傷組織の修復に関わります。また、運動中にはミネラルやビタミンの必要量が著しく増加します。
これらの微量栄養素は、代謝過程、酸素運搬などにも関与します。さらに、運動によって誘発される酸化的損傷には、抗酸化物質が保護する役割を果たします。
肉類は良質なタンパク質をはじめ、脂質、ビタミン(B2、B6、B12、パントテン酸、ナイアシン)、ミネラル(鉄、亜鉛、リン酸、セレン)などの栄養素を含みます。さらに、生理活性物質※1や抗酸化物質が豊富に含まれています。100gの肉類には、部位によりますが約20gのタンパク質が含まれており、これは運動後の筋タンパク質合成を促すために必要な量と同程度です。また、肉類のタンパク質はアミノ酸がバランスよく含まれていること、特に運動による筋損傷との関連が報告されているグルタミンやBCAAが重要です。
下図は、アスリートが肉類を適切に摂取することで、健康維持に役立つ生理活性物質やタンパク質、ミネラルなどが体内に供給され、それらの機能により、パフォーマンスや筋肉の回復に関わることが示されています。
文献より図引用 文責者和訳
アスリートの食事は、摂取エネルギーを炭水化物約55%、タンパク質約15%、脂質約30%から摂取すること、すなわち一般的な人に推奨されるバランスが必要です。
サポート現場での活用
アスリートの栄養サポートにおけるタンパク質の必要量は、目的や運動量、競技、個々の体格によって異なります。アスリートは身体が資本であるため、日々の練習やトレーニングからのリカバリーを考えることは、多くのアスリートに当てはまることだと思います。
肉類には、タンパク質をはじめとする栄養素や生理活性物質※1が含まれていることから、アスリートの身体にとって役立つ可能性が示されていることが分かり、現に多くのアスリートが肉類の恩恵を受けているのではないかと思いました。
一方で、肉類に含まれる脂質は、動物性脂肪すなわち飽和脂肪酸が多い特徴があります。日本人の食事摂取基準2020年版で、飽和脂肪酸の摂取目標量をエネルギー比率7%以下と示されているように、過剰摂取による健康への影響も懸念されます。
肉類の中でも、それぞれ特徴があるため、それを踏まえたうえで選手への情報提供を心がけています。例えば、牛の赤身肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、極端に牛肉を控えると、不足しがちになるかもしれません。
また、豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれる特徴があり、練習量が多かったり、試合が連日続いたりする場合は、エネルギー消費量が多く、ビタミンB1の必要量も増えるので、おすすめしています。
文献内でも述べられているように、アスリートの食事であっても基本的には栄養バランスが重要であることを改めて認識し、タンパク質を供給する肉類をアスリートが適切に活用できるようアドバイスを続ける必要性を感じます。
肉類以外でタンパク質を豊富に含む食材には、魚、卵、乳製品、大豆製品などがありますが、それぞれに特徴があります。例えば、魚には良質な脂質であるEPAやDHAが含まれ、卵はビタミンAやビタミンDなど不足しやすいビタミンが含まれており、乳製品はカルシウムが豊富で、大豆製品は植物性の食品のなかでタンパク質を豊富に含みます。
これらの特徴を踏まえたうえで、目的に応じて組み合わせながら活用していくことが重要だと思います。その中でも、今回の文献でとりあげた肉類は、より多くのタンパク質が摂取でき、アスリートにとってパフォーマンスの鍵となる筋肉に影響を与える可能性があります。
まとめ
環境負荷や健康の観点から、植物性食品に注目が集まる中、肉類の摂取は、アスリートにとって以下のような利点があることが分かりました。
・タンパク質が多く、アミノ酸がバランスよく含まれている
・生理活性物質やタンパク質、ミネラルが体内に供給され、その機能がパフォーマンスや筋肉に関わる
これらの情報が、アスリートやそのサポート従事者にとって有益となり、適切に活用されることに繋がればと思います。
※1 生体の生命活動や生理機能の維持および調節にかかわる化学物質の総称
(文責)
高倉 弥希