ココアはいつからココア? 歴史編
(ココア&チョコレートの歴史)

1. チョコレートの起源

ココアの原料であるカカオ豆。原産地はブラジルのアマゾン川流域、またはベネズエラのオリノコ川流域と言われています。最初、人々は他の果物と同様にカカオの果実を食べていたと考えられます。その時食べていたのは、果肉やパルプの部分で、タネ、つまりカカオ豆は捨てていたに違いありません。
ところがある時、偶然にも火が加わることによってカカオ豆がすばらしい香りと味を与えてくれることを発見します。その後カカオ豆を焼いてすりつぶし飲用するようになりました。

2. ココアのルーツは王侯貴族の“高級ドリンク”

14世紀に成立したアステカ王国では、カカオ豆は「ショコラトル」という名称のドリンクとして、王侯貴族の間で普及していました。収穫したカカオ豆を積み重ねて発酵させた後、乾燥・焙煎させます。焙煎されたカカオ豆は石の上ですり潰され、ペースト状にします。
このカカオペーストにバニラやコショウ、薬草などが加えられ、ときにはトウモロコシの粉が加えられることもありました。そのままでは苦味が強いのでトウモロコシを加えて、マイルドな飲み口にしていたようです。 加工されたカカオ豆のペーストは大きな葉の上にのせられ冷やして固められます。後は飲むときに必要な分だけ削ったり砕いたりしてお湯か水に溶かし、飲料として楽しまれました。

3. 16世紀にアステカからスペインへ

中南米に広まったカカオ豆に初めて出会ったヨーロッパ人はアメリカ大陸の発見で有名なコロンブス。1502年にホンジェラス付近を航海中にマヤ人と交易のため接触しました。マヤ人の船には交易品としてカカオ豆も積まれていて、それは貴重な飲料であると同時に、貨幣としても機能しているものでした。しかし、コロンブスはカカオ豆に興味を示しませんでした。

代わって伝道師の役目を果たしたコルテスはスペインの貴族。大航海時代といわれた発見ブームにわくスペインで、コルテスも発見で名を挙げたいと思っていました。 現在のメキシコにあたるアステカの黄金などの富を狙ったコルテスは1519年アステカの王モンテスマに会うことができました。
この時、モンテスマ王が飲んでいたのがショコラトル(苦い水)、ショコラトルはよく泡立てられ、バニラなどのスパイスで香りをつけた強壮飲料でした。これがコルテスのチョコレート発見です。

その後、わずか3年足らずでアステカを滅ぼしたコルテスがカカオをスペインに持ち帰ったのは1528年、日本の室町時代末期にあたる頃です。故国に帰ったコルテスは早速スペイン宮廷へ飲み物に加工して紹介しましたが、苦味の強い飲料はそのままでは受け入れられませんでした。
しかし、同時に新大陸からもたらされたバニラと砂糖を加えると、味が程よく整い、その後宮廷と上流階級の間で大流行することになったのです。

4. 植民地のプランテーションでカカオ豆は世界各地へ

コルテスは、カカオ豆を持ち帰ると同時に、現地でカカオ豆100粒と奴隷1人が交換されるなど、非常に高価に取引されている光景を目にし、本国スペインでカカオプランテーションの設立を進言します。スペインではこの助言に基づいて中南米や南米、のちにカリブ諸島、フィリピンなど各地にプランテーションをつくり、大規模な生産体制を確立しました。
また、周辺のオランダやフランス、イギリスなども次々に植民地でのカカオ栽培に乗り出し、カカオ豆はヨーロッパ諸国が統治する植民地でのプランテーションというかたちで、中南米を中心に、西アフリカ、東南アジアなど世界各地に広がりました。

5. カカオ産業革命!ココアの誕生

アステカからスペイン、そしてヨーロッパ全土へ。スペインで砂糖を使用したことで甘いドリンクに変身した「ショコラトル」はその後、フランスでは「ショコラ」に、イギリスでは「チョコレータ」などと名を変え広まると同時に、様々なアレンジが加えられました。
スペインやイタリアでは砂糖のほかにシナモンや種実類を混ぜ、ドイツやイギリスではオートミールやドングリ、大麦粉を入れるなどアイディアと工夫によって様々な方向性に進化を遂げて行ったのです。

そして1828年、このカカオの飲料に革命的な出来事が起こりました。オランダ人、ヴァン・ホーテンが、カカオペーストから脂肪分を分離することに成功したのです。従来、カカオペーストには55%の脂肪分が含まれていて、水や湯に溶かすと表面に油が浮いて飲みづらく、またくどくて胃にもたれるなど欠点がありました。
ヴァン・ホーテンはカカオペーストをプレスして3分の2の油を取り出し、脂肪分の少ないココアケーキを発明したのです。ケーキは細かく砕くなど加工され、ココアパウダーとして従来のカカオペーストとは全く別のものに生まれ変わりました。

その後特許登録されたココアは、1866年、イギリスのキャドバリー社が「ココアエッセンス」という名称で、続いて同じくイギリスのフライ社が「エキストラクト」という名称で、ココアの製造販売を開始しました。

6. 副産物から「食べるチョコレート」が誕生

また、ココアの誕生は思わぬ新たな発明にもつながりました。カカオペーストに砂糖を混合した飲料用の固形物は、そのまま食べるとあまりに苦く、お湯に溶かして飲むしか方法がありませんでした。しかし、これに絞り出された油(脂肪分=ココアバター)を加えてみると、苦味は少なくなり、より多くの砂糖を溶かし込むことも可能になりました。さらに冷やすとキレイに型抜きすることも容易。
つまり、固形のまま食べることができる現在のチョコレートがここに誕生したのです。 その後はココアは「飲むチョコレート」として、固形チョコレートは「食べるチョコレート」として、それぞれの道を歩んでいくことになるのです。