トップアスリートをはじめ、日頃からスポーツに取り組んでいる方は、怪我の予防やベストパフォーマンスを発揮するために食事管理も意識していることと思います。特にタンパク質は、骨格筋量の維持や筋タンパク質合成に影響を及ぼすため、アスリートにとって重要な栄養素の1つと言えます。
さて、昨年行われた東京2020オリンピック・パラリンピックや今年の2月に開催された北京オリンピック・パラリンピックから男女混合の競技が注目を集めたことと思います。
実際に国際オリンピック委員会(IOC)が2014に採択したオリンピック改革案の「オリンピック・アジェンダ2020」において、男女平等の推進として「女性の参加率50%の実現」と「男女混合の団体種目の採用の奨励」が目標に掲げられていました¹⁾。このように女性が活躍する機会が年々増えてきています。
そこで今回は、閉経前(18歳~45歳)女性アスリートのタンパク質必要量についてまとめられたDrew Mら(2020)のレビュー論文をご紹介します。
American College of Sports Medicine(ACSM)が2016年に示しているポジションスタンドでは、1日に必要なタンパク質摂取量を1.2~2.0g/kg/日※1と示している。
これは一般的な栄養不足防止を目的とした推定平均必要量(0.6~0.8g/kg/日)よりも高い。このガイドラインは、主に男性アスリートに対する必要量を調査する研究に基づいている。
そこで、男性だけではなく、レクレーションもしくは競技スポーツを行う閉経前の女性アスリート204人を含む14件の研究をまとめ、持久的運動、レジスタンス運動、間欠的運動別に、日常および運動前、運動中、運動後のタンパク質摂取量に関する現在のエビデンスを概説することとした。
閉経前の女性アスリートのタンパク質摂取量は、60分~90分の持久的運動で1.2~1.63g /kg/日、レジスタンス運動で1.49g/kg/日、間欠的運動で1.41g/kg/日とほぼ同等であった。
これらの必要量は、ACSMの示すポジションスタンドの中間範囲内にある。また、運動前後にタンパク質量を0.32~0.38g/kg摂取する事で、閉経前の女性アスリートにおいて、最大筋力の増加や身体組成の改善、運動後の回復など生理学的反応を示すことが実証されている。
※11日で体重1㎏あたり
(文献)
この論文から、女性アスリートに必要なタンパク質量は推定平均必要量より多いことが示されました。アスリートそれぞれの状況は異なると思いますが、少なくとも男女関わらず、タンパク質を十分に摂取する必要があるということは言えそうです。
特に、新体操などの審美系競技や長距離走などの持久系競技、柔道などの体重階級のある競技など、コンディション調整のためにウエイトコントロールに取り組む際に極端な食事制限を行ってしまうことでタンパク質量の不足も懸念されると思います。
〇サポート現場での活用〇
実際に私がサポートしている選手は、タンパク質を摂取する場合、メイン料理を多く摂取することで限られた食品に偏りやすく、エネルギー量や脂質量も多く摂取してしまう傾向があります。そのため、献立を考える際は、一つの食品に偏ることなく手軽にタンパク質を摂取できるように、サラダや和え物、汁物などの副菜に必ずタンパク質を多く含む食品が入ったレシピをお伝えしています(図1)。
例えば、ブロッコリーときのこのサラダにタンパク質の多い食品を加える場合は、しらすやちくわ、はんぺんなどを合わせると良いと思います。これらは加熱調理が不要で、手軽にタンパク質を追加する事が出来ます。
さらに冷凍のミックスシーフードの場合は、数分茹でるだけで食べることができるため、調理時間を短縮したいときに万能な常備品となることもお伝えしています。また、日頃の食事だけではタンパク質量を補えない場合、補食にプロテインバーなど栄養補助食品を活用することも1つの手段です。
女性アスリートに必要なタンパク質量は、パフォーマンスの向上を目指してトレーニングを行ったり、コンディションを整える上で、一般人よりも多いです。タンパク質量を増やすためには、意識をしないと難しいかもしれません。
今回ご紹介したような方法も、是非日常生活の中で試してみてはいかがでしょうか。
参考文献
公益財団法人 日本オリンピック委員会
https://www.joc.or.jp/olympism
(参照日:2022年4月1日)
(文責)
吉本 寛那