インフルエンザに負けない
身体づくりと食事法

インフルエンザが流行する冬。一度かかってしまうと、頭痛や発熱など、さまざまな症状に悩まされてしまいますね。今回は、インフルエンザを予防するための食事や、かかってしまったときの対策について、伊藤明子先生に伺ってきました。

監修

小児科医、公衆衛生専門医
伊藤 明子 先生

東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院卒。赤坂ファミリークリニック(小児科・内科・リハビリテーション科)では一般診療に加え、栄養・食事療法、ストレス管理、障害のある子供たちの診療に従事。東京大学医学部附属病院小児科医、東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事、有限会社アクエリアス代表取締役社長(同時通訳・国際会議運営)

東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院卒。赤坂ファミリークリニック(小児科・内科・リハビリテーション科)では一般診療に加え、栄養・食事療法、ストレス管理、障害のある子供たちの診療に従事。

なぜ、冬になるとインフルエンザが流行するの?

インフルエンザを起こす病原体はウイルスです。冬にインフルエンザが流行するのは、ウイルスが低温・乾燥の環境において、より活性化するためと考えられています。また、冬になって寒くなると人間の活動量が減り、免疫力が落ちることで色々な感染症の罹患率が上がるということも言われています。

冬にインフルエンザにかかる人口が増える背景としては、ビタミンDの低下もあげられます。ビタミンDが低下すると、インフルエンザだけではなく、ほかの病気にもかかりやすくなります。

私たち人間がどのようにビタミンDを作っているかというと、1つは日光に当たること、もう1つは口から摂取した食べ物で、の主に2種類です。その比率は、太陽から得るビタミンDの方が多いのです。北緯の高い国地域の冬は日照時間が減少するのに加え、昨今では日本人女性が紫外線対策をしすぎていて、ビタミンDが欠乏してしまうこと、また、卵や魚などビタミンDが含まれる動物性タンパク質の摂取が望ましい量よりも少ないことも、冬の罹患率が増える要因と言われています。

ビタミンD豊富に含む食生活で、病気にかかりにくい身体づくりを!

低下すると病気の罹患率が上がると言われているビタミンDは、太陽が直接皮膚に当たることにより腎臓で作られます。ガラス越しではなく、直接当たるのがポイントです。

というのも、ビタミンDを作るのに必要な紫外線Bは、ガラス越しや布越しではカットされてしまうからです。一方、ガラスを通過して入ってくる紫外線Aはシミの原因になりますから、手のひらなど目立たない場所で直接太陽の光を浴びるようにすると良いでしょう。

食事からビタミンDを摂る場合、食べ物のなかでは魚介類や卵の黄身、きのこ、きくらげに多く含まれています。ですが、そもそも食べ物から摂れるビタミンDは限られているので、太陽を適度に浴びることが大事で、場合によってはビタミンDのサプリを摂ることを検討してもいいかもしれません。

インフルエンザを予防する食事とは?

抗酸化力のある食べ物を食べましょう。具体的には、野菜、良質なたんぱく質、体に良いと言われている油、食物繊維をバランスよく食べることが大事です。体に良いと言われている油は、その種類によって料理への使用方法が変わります。加熱してOKな油は、エクストラバージンオリーブオイル、グレープシードオイル、アボカドオイル。亜麻仁油、荏胡麻油はそのままで加熱せずに摂りましょう。

また、病気になりにくいポイントはやはり、たんぱく質です。病気や感染源と戦うための抗体を作るのもたんぱく質、様々な活動をするときの脳内伝達物質もたんぱく質。平均的な成人の身長(160~165cm)の女性で1日にたんぱく質75gの摂取をお勧めしていますが、体の不調を訴える方のお食事内容の聞き取りをすると、1日に必要な量の1/3ぐらいしか摂れていない方が多いです。たんぱく質が不足している人は色々な病気にかかりやすいので、しっかり摂っていただいたほうが安心です。

主なたんぱく源は、卵、魚、肉、大豆製品。そのうちの2種類を組み合わせて食事を摂るようにすると、今まで以上にたんぱく質を摂取できるようになるのではないでしょうか。お勧めは、毎食、手のひら分くらい(約100g)のたんぱく源を摂ること。そのうちの1~2.5割がたんぱく質だとして、25g×3食でやっと1日の必要量が摂れる計算になります。

また、たんぱく質だけでも代謝上足りないので、微量栄養素も必要になってきます。微量栄養素とは、ビタミン(植物由来の栄養素)とミネラル(鉱物由来の栄養素)のこと。微量栄養素とたんぱく質がしっかり摂れていれば、病原体と戦う防御力に貢献できるので、日頃の感染症などを予防する体をある程度はつくることができます。

もしインフルエンザにかかってしまったら

具合が悪いと、白いおかゆだけなどの食事になりがちですが、それだと治すための栄養が足りません。栄養価のあるもので、食べやすいものを摂るようにしましょう。

おかゆベースでもいいですが、雑穀のおかゆにしたり、そこに刻んだ野菜や卵、釜あげしらすや他の魚を加えたり、色々な食材をたっぷり入れて食べることがとても大事になってきます。たんぱく質と微量栄養素を体に入れてあげないと、治りにくいのです。インフルエンザにかかってしまうと、感染源と戦うために、色々な代謝が進んで、体の中にある栄養素が消耗・消費されて足りなくなります。それを補うためにも、色々な栄養価のあるものを食べることが大切です。

また、かかってしまったら病気を広めないためにも、無理して出歩かずに他の人と接触しないことが大事です。ウイルスは乾燥した冷たいところを好むので、保湿・保温も必須ですね。また、睡眠時間をしっかり確保しましょう。修復ホルモンや成長ホルモンは眠っている間により出るので、睡眠時間が少ないと修復ホルモンが出ないまま次の活動に入ってしまって、壊れた細胞を治すことなく、睡眠負債がたまっていってしまいます。かかってしまってからはもちろん、予防するためにも、食事だけではなく睡眠時間をしっかり取っておくことが大切です。大人でしたら7時間以上は日頃から取っておかないと、インフルエンザにかかりやすくなってしまいます。

常日頃からバランスのよい食事を心がけて、そもそもの基礎体力を上げるということが予防につながりますし、インフルエンザにかかっても重症化せずにすみますよ。

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