私は、「コラーゲンペプチド」という言葉を聞くと、女性を対象に肌や髪の再生をサポートする「美容」や、「高齢者の健康増進」を目的にした活用で注目を集めているとイメージします。
また、弊社ホームページ内の健康機能の研究成果のページ(https://www.morinaga.co.jp/company/healthcare/collagen.html)においても、コラーゲンペプチドについての情報や論文を紹介していることもあり¹⁾、今回はコラーゲンペプチドについて着目しました。
コラーゲンペプチドは、コラーゲンを熱などにより変性し、低分子化されて腸で吸収しやすくした成分です。コラーゲンとは、ヒトの皮膚・血管・じん帯・腱・軟骨などの組織を構成する繊維状のタンパク質です。体内組織の30%をタンパク質が占めており、そのうちの40%は皮膚に、20%は骨や軟骨に存在し、残りの40%は血管や内臓など全身の組織にも広く分布しています¹⁾。
アスリートは、コラーゲンを多く含むじん帯や腱などの損傷が原因で引退をよぎなくされる場合もあります。特に女性アスリートは、競技によっても異なりますが、早くて20代前半で引退する選手も見受けられます。一方、2021年7月から8月にかけて東京で開催されたオリンピックを振り返ると、日本最年少の12歳や13歳の女性アスリートが活躍するなど、よりトップアスリートの若年化が進んでいることも感じます。
そこで、女性アスリートが競技を長く続けられるために、コラーゲンペプチドを活用できる可能性があるのではないかと考え、今回は月経のある女性とコラーゲンペプチドのタンパク質源との関連性について本コラムで探求したいと思います。
今回は、Jendricke Pら(2019)が発表している論文を紹介します。
月経のある女性(BMIが20~35㎏/m²の18~50歳)77人に12週間の筋力トレーニング※1を週に3日行い、コラーゲンペプチド(SCP)の補給と組み合わせた筋力トレーニングの効果を調査しました。方法は、二重盲検プラセボ対照ランダム化試験で、毎日15gのSCP(Bodybalance®、Gelita AG、Eberbach、ドイツ)またはプラセボ(二酸化ケイ素)を250 mLの水に溶かして飲料します。飲料の摂取タイミングは、トレーニング終了後60分以内、トレーニングを行わない日はトレーニング時と同様のタイミングで摂取しました。体組成の変化は、生体電気インピーダンス分析(BIA)によって測定され、脚力と握力は最大等尺性テスト※2を使用しました。
結果、12週間の筋力トレーニングを終えた後は筋力トレーニングを行う前と比較して、体重に有意差は見られませんでしたが、除脂肪量、体脂肪量、脚力、握力に有意差が見られました。さらにコラーゲンペプチドを摂取した群(TG)とプラセボを摂取した群(CG)に分けて比較をすると、脚力に有意差は見られませんでしたが、除脂肪量と体脂肪量、握力では、有意な差が見られました(図1、2)。
結論、TGはCGより除脂肪量と握力が有意に増加し、脂肪量は有意に減少しました
(文献)
※1(内容)サイクルエルゴメーター(50~100W)で10分ウォームアップ→3セット全身のトレーニング(leg press, back trainer, lat pull-down exercise, sit-up, and chest press)を繰り返し行う。繰り返す回数は、1~2週目:15回、3~4週目:12回、5~8週目:10回、9~12週目:8回とし、強度は個別に調整した。
※2関節の動きを伴わず最大の筋力を測定するテストのこと
〇現場での活用方法
これまで、タンパク質の摂取が必要なアスリートに、目的に合わせてホエイや大豆がタンパク質源であるプロテイン飲料をご紹介してきましたが、「コラーゲンペプチド」の飲料も視野に入れていこうと思いました。また、今回ご紹介した論文の対象者の中には、継続したトレーニングを行っていない女性も含まれていました。そのため、私はアスリートが以下のような場合、日頃の食事や栄養補助食品にコラーゲンペプチドも組み合わせて摂取することを考えています。
(文献をもとに文責者作図) |
その他、上記でご紹介した論文以外にも、コラーゲンペプチドの補給が足関節に影響を与えたという報告²⁾もありました。そのため、論文でご紹介した上記の活用以外にも、アスリートのサポートに役立てられるのではないかと考えます。
今回、女性アスリートのサポートを行う際の「コラーゲンペプチド」の活用をお伝えしました。アスリートにとって除脂肪量の増加と握力を強化させることは、怪我予防や怪我から復帰後、順調に身体づくりを進めていくための1つの手段として、とても重要だと思います。今後は、ホエイや大豆をタンパク質源としたプロテイン飲料だけではなく、コラーゲンペプチドの活用も含めて選手の目的や状況に合わせたタンパク質の活用方法をお伝えしていきたいと思います。
参考文献
1)コラーゲン/e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
(参照日:2021年8月1日)
2)
(文責)
吉本 寛那