研究成果 Eルチン

1.Eルチン(酵素処理ルチン)とは

Eルチンは、クェルセチンにグルコースを付加して水溶性を向上させ、吸収を改善した誘導体です(構造図参照)。クェルセチンはポリフェノールの一種でフラボノイド類に分類されており、リンゴ、タマネギ、ブドウ、ブロッコリーなどに含まれ、さらにこのクェルセチンにβ-ルチノースが結合した形のルチンは、ソバの実、アスパラガス、エンジュの花、柑橘類の果物や果皮などに含まれています。これらクェルセチンやルチンは、抗酸化機能や筋肉、運動に対して有用な機能性が多く報告されていますが、いずれも消化管から体内への吸収効率が良くありません。
一方、クェルセチン誘導体であるEルチンは、水溶性が高く、吸収効率が劇的に向上しており、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)はクェルセチンの17倍、ルチンの43倍以上になります。さらにEルチンは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)より、安全な食品としてGRAS(Generally Recognized As Safe)の認証を受け、日本でも食品添加物として認められています。
なお、森永製菓のEルチンは、マメ科の植物であるエンジュ(写真)由来のルチンを酵素処理したものを使用しており、そば由来原料は使用していません。

クェルセチン・ルチン・Eルチンの構造式

エンジュの花

2.Eルチンの筋量増加作用

筑波大学との共同研究
アメリカンフットボール部に所属する男子大学生39名を対象に、Eルチンを42?含むホエイプロテインを週に6回4カ月間摂取してもらい、体重および体組成、酸化ストレス度測定(BAP/d-ROMs比)を測定しました。
激しい運動を行うために、しっかり食事を摂っていても体重が減少しがちなシーズン中のアメリカンフットボール選手において、Eルチンを含むプロテイン摂取が体重や除脂肪体重(筋肉量)を維持・増進することが出来ないかを検証しました。
その結果、Eルチン群は、Eルチン不含ホエイタンパクを摂取したプラセボ群に比べ、下肢における筋肉重量及び除脂肪重量が有意に増加し、さらに血中の潜在的抗酸化力が上昇しました。筋肉量においてEルチン群は、摂取前後の変化量で有意に多く増加しました。
以上のことから、Eルチンをプロテインと同時に摂取することで、酸化ストレスを低減し、筋肉量を増加させることが示されました。

 Eルチン 4ヵ月間摂取後における、下肢・除脂肪重量、下肢・筋肉重量、酸化ストレス度(BAP/d-ROMs比)

O. Naomi et. al., J. Int. Soc. of Sports Nutr. 45, 16 (2019)

3.Eルチンのレジスタンス運動後のホルモン分泌や筋機能回復に及ぼす効果

立命館大(研究当時;早稲田大)との共同研究
健康な成人男性 9名を対象に、Eルチンを含むサプリメントを試験前7日間1日2回及び試験当日の筋肉トレーニング前に、さらにEルチンを含むホエイプロテインを筋肉トレーニング(レジスタンス運動)後に摂取してもらい、経時的にインスリン濃度、遊離テストステロン濃度を測定しました。
その結果、Eルチン群は、Eルチン不含サプリメント及びEルチン不含ホエイタンパクを摂取したプラセボ群に比べ、血清中インスリン濃度、フリーテストステロン濃度、レジスタンス運動後40分間のAUC(濃度曲線下面積)が有意に増加しました。一方、運動後における最大筋力回復度合いについては、Eルチン群はプラセボ群に比べ効果に差は認められませんでした。
以上のことから、Eルチンをプロテインと同時に摂取することで、レジスタンス運動に伴う同化ホルモン(インスリン、フリーテストステロン)の分泌応答が増大することが分かりました。

血中インスリン・遊離テストステロン濃度の経時変化、及び、運動後40分間の曲線下面積(AUC)

後藤一成ら.第19回 日本運動生理学会 2011

4.Eルチンの筋肉量増加に及ぼす影響

森永製菓のトレーニングラボを利用しているアスリート17名を対象に、Eルチン配合プロテインを約1か月間摂取してもらい、体重、体脂肪率の測定およびアンケートを実施しました。
その結果、Eルチンを摂取することで、体重においては有意な差はみられませんでしたが、除脂肪体重は有意に増加しました。また、アンケート結果から、多くのアスリートがEルチンの効果を体感していることが分かりました。

図 6  Eルチン配合プロテイン・飲用後アンケート結果

Eルチン配合プロテイン飲用前後における、体重・除脂肪体重・体脂肪率の変化

小原亜希子ら, フードスタイル21 15(9), 48 (2011)

