「チョコモナカジャンボ」-発売から40年を超えるロングセラー商品。冷菓市場において圧倒的な売り上げであり、また森永製菓の数ある製品の中でも売上ナンバーワンを誇るトップブランド。2013年、そのビッグネームのマーケッターとして、先ごろ研究職から異動してきたばかりの山田に白羽の矢がたった。「異動する前までは研究職としてチョコモナカジャンボの研究開発に取り組んでいました。研究職としてのキャリアアップも考えてはいましたが、色々な経験をしたいと上司や人事にも相談していました。そんな時期にマーケティングへの打診があったので、チャレンジしてみようと。」

研究職として携わっていた商品に関わることができたのは幸運。そういう彼女に不安はなかったのだろうか。「当然ですが、実際やってみると全然イメージと違いました。異動するまでは、商品の研究をするのか、コンセプトを考えたりするのか位の違いくらいに思えていたのですが、とにかく多くの人、そして部署と関わりのある仕事でした。」

山田がいうように、森永製菓のマーケッターの仕事の幅は広い。商品開発、広告宣伝、販売促進、需給面や生産にもその範囲は及ぶ。川上から川下まで一貫してそのブランドに携わる。そのブランドをより成長させるために全体のプランニングを行う。しかもチョコモナカジャンボという大きなブランド。最初から大きな責任とプレッシャーを感じながらの新しい仕事への挑戦だった。

「あまり知られていないことだと思いますが、チョコモナカジャンボは受注生産と言ってもいい製品なんです。」工場での製造から出荷まで5日以内を目指す。この仕組みは業界にとっても異質と言ってもいい。「冷菓は賞味期限がないので、冬に大量に生産して夏にその在庫を売るというのも当たり前。でも、チョコモナカジャンボは在庫を抱えてしまうとモナカが湿気てしまい、最も魅力的な個性が無くなってしまいます。」

チョコモナカジャンボの絶対的な個性はその「パリパリ」としたチョコとモナカの食感。この個性が無くなってしまっては意味がない。その為に考えだされたのがこの仕組みだという。「『鮮度マーケティング』と森永製菓ではよばれています。この取り組みが始まったのは2001年。当時は今と比べて売上が20%位しかなかったそうです。そこで、売上倍増プロジェクトが立ち上がり、「チョコモナカジャンボ」の個性って何か?を徹底的に突き詰めて考えた結果、生まれました。」

この『鮮度マーケティング』に取り組んで以来、「チョコモナカジャンボ」は対前年比で売上を伸張しつづけており、山田がマーケティングに異動して4年。自身もこの前年比売上更新を達成し続けている。「在庫を持たないというのは言うまでもなくとても難しい。もちろん需給の予測を立てて生産を進めますが、その通りにいかないこともあります。その都度営業の方に自分の担当のお客様に謝ってもらったり、製造を急遽増やしてもらったり、無理を承知でお願いをしています。ただ、この『鮮度マーケティング』がブランドの本質だと売上で証明しているので、皆が協力してくれると感じますね。」

発売から40年。ロングセラー商品。大きな変化をさせることが難しい状況にジレンマを覚えることはないのだろうか。「あまり気づかない方もいらっしゃいますが、1年ないし2年ごとに何らかの変化は加えているんです。例えばチョコレートの配合を変えてみたり、アイスを包むチョコレートの膜の塗り方を変えてみたり。ずっと同じまま『守る』のでは、じりじりと落ちていく。」

ずばり、チョコモナカジャンボとはマーケッターにとってどんな商品なのだろうか。「ブランドの性格として、『楽しさ・元気さ・いつでも会える友達』そんなイメージがあると思います。ですので広告としては、そのイメージを表現できるようなクリエイティブや手段を考えています。お客様がチョコモナカジャンボに何を求めているか、その期待にこたえ続けることで、ブランドとして絶対的な信頼が得られると考えています。誰もが1度は食べたことのある製品。その製品に関わるプレッシャーはとても大きいですし、正直、逃げ出したくなることだってあります(笑)。ただ、その責任の大きさに比例して、売上が伸張できたとか、広告の効果がよかったとか、達成感も大きい。だから続けられるのかもしれません。」

最後に、マーケッターに求められるモノ、そして今後についてを聞いた。「マーケッターってイメージとしてアイデアや発想が求められると考えている方も多いかもしれません。ですが、理系出身で研究職から異動してきた私が感じるのは、思った以上にロジカル。開発、広告、販促、流通に対して幅広い視野と、緻密な分析を論理的に組み立てていく能力が求められます。そこは自分の強みにもなっていますし、理系出身の方がどんどん挑戦してもいいフィールドかなと思っています。今後は、チョコモナカジャンボをひとりでも多くの人に食べてもらうこと、そして、そんな機会があればの話ですが、全く違う分野にチャレンジするのも勉強かなと思っています。」