コラーゲンは、皮膚や腱、軟骨などを構成する繊維状のタンパク質で、ヒトの全タンパク質の約30%を占めており、体内の構造タンパク質の中で最も多く存在します1)。
コラーゲンに関して、運動後の筋肉への影響が報告されています2)。アスリートが競技を長く続けていく中で、カラダへの負担の考慮や、カラダの健康維持という観点は、とても重要だと思います。
実際に、サポートしている野球選手においても、投手の投球フォームの改良により今までよりもカラダへの負担が増加する可能性を考慮して、コラーゲンのサプリメントの摂取を提案しているケースがあります。
このような背景から、コラーゲンペプチドサプリメント摂取(Collagen peptide supplementation;以下、COLと表記)と運動を組み合わせた場合の関節機能や筋肉に及ぼす影響に関してまとめられたMishti K et al.(2021)のレビュー論文をご紹介します。
レビューの目的は、関節機能、筋肉および関節損傷の回復、身体組成、筋肉タンパク質合成(MPS)、コラーゲン合成などに及ぼすCOLおよび運動の複合的な影響について4つのテーマで、評価することです。
【1】関節痛と関節損傷からの回復に及ぼす影響
COLは関節痛の軽減、関節機能の改善、関節機能の向上において有益な効果があると報告されています。しかし、効果を実感するには3か月以上かかる可能性を示唆しています。
【2】体組成への影響
コラーゲン補給とレジスタンストレーニングを組み合わせた2つの研究では、除脂肪量2kg増量と体脂肪量の減少がみられました。しかし、除脂肪量の増加は、筋繊維断面積の肥大に変化が見られなかったことから、筋線維タンパク質ではなく、周囲の結合組織に対するCOLの効果によるものと考えられます。
【3】筋肉痛及び運動後の回復に及ぼす影響
激しい運動による筋肉痛と回復に対するCOLの影響を調査した2つの研究では、ベンチプレスのパフォーマンス低下を抑制させ、回復を促し、筋肉痛の症状を軽減したと考えられます。しかし、運動後の筋肉痛は、あくまでもビジュアルアナログスケール(VAS)で軽減することが分かったものの、炎症および骨のコラーゲン合成のマーカーに対するCOLの影響を見いだすことはできませんでした。
【4】コラーゲン合成と筋タンパク質合成に及ぼす影響
5~15g/日のCOLによって、コラーゲン合成の改善の可能性が示唆されています。また、運動60分前の摂取と、間欠的運動を組み合わせて行うことによって組織の修復改善の可能性が考えられます。また、ビタミンCは、コラーゲン合成に不可欠です。
このレビューで照合された研究によると、コラーゲンは、5~15g/日のCOLの摂取が、関節の痛みと機能性改善に影響があるということが明らかとなりました。また、コラーゲン合成は、15g/日のCOL摂取の方が、5g/日よりも効果的でした。そして、コラーゲンの合成を最大化するために、COLは運動前(~60分)に摂取することが望ましいことも示唆されました。
(文献)
日々、トレーニングや練習、試合を繰り返すアスリートにとって、怪我の予防は常に気を配るべきことだと思います。今回ご紹介した文献を読み、改めてコラーゲンの摂取を前向きに捉えて、必要に応じて選手サポートの中で提案していきたいと思いました。
提案の際にはコラーゲンのサプリメント摂取による影響の実感に3か月以上かかる可能性も踏まえて、継続的に伝えたいと考えています。
冒頭にもあるように、野球の投手であれば、投球フォームや登板の長さ、球数などを考慮し、シーズン中のコラーゲン摂取の提案を、引き続きしていきたいと思います。
今回の文献から、アスリートがコラーゲンサプリメントを活用することの有用性が示唆されました。
私たちがアスリートをサポートする上で、サプリメントの活用については、ドーピングの観点からより一層慎重に検討すべき事項と考えていますが、目的に合わせて、適切なサポートを行えるよう、日々更新される情報を収集し、サポートへ活かしたいと思います。
参考文献
1)
コラーゲン/e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
(参照日:2022年5月1日)
2)
(文責)
山上はるか