ジュニアアスリートの水分補給~自転車教室のサポートを通して~
スポーツにおける水分補給はパフォーマンスに影響するため、重要であることは多くの方がご存知だと思います。一方で、様々なスポーツ現場で、脱水による体調不良や熱中症が起きるリスクがあると思います。そのため、水分補給についての知識を身に付けて、予防することが重要です。
2021年度から森永製菓inトレーニングラボは、神奈川(横浜)と静岡のマウンテンバイク教室Bicycle Academy(以下BA)のトレーニングと栄養のサポートを開始しています。トレーニングは準備運動のプログラム作成、そして栄養は動画配信を通して生徒たちが、健康に楽しく自転車の練習を続けることができ、さらに上達していけるようなサポートを目指しています。 BAには小学生低学年~高学年(一部中学生)が参加しています。詳しい教室の情報は、BAのHPをご覧ください。(https://bicycleacademy.jp/)
春から夏にかけて、スポーツをする子どもの熱中症や脱水症状には注意が必要です。そこで、気温が上がり始める6月に水分補給の動画配信を行いました。今回のコラムでは、実際に配信した水分補給の動画の一部をまとめましたので、ご紹介します。
体重に占める体水分の割合とその役割
体水分は、成人した大人で体重の60%程度です。一方で、成長期の子どもは、約70%と体重に占める体水分の割合が高い特徴があります。
身体の中での水分の役割は大きく3つで、①酸素や栄養素を全身に運ぶ役割、②老廃物を身体の外に出す役割、③体温を調節する役割があります。これらの役割は、生きていくために必須ですが、身体を動かすことにも大きく関わります。
運動をすると、血液の循環が盛んになり、全身に酸素を運んだり、高くなる体温を下げるために汗をかいたりします。そのため、体水分がいつもより少ない状態で運動を行うと、パフォーマンスが低下することが分かると思います。
「汗をかく=身体の水分が減る」というイメージはしやすいと思いますが、日常生活で喉が渇くことも、身体の水分が少なくなっているサインです。運動をしていなくても、血液は常に身体中を循環していて、排尿や見えない汗として皮膚からの損失もあるため、誰でも知らないうちに水分を失うリスクがあります。
喉が渇いたと感じたときには、既に2%の水分を失っており、運動能力も低下することが分かっています。要するに、運動前はもちろん、日常的にも喉が渇く前にこまめに水分補給をすることが重要です。
尿の色と脱水の関係
身体に必要な水分量は、運動や汗、体温の状態、季節によって変化する気温や湿度などの色んな要因によって変化します。体水分量の状態を把握する一つの方法として、尿の色があります。朝起きてすぐにトイレに行きたくなることがあると思いますが、その時の尿の色は比較的濃い色のことが多いと思います。
寝ている間も身体では代謝が続いており、水分をとることもほとんどない状況なので、脱水が進行します。起きている間も、色の濃い尿が出る場合は、脱水の可能性があるため注意が必要です。
(動画に使用した著者作成図を一部改変して掲載)
水分の種類とその選び方
水、お茶、スポーツドリンク、果汁ジュース、牛乳などの様々な飲み物がある中で、嗜好や用途に合わせて選ぶことが多いと思います。用途に合わせる場合、それぞれの特徴をきちんと理解しておくことが重要です。
水やお茶は、主となる日常的な水分補給で用いやすく、エネルギーやその他の主要な栄養素は比較的含まれないのが特徴です。軽い運動をする前も水やお茶で水分補給を行い、運動中の脱水を予防することが大切です。
スポーツドリンクは運動中のエネルギーになる糖質や、汗と一緒に身体の外に排出されてしまう栄養素、主にミネラルを豊富に含む特徴があります。その含有量は、スポーツドリンクの種類によって少しずつ異なりますが、汗を多くかく場合や、練習時間が長かったり、練習強度が高かったりする場合は、発汗によるミネラルの損失やエネルギー消費も多いため、スポーツドリンクを選択することが重要だと思います。1時間以内の軽い運動や、汗の量が少ない場合などは水でも良い場合もあります。
果汁ジュースや牛乳は、嗜好品として日常的に飲む人も、あまり飲まない人もいるかと思います。果汁ジュースの特徴は、果汁の割合や甘味の調整で含まれる糖類の量によって異なりますが、炭水化物を含むため、エネルギー補給にも活用できると思います。また、果物に含まれるカリウムやビタミンCなどの栄養素を補うことにも活用できると思います。
牛乳の特徴は、タンパク質、脂質、炭水化物を含み、カルシウムやビタミンB群などの栄養素も補うことができます。特に、成長期の子どもにとって重要な、骨の成分であるカルシウムや、身体の組織の材料となるタンパク質の充足のために用いやすいと思います。
1日のカルシウム摂取量は日本人の食事摂取基準2020年版において、8歳~9歳の男子で650mg、女子で750mgが推奨されており、コップ3杯程度の牛乳で補うことができます。ただし、日常的に果汁ジュースや牛乳をたくさん飲むと、エネルギーや偏った栄養素の過剰摂取に繋がったり、余計に喉が渇いたり、食事時の空腹感に影響が及び肝心な食事が十分に食べられないかもしれないため注意が必要です。
果汁ジュースや牛乳は、食後のデザートや補食として活用することで、成長期に重要なエネルギーや栄養素を補うことに役立つと思います。
BAは野外のスクールで、天気が良い日は直射日光を受けることもあり、体温上昇に注意が必要です。野外に限らず、体育館などの屋内スポーツでも空調設備がない場合は、体温が上がりやすいと思います。このような体温調節が重要になる場合、こまめな水分補給が鍵になります。
また、運動前や運動中、運動後はもちろん、日頃から体水分を充たしておくことがパフォーマンスや体調管理に重要です。全国でスポーツを頑張っているたくさんの小中学生とその保護者の皆様にも役立つ情報になればと思います。
(文責)
高倉 弥希