カカオは日本で育つのか? 栽培編

カカオの樹:実を結ぶのは100分の1の確率!

カカオの樹は植物学的にいうと、アオギリ科に属する樹木です。カカオ豆はその種子で、“豆”とはいうものの、豆科の植物ではありません。カカオの樹は学名を「テオブロマ・カカオ」といい、「テオブロマ」はギリシャ語で「神様の食べ物」という意味です。
カカオの樹は高さ7~10m、幹の太さは大きいもので30~40cmに生長します。

最も特徴的なのが花で、見事なくらいに無数の白い花を幹、枝の区別なく一年中咲かせていて、その数は1本の樹で年間5000~1万5000個といわれています。ただ、その花のうち実になるのは70~300個程度。ほとんどが実を結ばない花なのです。
収穫できるのは樹を植えてから4年目くらい。最盛期は12~15年目で、50年以上採り続けることができます。

カカオ豆

育成条件:「カカオの母」と呼ばれる樹

カカオの樹は非常に限定された条件のもとでしか発育しません。
平均気温27度以上で、年間を通じて気温の上下幅が狭く、さらに高温多湿という、温度や降水量の面でも限定されますが、それ以上に必要になるのが風除けや日除けのための樹木です。これは、日おおい樹(シェイド・ツリー)と呼ばれ、トリニダードのエリスリナスという樹がそれです。

この樹は成長が早く、カカオの若木を日差しから守ってくれるだけでなく、木の根に窒素を固定するバクテリアが育ちます。カカオの肥料としても有益に作用するのです。このエリスリナスは、トリニダードで“カカオの母“と呼ばれ、カカオプランテーションには切っても切れない存在となっています。

カカオの実:幹にぶら下がるラグビーボール

カカオの実は、カカオ実、またはカカオポッドといわれます。
始めは緑色ですが、やがて黄色味をおび、最後は赤褐色のざらざらした立派なカカオポッドになります。よく熟したものほど色は濃いです。大きさは長さ12cmから25cm、直径は15cmほどです。その形はひと言でいえば、まさにラグビーボール。

これがカカオの樹の幹といわず枝といわず、びっしりとぶら下がるように実ります。カカオ豆は、このカカオポッドの中にあります。豆は白いパルプに覆われていて、カカオポッド1個に20~40粒入っています。カカオ豆は白いパルプごと実からはがされ、発酵・乾燥という過程を経て、ようやくココアやチョコレートの原料となるカカオ豆となるのです。

発酵と乾燥:原料として輸出されるまで

収穫されたカカオポッドから、白いパルプごと取り出されたカカオ豆は、発酵という原料製造の第1段階に入ります。
発酵は床の上に置かれて行なわれたり、発酵槽の中で行なわれます。1粒ずつの豆を包んでいるパルプは4~6日間の発酵により溶けますが、この間豆の温度は50℃までに上昇します。発酵はパルプを取り除くだけでなく、この間にカカオ豆と果汁を反応させる役割もあります。発酵のすんだカカオ豆はいくぶん膨れ、色はチョコレート色になります。

次の段階はカカオ豆の乾燥です。発酵させた豆は約1/3が水分ですが、天日乾燥や機械による人工乾燥により、水分を8%以下まで落とします。乾燥がすむとカカオ豆は茶色に変色し、いかにもココアやチョコレートの原料にふさわしい外見となります。

その後、厳しい検査を合格したカカオ豆が、各地へ輸出されてゆくのです。カカオの樹は高さ7~10m、幹の太さは大きいもので30~40cmに生長します。葉は広くて大きく、卵型で幅10cm、長さ30cmほどです。

品種:種類を確認する

カカオ豆もコーヒー豆と同様に様々な品種が生産されています。味は、カカオの樹の種類、産地、栽培地の気候、カカオ豆の発酵方法などによって異なりますが、大別すると、カカオの樹の種類によってクリオロ種、フォラステロ種の原種2種、そして2種の交配種であるトリニタリオ種の3種類に分けられます。

クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種

クリオロ種

生産量は少なく、カカオ豆全体の10%程度。豆は白っぽく、皮は柔らかい。樹自体はデリケートで生長も遅い。豆の品質は良く、独特の香りを持っているので、フレーバービーンズとして用いられることが多い。苦味も少なく、ブレンド豆としては貴重。
主な産地:ベネズエラ、スリランカ、ジャワ、サモア

フォラステロ種

クリオロ種より歴史は浅いが、現在ではカカオ豆の全生産量の約90%を占めている。1本あたりに収穫量が多く栽培も容易。風味やフレーバーはクリオロ種に劣り、苦味が強いが、癖が少ないため、ブレンドの基本となるベースビーンズとしてココアやチョコレートに使用される。
主な産地:西アフリカ、東南アジア

トリニタリオ種

トリニダード島で交配されたクリオロ種とフォラステロ種の性質を受け継いだ交配種。交配の度合によって、クリオロ種の特徴が強いものや、フォラステロ種よりのものなど、様々な品種が生まれている。栽培は容易で豆は良質。
主な産地:トリニダード、グレナダ、セントルシア、ベネズエラ、ニューギニア、エクアドル

ココアは味覚・フレーバーが異なるカカオ豆数種類をブレンド

世界各地のカカオ豆の生産国では源流の3種をもとに、味覚や香味が良く、病虫害に強く、さらに多くの収穫量が望めて収穫のしやすい品種を研究し、多くの派生種を生産しています。
ココアは通常、1種類のカカオ豆だけでなく、様々な豆をブレンドして作られているのです。

生産地:産地を探る

カカオの樹の生育条件はいろいろな点で非常に限定されています。
平均気温27度以上で、年間を通じて気温の上下幅が狭く、日照時間の平均が1日5時間から7時間。降雨量は年間2,000mm以上の高温多湿。土壌や土質も大切で、ローム層系の粘土質40%以下の水はけの良いところとされています。
カカオ豆はこれらの限定された条件をクリアできる地域、主に赤道を挟んで南北緯20度以内の狭い地域に位置する、西アフリカ、東南アジア、中南米で生産されています。

原産地

エクアドル:フォステロ種の「アリバ」という品種が有名。フレーバービーンズに最適で、高品質、高価格なことで世界的に通名
ベネズエラ:カカオ豆の中でも最高品質といわれるマラカイボ・カカオ(別名ボルセラーナ)の唯一の生産国
ブラジル:近年カカオの生産量は急激に減少。「バヒア」という酸度の高いカカオが代表
コートジボアール(アイボリーコースト):世界最大の生産国。主にベースビーンズになるカカオ豆を栽培
ガーナ:かつては世界一の生産量を誇っていた。主にマイルドなカカオ豆を生産
インドネシア:近年飛躍的に生産量を伸ばしている。アジアでは最大の生産国