2021年に入って新型コロナウイルス感染症の拡大がさらに長く続いています。そのことから医療現場が逼迫し、全国では医療従事者をはじめ、病院の警備など、夜勤勤務の人数が増えていることも考えられます。新型コロナウイルス感染症の治療の最前線で毎日尽力されている医療従事者の方をはじめ、病院で働かれている皆様に心より感謝申し上げます。
そのなかで、政府は、デジタル社会成形のために2021年9月1日から「デジタル庁」を発足しました。これにより、セキュリティーやアプリの監視業務など24時間体制でシステムを管理する事業も増えてくると予想されます。また、これまで夜勤経験のある就業者を対象とした研究から、夜勤業務と健康問題は関係が深いことがいくつか報告されています。例えば、睡眠をとる時間がずれることによる影響¹⁾、長期の睡眠制限と概日リズムの乱れが同時に起こることによるグルコースの代謝不良と、肥満や糖尿病のリスク²⁾などです。これらの報告のように健康状態を悪化させないための対策の1つに、血糖値のコントロールをする方法があります。
そこで今回は、夜勤の仕事をする40代男性で過体重の人を対象に、夜間に高タンパク食を摂取した研究について言及したいと思います。
対象者は、二交代制勤務で働く男性(年齢:40.9±8.9歳、BMI:29.1±5.3㎏/m²)14人です。方法は、無作為化クロスオーバー試験を使用し、夜勤(実験日)の前日に睡眠をとりました。被験者は6日間のウォッシュアウト期間※1を実施し、実験日の食事内容は、夜食のみ1日目と栄養比率の異なる食事をとります(高たんぱく質、低炭水化物:HP-MCHOもしくは低タンパク質、高炭水化物:LP-HCHO)。毛細管血のグルコース濃度※2測定は、夜食の食事摂取直前と食後30分ごとに4回測定し、血糖値※3は、勤務終了後の朝食をとる直前と食後30分ごとに4回測定しました。
結果、夜勤中の食事後に測定された毛細管血のグルコース濃度は、HP-MCHOはLP-HCHOより低い値を示しました(図1)。さらにグルコース濃度の値は、LP-HCHOはHP-MCHOより高くなりました。
夜勤後の朝食後の血糖値(図2)に両方の有意な差は認められませんでした。
結論、タンパク質の比率が高く、炭水化物の比率が低い食事は、夜食後の高血糖値状態から早く低下させますが、夜勤終了時の朝食後の血糖値に影響を与えませんでした。
※1 ウォッシュアウト期間:クロスオーバー試験を行う上で、1回目の実験の影響を取り除くために一定の期間を空けること。
※2 毛細管血のグルコース濃度:毛細管血に含まれているブドウ糖を測定する方法で、主に指先から採血する。
※3 血糖値:静脈血に含まれているブドウ糖を測定する方法で主に腕から採血する。
(論文)
以上のことから、夜間に食事をとる場合は、食後の血糖値のコントロールをする手段の一つに、タンパク質をとることが重要であることがわかりました。しかし、夜勤後の朝食には影響を与えないため、毎食、栄養バランスに考慮した食事が重要であると考えられます。
では、ご紹介したようなタンパク質の割合が高く、炭水化物の割合が低い食事を実現するためには、どうしたらよいのでしょうか。
夜間に食事をとる場合は、飲食店は閉店しているため、食品を入手するお店や場所が限られてきます。そのため、食品を選ぶ際は、手軽に食べられるものや陳列されている食品のみに限られます。その結果、栄養バランスを崩してしまいがちであると考えられます。
そこで読書のみなさまにコンビニで販売している商品の組み合わせと選び方のポイントをお伝えしていきます。
はじめに夜勤中の食事は、1日に食事をとる回数のうちの1回分のため、夜食に必要なエネルギー必要量は、1日の推定エネルギー必要量の30~35%となります。算出方法は、表1からご自身の「性別」「年齢」「身体活動レベル」を当てはめて考えてみてください。
次に商品を選ぶポイントを図のように6点まとめてみました。
コンビニには豊富な品揃えがされているため、迷うことがあると思います。そこで、ご飯類や麺類などの主食や汁物、お惣菜を選ぶときは、肉や魚、大豆などのタンパク質が含まれているものを選びましょう。
このように栄養バランスの良い食事は、身近で手軽に購入できるものでも実現が可能です。タンパク質を食品から多くとる場合、脂質の量を過剰に摂取してしまう可能性もあるため、栄養成分表示の脂質量を確認し、15gを上限としたものを選択することがポイントです。例えば、サラダチキンやギリシャ・ヨーグルトなどは、脂質の量が少ないためオススメです。
今回の研究の対象者は40歳代の男性で過体重の方でしたが、対象者がやせの場合や、女性の場合でも同じ結果となるのか興味深いところです。
働き方が多様化し、様々な職種が増えていくことで、新たな健康問題も浮かんでくることと思います。社会変化を把握して、栄養面から皆様の心と身体の健康に寄与できるように、これからも情報を発信していきます。
参考文献
(文責)
吉本 寛那