タンパク質は、動物性と植物性の2種類に分類できることは、周知の事実かと思います。では、動物性タンパク質と植物性タンパク質の違いはご存知でしょうか?大きな違いとしては、必須アミノ酸のバランスや体内の吸収率があります。動物性タンパク質の多くは、必須アミノ酸9種類を全て含んでいますが、植物性タンパク質は一部不足している必須アミノ酸があります。また、体内での吸収率は、動物性タンパク質が97%に対して、植物性タンパク質は84%です1)。
アスリートサポートをする中で、必須アミノ酸のバランスに加えて、筋タンパク質合成(MPS)への影響やリカバリーという観点から、動物性タンパク質を優先的に摂取している場合が多いように感じます。
一方で、アスリートが減量する際や試合前の食事、一般の方でも脂質を抑えた減量をする時などには、高タンパク質かつ低脂質の食事を選択することが多いかと思います。そのようなシーンでは、動物性タンパク質よりも植物性タンパク質の方が低脂質の食材が多い観点から、重宝するかもしれません。
今回は、そのようなことも踏まえて、主にスポーツ領域における植物性タンパク質の可能性に関するKerksick,C.M.,et al(2021)のレビュー論文をご紹介します。
レビューの目的は、運動(トレーニング)の適応と回復に対するさまざまな植物タンパク質の潜在的な影響を調べた現在の文献をレビューすることでした。
まず、短期的研究と長期的研究に分けてレビューされており、それぞれのカテゴリーから一部の文献を抜粋して表にしました。
(文献を基に文責者作表)
短期的研究については、複数の報告をあわせて考えると、安静時と運動後の双方のMPS刺激に関しては大豆摂取に比較し動物性タンパク質(ミルク、ホエイ、カゼイン)の優位性が認められています。
次に、長期的研究については、複数の研究から植物性タンパク質は体組成(除脂肪体重)や筋力に対して動物性タンパク質と同程度の影響を及ぼすことが示唆されています。レビューの中でも最も長期的な期間(9か月)研究が行われた文献では、トレーニング後にホエイプロテインを摂取した群は、大豆プロテイン摂取群と比較して除脂肪体重の増加が大きく、有意差がみられたと報告されています。
そして、植物性タンパク質のリカバリーへの影響についても検討されていました。
(文献を基に文責者作表)
リカバリーにおける植物性タンパク質と動物性タンパク質の可能性に関しては、さらなる研究が必要とされています。
現状として、植物性タンパク質とスポーツ(アスリート)に関する研究は増えていますが、タンパク質摂取後のMPSの速度やリカバリーへの影響において、複数の報告をあわせて考えると、動物性タンパク質の優位性が高いと考えられます。
(文献)
この論文から、植物性タンパク質でもMPSに重要なロイシンを摂取することは可能であり、動物性タンパク質と同様に、筋力などに影響を及ぼすということがわかります。
世界的に植物性食品の摂取量が増加していることや健康への影響(低脂質である点から体重への影響や、ビタミンやミネラルが豊富である点から栄養バランスが整う等)、SDGsの達成を考慮して今後も関心が高まることが予想されます。
*サポート現場での活用
私が選手の栄養サポートを行う際には、選手の食事内容を確認し、各選手の目的や目標を考慮しながら、図の例のように選手にあわせてアドバイスを変えています。
動物性タンパク質が多い傾向にある場合は、植物性のソイプロテインなどをプラスするようアドバイスしたりもします。また、1日に複数回プロテインを摂取する選手の場合は、トレーニング後などはMPSへの影響を考慮してホエイを選び、朝食時にはソイを選び、就寝前にはカゼインを選ぶなどのアドバイスもすることがあります。
*まとめ
タンパク質は、動物性と植物性の2種類に分類されますが、それぞれにメリットがあります。食事とサプリメントの摂取を合わせて考えて、バランスよく摂取できるように工夫するとよいのではないでしょうか。植物性タンパク質は、動物性タンパク質と比較して低脂質な食材が多いことや、大豆製品には成長ホルモンに影響を与えると考えられているアルギニンが豊富という点もメリットと考えられます。ソイプロテイン(植物性タンパク質)と聞くと、女性向けのイメージや健康維持を目的とする人が飲むイメージがある方もいるかもしれませんが、スポーツ領域においても活用できるため、タイミングや内容に合わせて使い分けてみてください。
(文責)
山上はるか