5.Eルチンの運動負荷による筋損傷抑制機能と筋肉量維持増進機能

運動中に発生する活性酸素は筋肉細胞や組織を傷害する恐れがありますが、抗酸化活性の高いEルチンは、活性酸素種の発生を抑制したり、消去したりすることで細胞や組織を守り、筋肉の正常な正常・育成を保護するものと考えられます。そこで、Eルチンの抗酸化能による筋肉に対する効果について、in vivoレベルで検証しました。

BALB/c雄性マウスを、通常食、Eルチン0.2%配合食の2群に分け、週に1回10週間、遊泳による運動負荷(13L/minで限界時間まで遊泳)をかけました。
その結果、Eルチン群では、Eルチン不含飼料のコントロール群と比べ、腓腹筋重量が有意に増加しました。なお、体重には両群で有意な変化が見られませんでした。さらに、Eルチン群は、コントロール群に比べ、血中の酸化ストレスマーカーが有意に抑制され、潜在的抗酸化力が亢進しました。なお、BAP値においては、両群で有意な変動が認められませんでした。

以上のことから、運動時のEルチンを摂取は、運動時の酸化ストレスを抑制し、筋重量増加に資することが示唆されました。

マウスにおける腓腹筋、d-ROMs値、BAP/d-ROMs比

伊藤良一ら.日本運動生理学雑誌(査読中)

6.Eルチンの筋肉肥大に及ぼす効果

筑波大学との共同研究
Eルチンの摂取による動物の筋肉肥大に及ぼす効果について、2種のin vivo試験を実施し検証しました。

in vivo 1>ICR雄性マウスを、通常食あるいは0.03%Eルチン配合食、さらにそれぞれに筋肉運動負荷処置あるいは偽処置を施した計4群に分け、3週間飼育した後、足底筋の筋線維横断面積を測定しました。
その結果、Eルチン群はEルチン不含飼料摂取のコントロール群に比べて、足底筋の筋線維横断面積が有意に大きくなりました。また、Eルチン群では、筋肉負荷をかけることで筋線維横断面積がより大きくなりました。

in vivo 2>ICR雄性マウスを、標準飼料中たんぱく質をホエイプロテインに置換した試験食、これに0.003%あるいは0.03%Eルチンを配合した0.003%Eルチン食、0.03%Eルチン食の3群に分け、筋肉運動負荷処置を施し3週間飼育した後、足底筋の筋線維横断面積を測定しました。
その結果、Eルチン群は、Eルチン不含飼料摂取のコントロール群に比べ、Eルチン濃度依存的に筋線維横断面積が増加しました。

以上のことから、Eルチンを摂取すればと、トレーニングしなくても筋肉を肥大させる機能がある可能性が示されました。さらに、Eルチンは用量依存的に筋肉を肥大する機能が増強されること、Eルチンをホエイプロテインと同時に摂取することでも増強されることが示されました。

Eルチン摂取による筋線維横断面積の変化

A. Kohara et. al., J. Int. Soc. Sports Nutr. 32, 14 (2017)

7.Eルチンのタンパク吸収促進作用

筑波大学との共同研究
健康な男子大学生10名を対象に、Eルチンとホエイプロテインを同時に摂取してもらい、タンパク質(アミノ酸)の消化・吸収に及ぼす影響を検証しました。
その結果、Eルチン・ホエイプロテイン群は、ホエイプロテイン群と比べ、摂取60分後における血中の総タンパク構成アミノ酸(TAA)、必須アミノ酸(EAA)、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の濃度が有意に上昇または上昇する傾向が見られました。個々のアミノ酸では、システイン、チロシン、ヒスチジン、メチオニンにおいて、摂取45分後または60分後における血中濃度が、Eルチン・ホエイプロテイン群で有意に上昇または上昇する傾向が見られました。なお、Eルチン・ホエイプロテイン群で変動しないアミノ酸もありましたが、血中濃度が低下したアミノ酸はなく、Eルチンによる吸収抑制は認められませんでした。
以上のことから、Eルチンをプロテインと同時に摂取することで、血中アミノ酸濃度がアミノ酸全体として高まりました。つまり、Eルチンはタンパク質の吸収を促進する機能を有する可能性が考えられました。

血中総タンパク構成アミノ酸(TAA)・システイン(Cys)濃度の経時変化

麻見直美ら, 薬理と治療, 48(1), 51 (2020)

ページのトップへ