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ココアの抗インフルエンザウイルス効果

ココアが寒い冬に“ホッ”として体が温まる飲み物として親しまれている理由をごぞんじですか?
ココアには各種機能性成分が含まれており、多くの機能性が明らかにされていますが、「冷え性改善効果」が知られています。
しかしそれだけではないんです。
その寒い冬に流行し、人々の生活に大きな影響を与えるインフルエンザ(流 行性感冒)に対するココアの効果についてはいままで報告が少なく、余り知られていませんでした。
そこで、森永ではインフルエンザに対するココアの感染防御効果を明らかにし、そのメカニズムや効果成分についても検証しました。
ここでは、インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスに対するココアの感染抑制効果を試験管内およびヒト臨床試験において説明し、そのメカニズムや効果成分についても考察しました。

第1章:ココア熱水抽出液のインフルエンザウイルスに対する感染抑制効果について

1. ココア熱水抽出液のインフルエンザウイルス感染抑制効果

【試験管内での抗ウイルス活性】
インフルエンザウイルスの種類  IC50(%)
・A型インフルエンザウイルス
A/New Caledonia/20/99(H1N1) 1.8
A/Wyoming/3/03 (H3N2) 0.2
・B型インフルエンザウイルス
B/Shanghai/361/02 1.0
・鳥インフルエンザウイルス
A/Turkey/Ontario/7732/66(H5N9) 0.04
A/Kyoto/04(H5N1) 0.004

※ : インフルエンザウイルスの感染を50%抑制するココア熱水抽出液の濃度

まず、培養細胞を用いてココア熱水抽出液のインフルエンザウイルス感染抑制効果を検討しました。
今回の研究では、インフルエンザウイルスの代表として季節性インフルエンザウイルスA型2種類〔A/New Caledonia/20/99(H1N1)およびA/Wyoming/3/03 (H3N2) 〕とB型1種類(B/Shanghai/361/02 )および鳥インフルエンザウイルス2種類〔A/Turkey/Ontario/7732/66(H5N9)およびA/Kyoto/04(H5N1)〕を用いて実験を行いました。

その結果、ココア熱水抽出液は、5種類全てのインフルエンザウイルスに対して感染抑制効果の程度にそれぞれ差が認められるものの、濃度が高くなるとともに強い感染抑制効果を有することが分かりました。なお、今回の実験濃度では培養細胞に対するココア熱水抽出液の細胞毒性は認められませんでした。
ちなみに、通常飲用しているココアの濃度は4%前後であり、今回の実験から通常の飲用濃度よりかなり低い濃度で感染抑制効果を発揮することが示されました。

2. ココア熱水抽出液の感染抑制メカニズムの検討

ココア熱水抽出液の添加時間

続いて、ココア熱水抽出液のインフルエンザウイルス〔A/Wyoming/3/03 (H3N2)を使用〕に対する感染抑制メカニズムを検討しました。

インフルエンザウイルスが細胞に感染する際には、まず細胞表面にウイルスが吸着する必要があります。そこで、ココア熱水抽出液の感染抑制メカニズムを明らかにするために、ココア熱水抽出液をウイルス吸着前(添加時間が感染30分前から感染時まで)、吸着時(添加時間が感染時から1時間後まで)、吸着後(添加時間が感染1時間後から16時間後まで)にのみ細胞培養液中にそれぞれ存在させ、感染細胞数の減少を調べました。

その結果、ココア熱水抽出液をウイルスの吸着時に存在させた時のみ感染が抑制され(感染抑制率100%)、吸着前、吸着後の場合は抑制率が低く、効果を認めないことが明らかとなりました。以上の結果から、ココア熱水抽出液はインフルエンザウイルスが細胞に吸着することを阻害することによりウイルス感染を抑制している可能性の高いことが判明しました。

