アスリートやトレーニングをしている人は、筋肉量を増やすために、食事からも意識的にタンパク質を摂取する人が多いと思います。体内で、筋肉タンパク質分解よりも合成が増加することで筋肉が肥大するため、タンパク質の摂取は筋肉量の調節のための重要な要素の1つとなります。
みなさんは、朝・昼・夕の3食のタンパク質摂取量のバランスについて考えたことはありますか?3食で概ね均等に摂取できている人もいれば、昼や夕食は十分摂取できるが、朝食が不足している傾向の方も多いかもしれません。
そこで、3食のタンパク質摂取量と筋肉量の関連について、安田ら(2019)の論文を参考に検討していきたいと思います。
本研究の対象者は、266名のスポーツクラブに所属していない健康な大学生・大学院生です。
筋肉タンパク質合成を最大化するために、1食あたり0.24g/kgBWのタンパク質摂取が必要であるという報告があります1)。その研究では、1日を通して筋肉タンパク質合成を最大化するために3食(朝・昼・夕)で一定量のタンパク質摂取量が必要であることを示唆しています。
そこで、安田ら(2019)の研究では、3食の食事で0.24g/kgBWのタンパク質を摂取することが、除脂肪量と関連しているかどうかを調べています。
図1 グラフA:合計FFM(Free Fat Mass:除脂肪量)、グラフB:四肢FFM
APグループ(3食すべてで0.24g/kgBWを超えるタンパク質量摂取)と、NPグループ
(1食以上0.24g/kgBWのタンパク質摂取量を満たしていない)の体組成の比較
図2 □:APグループ(3食すべてで0.24g/kgBWを超えるタンパク質量摂取)と、■:NPグループ
(1食以上0.24g/kgBWのタンパク質摂取量を満たしていない)の各食事時のタンパク質摂取量と合計量
図1は、APグループとNPグループにおける合計FFMと四肢FFMを示しているもので、3食すべてにおいて、0.24g/kgBWのタンパク質を摂取しているグループの、除脂肪量が高いことが明らかになりました。したがって、1日の総タンパク質摂取量を十分に摂取することよりも、3食すべてで自分にあった適切な量のタンパク質量を摂取することが除脂肪量を維持するのに効果的であることが示唆されます。
また、図2は、APグループとNPグループにおける各食事のタンパク質摂取量を示しているもので、対象者のほとんどは昼食と夕食で0.24g/kgBWのタンパク質摂取量を満たしていましたが、朝食では満たしていない人が多くみられました。したがって、朝食時に自分にあった適切なタンパク質量を摂取すると、1日の総タンパク質摂取量が増えることに繋がり、その重要性が高いと考えられます。
(文献)
上記の文献を読み解くと、3食すべてにおいてタンパク質を十分に摂取している人は、除脂肪量が多いということが明らかになっています。したがって、1日の総タンパク質の摂取量については、それぞれの目的や状況にあわせた適量を摂取することをおすすめします。1日の総タンパク質摂取量を意識して食事をとる事が多いかもしれませんが、3食や補食を含めて1日の中で偏りがないようにタンパク質を摂取することが大切です。特に、朝食ではタンパク質が不足しがちであることも報告されていますので、朝食で意識的にタンパク質を含む食品を選択することが重要であると考えられます。朝食時は準備する時間が十分にとれないという方でも、タンパク質を摂取できる工夫として、ヨーグルトを事前に買っておく、卵を事前に茹でてすぐに食べられる状態に準備しておくなど、自宅でできる工夫をするのもよいでしょう。また、朝にコンビニを利用する方は、高タンパク質のサラダチキンやサラダフィッシュを選ぶようにしたり、栄養補助食品であるプロテインやプロテインバーを選んだりすることで、手軽に十分な量のタンパク質を摂取できます。
実際にサポートしているe-SPORTS選手(男性、体重65㎏)も、1日にタンパク質を均等に摂取できるように食事内容を意識しています。表1は、その選手のある1日の食事例になります。
表1 e-SPORTS選手 ある1日の食事例とタンパク質量
上記の論文で推奨されている、タンパク質量0.24g/kgBW(体重65㎏の場合15.6gに相当)を3食すべて上回って摂取できていることがわかります。少しの工夫で、タンパク質摂取量を増やすことが可能ですので、自分が継続できる方法を探して、3食で偏りなくタンパク質を摂取して、除脂肪量の維持や増加に効果的な食事をとるようにしましょう。
(文責)
山上はるか