「日本人の座位時間は、世界20か国の中で一番長く、座りすぎのリスクが大きい」1)という報告をご存知の方もいるのではないでしょうか。
座りがちな生活が長時間続くと、慢性疾患や死亡のリスクが高まる可能性があることも示唆されています2)。
一方で、そのリスクとは裏腹に、2020年に入り新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、厚生労働省からは感染予防対策の一環として「テレワークの実施」が推奨されています。そのため、以前よりも外出頻度が減り、自宅で過ごすことによって座っている時間が増えているのではないでしょうか。
こうしたCOVID-19対策による外出制限から引き起こされる健康への悪影響と健康維持のための対策についてKing, A.J(2020)のレビュー論文をご紹介します。
COVID-19の影響によってロックダウンやスポーツイベントなどの制限が行われ、国際的に人々の日光への曝露が減少している。このような政策によって日常生活が変化し、食習慣などが乱れがちになる(図1)。
日常生活が変化する中で人々は結果的に孤立することで引き起こされる懸念は、デスクワークなど座って過ごす時間が増えることによって、エネルギー消費量が低くなることである。
こうした身体活動量の減少は、脂質異常症やインスリン抵抗性など多くの健康への悪影響と関連している。例えば、健康的な若い男性が2週間の間、1日の活動量を10,501歩から1,344歩に減少したところ、骨格筋のインスリン感受性、心肺機能、除脂肪体重が低下している。
また、身体活動量の減少と裏腹に、食事摂取量に関しては増加することが想定される。外出制限などによってエネルギー消費量とコニュニティーの場が減少し、毎日の食事の時間枠の増加によって、結果的に体重増加に直面する可能性がある。
食事をする時間は、肥満の人の場合、1日あたり最大15時間で、エネルギー摂取量の大部分を午後遅くから夕方にかけて摂取する傾向があった。
これらに対する健康維持のための対策は、エネルギー消費量とエネルギー摂取量のバランスを調えることである。そのために、身体活動量を増加させて、食生活を見直す必要がある。最初のステップとして、軽い歩行によって座って生活する時間を短縮することが有効である。
また食生活は、運動不足による筋タンパク質の減少を抑制するために、1日のタンパク質摂取量を1.2g/kg/日にすることが重要である。食事の量は朝食時に増やして、夕食時に減らすことや、朝食を8時に摂り、夕食を18時に済ませるといった食事をする時間を10時間に短縮することが重要である。
結論として、座っている時間を減らすことは、代謝を維持するための重要な第一歩となる。さらに、十分なタンパク質摂取と食事をとるタイミングを意識することが、健康への悪影響を最小限に抑えることができる。
(文献)
座りがちな生活が多い人は、まずは1日に座っている時間を見直し、少しずつ身体を動かすことから始めてみて、それに伴い、エネルギー消費量を超えることなくタンパク質の量を補給するために、食品の組み合わせや調理方法でエネルギー摂取量を調整することが重要であることがわかります。
例えば、体重が70㎏でタンパク質摂取量を1.2g/kgとした場合、1日に必要なタンパク質量は84gで、3食にわけると1食あたり28gとなります。食品に含まれているタンパク質量を表1にまとめました。
実際にこれらを使用して朝食と昼食の献立を立ててみました。
朝食は、ご飯200g、味噌汁(豆腐70g)、納豆1パック、生卵1個、牛乳1杯でタンパク質を31g摂取できます。
お昼はご飯200g、豚肉の生姜焼き(豚もも肉80g)、たこときゅうりの酢物でタンパク質を29g摂取できます。
このように1つの食品に偏らず、様々な食品を選ぶことがポイントです。
また調理方法の違いによって以下のようにエネルギー量が異なります(表2)。
そのため、食べる時間を考慮して、調理方法を選択することもエネルギー摂取量を調整する手段の1つです。加えて朝食から夕食まで1日の食べる時間帯と量を見直すことも、検討してはいかがでしょうか。
テレワークなどによる運動不足が続く場合、筋タンパク質の筋肉量を維持するためにタンパク質を十分にとる必要があります。その上、エネルギー消費量に対して、エネルギー摂取量が上回らないように調整することが重要となってきます。
食品の選択や調理方法を考慮することと、1日の食べる時間帯と座っている時間を見直し、健康維持のための対策を練っていきましょう。
参考文献
1)
座位行動/e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-21-08.html
(参照日:2022年2月21日)
2)
(文責)
吉本 寛那