3. ココア熱水抽出液分画成分における感染抑制効果−1

試験管内の実験で、ココア熱水抽出液が強いインフルエンザウイルス感染抑制効果を有することが明らかとなったので、次に、インフルエンザウイルスの感染抑制効果を有するココア成分の同定を試みました。ココア熱水抽出液を出発物質としてココア熱水抽出液の各種分画成分を作成し、インフルエンザウイルスに対する試験管内感染抑制効果を検討しました。

ココア熱水抽出液をPVPP処理(ポリビニルポリピロリドン処理:ポリフェノールを吸着・除去)を行い、その非吸着部分に感染抑制作用を認めました。また、PVPP非吸着部分をさらにエタノール処理を行ったところ、その沈殿部分に感染抑制効果のあることが分かりました。

4. ココア熱水抽出液分画成分における感染抑制効果−2

前図の分画方法と異なり、ココア熱水抽出液をPVPP処理によるポリフェノール除去を行わずに、直接エタノール処理を行ったところ、その上清および沈殿両方に感染抑制作用を認めました。

この結果と、前図のPVPP処理・非吸着部分のエタノール処理でその上清部分に感染抑制作用が認められなかったことを比較することにより、ココア熱水抽出液中には少なくとも2種類の感染抑制成分の存在が示唆されました。

5. ココアに含まれる感染抑制成分の精製スキームと分析結果

PVPPに吸着される画分(エタノール処理上清画分とほぼ同等)に含まれる感染抑制効果成分はポリフェノールが主な成分と考えられ、PVPPに吸着しない成分をさらにエタノール処理した沈殿画分には非ポリフェノール性の成分が主に含まれていると考えられます。これらの感染抑制成分の特徴を明らかにするために、この図に示したような各種精製手段を用いて分離精製を行い、それらの感染抑制効果を試験管内試験で確かめました。

● ポリフェノール性の感染抑制成分の分析結果

  • 66.7%エタノールの上清画分に含まれる活性成分は、中性ポリフェノール画分に溶出されました。
  • ODS-HPLCでは重合ポリフェノールに相当する分画へ主たる成分が溶出されました。
  • 純水を展開溶媒としたSephadex G-50によるゲルろ過クロマトグラフィでは最大分画分子量(30,000)付近に溶出されました。
  • Shodex sugar KS-Type によるゲルろ過クロマトグラフィでは50,000以上の高分子である可能性が推定されました。
  • Diol-HPLCによる分画では、重合度10以上のポリフェノールを含む重合体である可能性が推定されました。
  • (-)-Epicatechinを標準物質とした Folin-Ciocalteu法によるポリフェノール分析、(+)-Glucoseを標準物質とした Phenol-Sulfuric Acid 法による全糖分析およびBSAを標準物質とした Bradford 法によるタンパク質分析により、ポリフェノール、糖およびタンパク質の複合体の可能性がある物質と推定されました。

● 非ポリフェノール性の感染抑制成分の分析結果まとめ

  • Sephadex G-50ゲルろ過クロマトグラフィーにおける溶出位置から、活性成分の分子量は5,000から10,000の範囲であることが推定されました。
  • この成分は、ODS-HPLCの結果より極性の高い非ポリフェノール性成分と重合度が高いと推定されるポリフェノール性成分の共存が確認されました。

第2章:ヒトでのココアの有効性について

対象者

新型インフルエンザに罹患歴がない健常人
(自己申告)

被験者数

ココア摂取群:63人
対照群:60名

年齢、性別および下記検査項目について、
有意差がないように2群に群分けした。

平均年齢 ココア摂取群:39.2才 ±8.6
対照群:39.7才 ±10.2
性別 ココア摂取群:
男性73%、女性27%
対照群:
男性72%、女性28%
被験飲料 森永製菓株式会社製「カカオ2倍」
ココア飲用量:1日1杯を午前中に飲用
飲用期間:3週間
検査項目 新型インフルエンザウイルス中和抗体価
NK活性

