タンパク質を多く含んだ製品は、数多くの種類が発売されており、誰でも手軽に購入できます。粉末やバー、ゼリーなどに加工され、形状が異なる食品やサプリメントも多く見受けられます。その商品の原材料名を見ると、牛乳由来のホエイタンパク質やカゼインタンパク質の商品、大豆由来のソイタンパク質商品、さらにエンドウ豆など植物性タンパク質由来の商品など、タンパク質の原材料も多岐に渡っています。
どの製品を利用するかについては、味や形状(粉末・バー・ゼリーなど)も重要だと思いますが、今回は、ホエイタンパク質・カゼインタンパク質・ソイタンパク質(以下、ホエイ・カゼイン・ソイと記載します)に注目し、それらを摂取したときの筋タンパク質合成や血中アミノ酸濃度などの特徴について、Jason E. Tangら(2009)の文献をもとに解説し、実際に活用する際の考え方について説明します。
週2~3回のトレーニングを行っている健康な男性18名(年齢22.8±3.9歳、身長179.7±5.1cm、体重86.6±13.9㎏)をホエイ・カゼイン・ソイの3群(各6名)に分け、実験を行いました。実験室に集合し、ベースラインの採血後、片足を安静とし、その逆足でレッグプレスとニーエクステンションを規定数実施しました。その後試験飲料を摂取し、トレーニング後180分目までに計6回採血を行いました。試験飲料は、ホエイ・カゼイン・ソイの3種類で、そのすべてで必須アミノ酸(Essential Amino Acids:EAA)が10g含むように設定され、総タンパク質含有量が、ホエイ21.4g・カゼイン21.9g・ソイ22.2gです。
結果、血中インスリン濃度は、飲料摂取後60分で、ホエイとソイが微増し、カゼインは開始前とほぼ変化しませんでした。飲料摂取後30分の血中EAA濃度と血中ロイシン濃度は、ドリンク摂取後すべてで増加しました(血中EAA濃度:ホエイ≒ソイ>カゼイン、血中ロイシン濃度:ホエイ>ソイ>カゼイン)(図1,2)。
血中EAA濃度の上昇がホエイとソイで似た傾向があるのにもかかわらず、筋タンパク質合成速度(Mixed muscle protein fractional synthetic rate:FSR)は、トレーニング後において、ソイよりもホエイが高くなりました(図3)。
結論として、ホエイはカゼイン、ソイと比較して筋タンパク質合成を刺激し、これには、ロイシンが関与している可能性があります。また、EAAを最適な量(~10g)摂取することは、筋タンパク質合成を最大限にサポートするために重要である可能性があります。
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図1 血中アミノ酸濃度 |
図2 血中ロイシン濃度 (AUC:濃度時間曲線下面積) |
図3 筋タンパク質合成速度
*カゼインと有意差あり
#ソイと有意差あり
以上のことより、ホエイ・カゼイン・ソイの特徴についてまとめました。
文献を参考に筆者作成。
それぞれに特徴がありますが、例えば、トレーニングを高負荷で実施しており、筋タンパク質合成を意識したいときには、運動後のホエイ摂取がより有効になるかもしれません。しかし、血中濃度を安定させ、筋分解速度の抑制に重点を置くタイミングの就寝前や食間には、カゼインが適しているかと思います。
ソイは、乳糖不耐症の方やヴィーガンの方も利用できるタンパク質源です。運動後の筋タンパク質合成はホエイと比較するとやや劣ると考えられます。また、原材料である大豆には、イソフラボンという成分が含まれており、これは女性ホルモンの一つであるエストロゲンと似た作用があります。そのため、女性向けの商品が多い印象ですが、男性も植物性タンパク質の補給として、活用できます。
すべての栄養素や成分に言えることですが、過剰になるほどに偏った摂取は控えることが賢明です。そのため、普段から大豆、納豆、豆腐、豆乳、きなこなどの大豆製品をたくさん食べており、さらにプロテインやその他加工食品から、大豆由来のものを1日数回摂るような場合は、一度内容を見直すことも必要かもしれません。
ホエイ・カゼイン・ソイにはそれぞれ特徴があるため、その特徴を生かしたタイミングで摂取することが有効であると考えます。しかし、タイミングごとに毎回違ったものを摂ることが負担になり、続かない原因になるかもしれないので、「自分にベストなものは〇〇」と、ある程度決めて手間をかけないことも重要かと思います。
サポート選手も、日頃のスケジュールに合わせて、摂取する内容をある程度決めています。今回は、2つの事例を紹介します。
身体の大きな選手は、3食の食事でタンパク質を補給し、さらに午前のトレーニング後にマッスルフィットプロテイン(ホエイ・カゼイン)を摂取しています。また、夕食後に練習する場合は、練習後の補給にマッスルフィットプロテインを摂取しています。3食の食事に追加してプロテインを摂る理由は、必要なタンパク質量が多いことと、3食だけでは食間が5時間以上空いてしまうためです。午前のトレーニング後と午後の練習後は、同じ種類のプロテインを活用していますが、午前のトレーニング後にはホエイの特性を活かし、夕食後の練習は就寝に近い時間のため、カゼインの特性を活かせると考えられます。
練習時間が長い選手は、その小休憩時の補食として、グラノーラバー(ソイ)とinゼリーエネルギーを食べています。ゼリーとバーから糖質を補い、さらにバーからタンパク質を補います。過度な空腹を感じない程度に補給し、長時間の練習を最後まで集中して行えるよう、ルーティン化して補給しています。
今回は、Jason E. Tangら(2009)の文献を参考に、タンパク質の原材料の違いと、それぞれの特徴について説明しました。筋タンパク質合成速度は、ホエイで最も速く、次にソイが速いという結果でした。運動後は、ホエイまたはソイのプロテインを活用し、補食や就寝前には、カゼインまたはソイのプロテインの活用が有効だと考えられます。
様々な商品がありますが、味やタンパク質の含有量だけでなく、その原材料にも注目することで、より自分自身に適した商品を選択しやすくなると思います。
(文責)
三好友香