続いて、臨床試験を行いヒトでのココアの有効性を検討しました。

この臨床試験では新型インフルエンザウイルスワクチンを接種した際のココア飲用による免疫増強効果の有無を測定しました。もし免疫効果が増強されれば、インフルエンザに感染しにくくなることが期待できます。
免疫は大きく分けて自然免疫と獲得免疫に分類されますので、検査項目を、獲得免疫として(1)新型インフルエンザウイルス中和抗体価、自然免疫として(2)NK活性としました。被験者は新型インフルエンザに罹患歴がない健常人(123名)とし、年齢、性別および各検査項目で有意な差がないように2群に群分けしました。ココア摂取群には「カカオ2倍(森永製菓株式会社製)」を毎日1杯、お湯に溶いて飲むようにお願いしました。

1. 臨床試験スケジュール

●用語解説
免疫とは?…外敵(ウイルス、細菌等)やガンから体を守る防御システム。大きく分類して、自然免疫と獲得免疫がある。

自然免疫:
全ての人に生まれながらにして備わっている免疫で、その一つがNK活性。
獲得免疫:
ワクチンを摂取した時、ウイルスや細菌に感染した時に獲得する免疫で、その一つが中和抗体。
NK活性:
自然免疫の一つで、ウイルス感染細胞やガン細胞を殺す働きをする。
中和抗体:
獲得免疫の一つで、ウイルスの感染を抑制する働きをする。

臨床試験のスケジュールを示します。ココア摂取群は、ワクチンを接種する1週間前からココアを飲み始め、ワクチン接種後2週間、合わせて3週間ココアを毎日1杯飲用しました。それ以外の生活は日ごろの生活と変わらない生活をお願いしました。また、対照群はその間ココアやチョコレートを摂取しない以外は日ごろの生活と変わらない生活をお願いしました。

2. 結果1─新型インフルエンザウイルスに対する中和抗体価

新型インフルエンザウイルスに対する中和抗体価は、ココア摂取群及び対照群ともに有意に中和抗体価が上昇しました。
ただし、ココア摂取群と対照群の中和抗体価の上昇程度に有意な差はありませんでした。このことは、新型インフルエンザウイルスワクチンを接種した時に、両群ともに同程度インフルエンザ予防効果が期待できることを示しています。

3. 結果2─ココア摂取によるNK活性の上昇促進効果

NK(ナチュラルキラー)活性は、ココア摂取群及び対照群ともに有意に上昇しました。また、ココア摂取群は対照群に比較し、NK活性の上昇程度が有意に高いことが分かりました。このことは、ココア摂取群の方がインフルエンザに対してより高い予防効果が期待できることを示しています。

4. まとめ

1)抵抗インフルエンザウイルス効果

試験管内での試験 A型、B型の季節性インフルエンザウイルスおよび鳥インフルエンザウイルスに対し、通常飲用濃度以下のココア熱水抽出液が高いインフルエンザウイルス感染抑制効果を示した。
ヒト臨床試験 新型インフルエンザ罹患歴がない被験者を対象に、新型インフルエンザウイルスワクチン接種時の免疫応答を検討した。その結果、中和抗体価は両群ともに有意に上昇し、ワクチンの効果が両群ほぼ同等であることが明らかになった。NK活性については、ココア摂取群の方が対照群に比較してより高く上昇することが明らかになった。

これらの結果を総合すると、ココアを飲むことによって、インフルエンザウイルス感染に対してより高い予防効果が期待できると考えられます。

2)ココアに含まれる効果を有する成分の特徴

ポリフェノール性 分子量5万以上で糖やタンパク質と複合体を形成している中性ポリフェノールであることが示唆された。
非ポリフェノール性 分子量は5,000から10,000の範囲で、極性の高い非ポリフェノール性成分と重合度が高いと推定されるポリフェノール性成分が共存していた。

ココアは寒い冬に特に好んで飲まれる嗜好飲料ではありますが、同時に、寒い冬に流行するインフルエンザウイルスに対しても上記のような感染抑制効果が示され、機能性飲料としての有用性も期待されます。

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